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【なろうラジオ大賞4】

おさがりのランドセル

作者: 桜橋あかね

僕には7つ上の兄が居た。

――そんな兄弟の小さな想い出。


▫▫▫


「ねーね、ランドセルが欲しいよぉ!」


小学生に上がる前、僕はそう両親に頼んでいた。

みんな、新しいランドセルを買って貰っていたから、つい欲しくなった。


「ねえ、珠希(たまき)。俺のランドセルじゃ嫌かな」

兄がそう言ってなだめる。


「おにーちゃんの、おんぼろだもん!」


「……おんぼろ、おんぼろねぇ」

兄が苦笑する。


「こーら、珠希。そんな事言わんの」

母が言う。


「買ってよぉー!」


「どうしたもんかねぇ……」


▫▫▫


まあそんなこんな、数日が経った頃。


「……ねえ、お父さん」


「どうした、晴希(はるき)


兄は、とある雑誌の切り抜きを父に渡す。


「……ランドセルの修復屋?」

父が言うと、兄は頷く。


「先生に事情を話したら、この切り抜きを渡してくれたんです。何か役立つかもって」


使い古したランドセルを、ほぼ新品まで仕立て直す職人が居るとの事だ。


「……ほうか、そういう手もあるのか。それじゃあ、頼んでみるとするか」


▫▫▫


それから、僕の誕生日。


「珠希、ランドセルよ」

母がラッピングの箱を渡す。


「ほんとぉ?」


開けると、青いランドセルがある。


「……これ、おにーちゃんのに似てる!」


「それな、俺のランドセルを直して貰ったんだ。新品じゃ無いけど、このランドセル……珠希に使って欲しくてさ」


そう言って、僕の頭を撫でる。


「……もう、俺は長くないから」


▫▫▫


僕の誕生日から、半年後。

兄は病気で天国へ旅立った。


ランドセルを使わせて欲しかったのは、僕の傍に居たかったからなのか……と今になって思う。


今でも、僕の近くにあの時の『ランドセル』が置いてある。


ありがとう、兄ちゃん。

もし僕に子どもが出来たら、このランドセルを使わせてね。

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