10日目:他人の真似事、あるいは成長
午前。
今日も訓練に行くのか?と尋ねると、彼は頷いた。
正確には、頷いたように見えただけかもしれないが、
「行かない」と言わなかった時点で十分である。
駐屯所。
昨日よりもにぎやかだった。
理由は単純で、今日は他の兵士たちも訓練に参加する日だったからだ。
殺意の薄い筋肉たちが、柔らかな朝の光の下で跳ねていた。
昨日の男は、少年の登場に顔をほころばせた。
「今日は仲間に紹介してやる」と言って、
少年を訓練場の中心に押し込んだ。
兵士たちの目が、少年に集まる。
好奇と憐憫が混ざった視線。
だがそれも最初の10分だけだった。
訓練が始まると、誰もが自分の汗と筋肉の制御に忙しくなった。
少年もその輪に加えられた。
内容は昨日より実戦寄りだった。
走る、転がる、構える、受ける。
時々倒れる。
起き上がる。
途中、一人の兵士と組まされ、模擬戦のようなこともしていた。
彼は相手の木剣をまともに受けられず、何度も肩を押さえていたが、
それでも最後まで剣を握っていた。
その姿を見て、兵士のひとりがぽつりと漏らした。
「案外、根性あるんだな」
それが最大の讃辞であることは、この世界では疑いようがない。
わたしは日陰に座り、持参した干し肉をかじりながらその様子を見ていた。
倒れたあとに起き上がる速度が、昨日より速くなった。
この世界では、それを「成長」と呼ぶ。
帰り道、彼はやや胸を張っていた。
意識的か無意識か、それは知らない。
わたしは水筒を差し出しながら尋ねた。
「今日は良い一日だった?」
彼は、水を飲みながら、頷いた。
それもまた、頷いたように見えただけかもしれないが、その目には確かに光が宿っていた。
人は、倒れるよりも、起き上がる方に理由を要する。
その理由を、彼は今日少しだけ手に入れたのかもしれない。




