反乱軍の戦士
反乱軍の中で意識の統一が難しい状態のなかで
優秀な戦士アジスバはリーダー格のひとりだった。
その彼につきまとう影があった。
黒い肌をした戦士アジズバは、ヴィスの意見には同じ気持ちでいっぱいだった。
剣闘士あがりで、荒くれ者どもを率いるのは得意であっても、他の戦争の要素を考えることは得意ではないアジズバはヴィスかスパルタクスの意見に添おうと思っていたのだが今気持ちはヴィスのほうに傾いている。
なぜかって?
俺たちは世界最強と呼ばれたローマの精鋭を一度だけでなく何度も撃退してきたのだ。
戦えば負けない。そういった想いがあった。
敵もいろいろと考えてきているようであるが、反乱軍は自分たちだけで国を作れるんじゃないか、とそう思っていた。
一人、自分のテントに戻ったアジズバは、自分の身の回りを整えてくれる奴隷がおらず、一人だけ商人らしき男がいることを認めた。
「なんだ、こんなところうろうろしていたら敵と思って斬ってしまうぜ。」とからかう。
「恐れ多いことです。勇士アジズバ。今日は改めて先日ご提案した件について、返事を頂きたいと伺いました。」
「うるせえ。人の部屋に勝手に入り込みやがって。黙ってろ。」
商人らしき男は一旦引き下がったのかその場で沈黙している。耐えかねたアジズバが、
「おめえがいると休んだ気にならねえ。早く用件をいえ。」
「先日ご相談しました、反乱軍のリーダー、スパルタクスには引退頂き、あなたかあなたが押す方が新しいリーダーとなっていただく件です。」
「ああ、そうだったな。俺を新しい御輿にした見返りに求めているのはボローニャから今の騎士階級を一掃する、というものだったな。」
「ええ!そうです。」
「だったら残念だったな。すでに反乱軍はボローニャ攻略は諦めた。攻略すべきとの意見はあったが、すでに防御体制を固めている大都市を落とすのは難しい、という判断だ。スパルタクスの号令だったが皆納得している。」
「そうですか、それは残念です。それではこれから反乱軍はどうされる予定でしょうか?」
「そうだな、次にむかうところは」そういって商人の近くによって「お前が知ることはないだろう。」と言って件を振りかざして一閃した。
どうっという人が倒れた音がして商人らしき男が、首を斬られて血をまき散らしながら倒れた。その顔には怒り、恐怖が張り付いていた。
つばを吐きかけて黒い肌の戦士は商人らしき男をにらんだ。
「ふん、てめえみたいな、口で人をたぶらかすやつは腹が立ってしょうがねえんだよ。」
そうして、相手が完全に動かなくなるまで、睨んでいた。
完全に相手が動かなくなるのを見てから声を張り上げた。
「誰かいねえか?曲者がいた!」
アジズバは、せいせいした気持ちで倒した相手を見て言った。
「おればあまり面倒なことは嫌いだ。奴隷主並みにお前は面倒くさかったぜ。」とさらに文句を重ねていると、奴隷たちがやっと自分のテントに入ってきた。
驚いた表情を見せる者たちに、曲者だ、と簡単に説明をしたアジズバは、早くこの死体を片付けろ。俺は大丈夫だ。ちょっと外を散歩してくるから、その間に片づけておけ、と言って奴隷たちに始末をさせるように促して外に出た。
暗くなった外はかがり火がたかれている。
アジズバは暗くなったあたりを見ながら、歩いた。
あの商人らしき男、俺にだけ接触していたわけではないだろう。少なくともヴィスにはくせ者がついているはずだ。もしかしたらあの商人らしき男が複数いた可能性もある。
そうすると、ほかの反乱軍の有力者も、そそのかされて考えを翻すかもしれねえ。
そう思った。
もしかしたら仲間であるスパルタクスにも入れ知恵をしているやつがいるかもしれない。
黒い肌の戦士はそう思って、ゆっくりと暗闇にひそんで、スパルタクスのテントに向かっていった。
味方の仲を切り裂こうとする商人らしき男を殺したアジズバは
同じようなやつがスパルタクスやウイズのもとにも来ているかもしれないと思い
スパルタクスのテントに向かった。




