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魍魎宮のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ポンペイオスとクラッススの年
43/66

カエサルのシナリオ

元老院の重鎮、カピトリヌスによってルキウスが抑えられた。

カエサルはどうする?

ルキウスを家に遅らせたカピトリヌスは、苦々しい顔でポンペイオスの天幕を見た。

「ルキウスはおとなしい奴だと思っていたが。誰も近寄らせないようにしていたのに。隙を抜けて行くとは。本当に自分の意思であろうか?」

カピトリヌスの横にいた男が言った。

「ルキウス殿は、「コッタ家の出来損ない」と言われていましたから、もしかしたらポンペイオスに関わることで名をあげよう、などと考えたのかもしれません。」

ため息をつきながらカピトリヌスは言う。

「まだ若いから、真っ当に元老院で意見をのべ、活動していればこれからいろいろできるだろうに。しかしルキウスがポンペイオスに近づいたことが知られると他の特に若い議員がポンペイオスの擁護に回るかもしれない、周りの警戒を強めろ。」

「はっ!」

「それから、メテウスと執政官2人と他のベテランの議員に声をかけてくれ。明日話がしたいと。」

「わかりました。ご用件は当然、ポンペイオスについてですね。」

「ああ、後はクラッススの御用聞きのグンダにも声をかけてくれ。クラッススがポンペイオスの横に軍を持ってくるのを待って処遇を決めようと思ったが、先に決めて一部の議員にも知らしめておいた方が良さそうだ。」

「かしこまりました。」

横にいる男が部屋から出るのを見て、カピトリヌスは一息ついた。


翌日、カピトリヌスが召集した会議には気絶していたルキウスの姿もあった。

気絶した後で、必ず来るように言われたので仕方なかったのだ。

カピトリヌスを含む元執政官、現役の執政官など元老院でも長老と呼べる者たちが並んでいた。

ルキウスは自分が断罪されるかもと思ってびくびくしていたが、議論はルキウスの目の前で行われるだけで、誰も彼を相手にしなかった。

全体の司会をカピトリヌスがすることで、強固な措置には反対を表明していたメテウス・ピウスも強く言えない状態で話が進んだ。クラッススの軍隊が来ると集めた衛兵隊をローマの城壁に並べ兵士たちを威圧しつつ、同時にポンペイオスに対して元老院最終通告を発布するかもしれない、と牽制をして武装解除を促すことで話がまとまった。

衛兵たちを増強しておくことが決定される。

ポンペイオスに対しては、執政官に本当になれるか、など含めてメテウス・ピウスがクラッススが来るまで取り下げるように交渉することに決まった。”慈悲”の2つ名を持つピウスは争いをなんとか避けたいし、ポンペイオスの才覚を最も惜しみもしていた。


そうして全体の方向性が決まったところで、ポンペイオスの陣を見張っていた衛兵たちから新しい情報が届く。

新参者のキケロがポンペイオスを訪れたという。しかも何人かのキケロの友人を引き連れて。

カピトリヌスは立腹したが、キケロは新しい世代、の代表格であり弁護士としても有能である。ルキウスとは全く違う手強さである。

カピトリヌスが憤慨するなかで会議はキケロと相対すると大変であると判断して、彼は無視することに決めた。


実際、キケロは元老院の長老たちに反発されることを覚悟して、カエサルに勧められてポンペイオスに挨拶に来ていた。

聞くところによるとルキウス・アウレリウス・コッタは挨拶をすませているという。

ならば、何はともあれまだ顔を広げる必要がある自分が、昔お世話になったポンペイオスに挨拶に来ることはおかしなことではない。そう考えていた。


キケロは20代になったばかりの頃、兵としてポンペイオスの元で戦ったことがある。まだ互いに若いころだった。そのころからポンペイオスはスッラに見抜かれて格の違う扱いを受けていた。

そのころキケロは単なる兵士であり、まったく違う地位にいたので、ポンペイオスはあるいは覚えていないかもしれないが、以前の部下が元老院にいると知ったらうれしいだろう。そのつながりを使うことも考えられる。

ポンペイオスは元老院内に元兵士という議員とつながることができる。

キケロにとってもまだ若く元老院内で確固たる地位も気づけていないが、これを機に元老院の中で名を高めることが出来るかもしれない。

そんな算段もあった。

そのため、カエサルのくれた情報は重要であったのだ。

キケロはその情報に飛びついたのだ。


カピトリヌスの注意をポンペイオスとルキウス、キケロに集中させることができたカエサルは急ぎアッピア街道を南下してクラッススのもとに走っていた。

「クラッススにはすでに伝言を送っていますよ。」と同行するジジが質問をした。

「ああ、そうだな。しかし状況は常に変わりつつある。ポンペイオスとクラッススが会って話をする機会は作れないだろう。まあ会えたとしても建設的な話しができる二人じゃない気もするけどね。」

「じゃあ、なぜカエサルはクラッススのもとにむかっているんでしょうか?」とさらに疑問をなげかけた。

カエサルは、

「自信満々でプライドの高い騎士と有り余る金を持ったプライドの高い商人。なだめるには間に入る第三者が必要だろう?」といってジジを見ていたずらっぽく笑って馬を駆っていった。

た。


ポンペイオスとクラッススの2人をつなぐため、カエサルが奔走する。

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