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反乱軍への潜入

情報を集めたカエサルは、ローマを離れる。

何を行うのだろうか?

「南イタリアには戻らない。最初の目的のとおりローマの領土を抜けてトラキア、マケドニア、北ガリアなど奴隷ではなくいられる場所に逃げる。これは決定事項だ。」

スパルタクス以外の全員の顔がひきつる。

ここは、ローマ軍から手に入れた天幕で、反乱軍の主だったものが集まっていた。

今後の方針について、話し合いをしていた。

軍になってきた当初と大きく面子側変わった。

最初はさまざまな経歴を持っていても奴隷剣闘士や山賊の頭などだったが、今や商人や貴族崩れなど、さまざまな者が加わってお互いの利益のために動いてきていた。

多くのものがイタリア半島に留まることを主張して、ローマから逃れようとするものは日に日に少数になってきていた。

だから皆、スパルタクスがここまで強行にローマを脱出することを優先するとは思っていなかったのだ。

同じ奴隷戦士だった黒い肌の戦士アジズパがスパルタクスに言う。

「でもよ、スパルタクス。ここまで人が増えた。ローマ軍にも負けない。それであればローマの領土を分捕って、俺たちの街を、俺たちの領土を作ればいいんじゃないか?俺たちは奴隷だったものが多い。だから真面目に土地に根付くことだってできるはずだ。」

そうだ、と同調する者たちが希望をスパルタクスに向ける。

スパルタクスに似た背格好で、スパルタクスを兄と慕う男ラダンがアジズバの話を引き継いだ。

「スパルタクス、ぜひそうしよう俺たちは永遠にローマと戦い続けるってわけじゃねえ。ローマだって何度も戦いに負けているようだからイヤになっているに違いない。今がチャンスだ。どこか土地をぶんどってしまい居座ろう。都市を支配するとローマも戦いを挑まざるをえないかも知れないが、人のあまりいない地域を開墾していき、そこに女こどもを定着させる。農耕ができれば。それに戦士たちが出稼ぎにいって必要なものを奪ってきて街の周りを守っていれば誰も俺たちの街を攻めれるものはいない。スパルタクスは街の主となってもらえればいいんだ。それからローマと和平を結ぶんだ。」

おお、と皆がラダンの話に興味を持つ。

戦争に勝ち続けている一方で女子供がたくさんいることも実は問題になっていた。

ラダンの策であれば、略奪をする部隊と、定着をする部隊ができてスパルタクスがこれ以上戦争を望まないのであれば、街でゆっくりすればいいのだ。

期待を持って皆盛るなかで、スパルタクスは全員を見て言った。

「そうしたいやつはそうすればいい。私は止めないし、私についてきたい者だけついてくれば良い。私は一人でも北に行く。そう決めている。明日にはここを立つ。」

それだけ言うとここ数ヵ月で食事をしっかり取れるようになりはだ艶を増し本来の筋肉質な身体を取り戻した男は会議を解散した。その顔は身体と違って疲労をため続けていた。


参加したメンバーの多くは、スパルタクスの強行な態度に嫌気がさしているようだった。

スパルタクスが解散した後も何人かはそこに居残り互いに囁き合っている。それでもスパルタクスについていこうとするメンバーは、その囁き合いには加わらず、すぐに自分達の天幕に戻った。

ラダンは顔を真っ赤にして、わめいた。

「なんで俺の話を聞いてくれない。現状で一番現実的な話じゃないか。」

まだ居残ったスパルタクスの方針に反感を覚えているメンバーが頷く。そのなかでアジズバが肩を叩いてラダンをなだめた。

「ここにいる皆気持ちは同じさ。俺たちは負けない。なのになんでこの豊かな地を逃げるように離れる必要があるんだかわからねえ。スパルタクスの気が変わるのを待つしかねえが、まだちょっと時間がいるな。もう数回ローマ軍を撃退したら気持ちも変わるだろう。なんたってもう冬も迫っている。アルプスを越えることはできやしねえ。」

「ふん、自分が最初に言い出したことを変えられないだけの腰抜けさ、あんなやつ。もっと根性が座っているかと思ったが本当に残念だ。俺に任せてくれれば戦争とか嫌な部分はすべて受けて敵を倒してやるってのにさ。」

ラダンは、笑いながら周りを見てにやっと笑っていった。

「腰抜けの大将だとしょうがねえな。だからといって俺たちが遠慮する必要はない。スパルタクスは徴収は出来るだけしないようにと言っていたが、それを守っているのはあいつに心酔している一部の真面目な奴らだけさ。ほとんどの奴らは取れる限りの物を町や村から略奪しているからな。しかし、今度からもっと通過する村や街から厳しい取り立てをしてやろう。二度とローマが足腰立てなくなるくらいにしてやるんだ。そうすれば戻ってくる時に俺たちに従いやすくなるだろう。」

その言葉に頷ずく者が多かった。


反乱軍は、そのまま北にゆっくりと前進を続けた。

その間も反乱軍のうわさを聞いた者たちがどんどん参集してくる。奴隷だったもの、商人や農民だが事業がうまくいかずにいた者たちや山賊たちも加わっててくる。


新しく加わった者たちは細かに確認をされることもなくひとまとめにされて森の端で雑魚寝をする。

周りには同じタイミングで加わった数人が一緒にいた。

「今日は星を見ながら寝るか、わるくないな。天井が広大でロマンチックだ。」

そうつぶやく痩身の若者に対して

「天気が持つといいですね。雨とかになると星も見えないし、ゆっくり寝るどころではないですから。」

と返す言葉があった。

「雑草が生えているところで良かったです。これから冬が近づいてくると雑草も減ってきて寝心地わるいですらかね。」

と大きな身体の男が言った。

「秋はまだ良いですが、冬になると厳しいですね。我々にもテントがあてがわれると良いのですが。」

「秋が深まる前にはケリをつけよう。」

横になりながらカエサルは考えた。

反乱軍に潜入できた。後はスパルタクスと2人で話をする時間をつくることができるかどうか、だ。


翌日から新人たちには武器が与えられた。特に反乱軍に加わることのチェックもなく、皆すぐに仲間として迎え入れてくれた。

ダインとジジ、ザハは奴隷として、カエサルは先代の財産を食い潰した商人崩れとして。

ジジが横になりながら、声をだした。

「しかし、簡単に反乱軍に入れたものだ。これなら他にもたくさん密偵が入っている可能性がありますね。」

その声を聞いて、カエサルも同調する。

「必ず密偵が紛れている。互いに話をするときは気を付けよう。」

「そうですね。私たちも見張られている可能性があります。背後に人を立たせないように気を付けてください。」とザハが具体的に注意をした。

静かに他の者は頷いた。

このような軍に入っての諜報活動に初めて加わったダインは顔を真っ青にして頷いていた。

同じく初めてのはずの主君カエサルが、いつものように普通に過ごしているのがうらやましかった。

スパルタクス軍に乗り込んだカエサルたち。

無事、スパルタクスと話をすることができるだろうか?

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