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軍事大国の野望 ロシアの新たな勢力圏と国家戦略  作者: アナトリー・チェスノコフ
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前段交渉


 クルスク州庁舎


 庁舎にある会議室の中に、グランマ帝国連邦の使節がいる。今回の会談は、ロシアとの国交樹立の為の会談である。ロシア側も事前に連絡を受けていたので準備をしておいた。前回のような突貫な警護ではなく、ちゃんとした警護をしている。参加する面々も、ペレンコフなど最初に会った者たちが殆どを占めていた。グランマ帝国連邦も同じく、スコレンコフやチャレンコフなどが来ている。


 現在のロシア政府は国交を結ぶかはかなり慎重になっている。以前のカリーニングラードへの派遣で、国外の状況を確認することができたが、その結果は希望を崩し初めになった。 


 町や建物から推測するとどれも20世紀初頭のもになってしまう。こんな状況で、見知らぬ国家の代表が来てしまっては、異世界だということの真実性が増してしまう。


 ほかの確認手段として人工衛星があるが、復旧はしておらず仮にしても情報の取得と分析には時間が掛かってしまう。とてもそんな時間は無かった。また軍を動員した偵察をする方法もあったが、余計な外交摩擦を生みかねないとして見送られた。


 現状の証拠から、自分たちは異世界に来てしまったと、半ば認め始めていた。けれど、どのような形で発表するかは決まっていない。


 しかし異常事態が発生してから、国外との通信物流が止まっている。こんな状況は隠しけなく経済への影響は日に日に増していく。だから早く結論を出さなくてはいけないのだ。 


「では会談を始める前に二つほど、確認したいことがありまして」


「何でしょうか」 


 交渉を始めれ前に、質問と言われて身構える。


「先日、貴国の航空機と思われる機体が我が国の上空を飛行しておりました。もし貴国のものだとしたら、明らかな領空侵犯になりますが」 


 その質問とは、カリーニングラードへの派遣についてであった。その際の飛行航路は元の地球であることを前提に組まれていた。この反応をするということは、ここが地球ではないということを示していた。


「それは恐らく、わが国の民間旅客機です。領空侵犯したのは謝罪いたしますが、これは国内の我が国民の安全を確保するための、已む得ないことです」 


「わかりました。ではその航空機が、現在連絡が取れないブレーラン地方に着陸したと見えるのですが」 


 場所はここです、と地図を指さす。ペレンコフ達が見るとそこは、カリーニングラードだっった。そして連絡が取れないということは、もともとあった場所を上書したのではと考えた。 


「ちょっと失礼します」 


 ペレンコフは席を外して、政府に確認を取る。もし異世界に来たとして国交のない国といきなり領土問題を発生させたことになる。後々に外交問題に発展して、最悪は戦争になる可能性だってある。


 政府も領土問題は避けたいが、領土を明け渡す気はないとして、問題になるのを避けるおうにと指示が出た。 


 この指示にペレンコフは頭を悩ます。いきなり自国領に国が出現しているだけでも問題になるのに、更に出現したとなれば、どうしようもない。しかし、指示を受けたからには従わねばならない。 


 部屋に戻り、スコレンコフの問いを答える。


「お待たせしました」 


「いえ大丈夫です」


「それで先ほどのことですが、そこはたしかに、我が国の領土です」


「そうですか、わかりました」


 だが以外にもスコレンコフはあっさりしていた。普通なら自国の領土を取られたのだから、何らかの交渉があるはずであり、しかも会談の最初に聞いてくるということは、その場所は大事な筈だが。 


 確認が取れれば後はいい、そのように見えた。これもロシアとの友好関係を築くための譲歩なのであるが、問題にしたくないという思惑が一致したのである。 


 その後は、国境に関する両者の意思を確認してお開きとなった。どれもロシア側の意見を可能な限りくみ取ろうとしていた。領海、特に黒海に関しては保留という形になった。その過程で、この世界における国の存在や国際社会についても、少しばかり知ることが出来た。




 モスクワ 大統領府


 今回の会談を踏まえて、外務大臣と国防大臣と画面越しに話し合っている。


「それで、このままあの国と交渉しても大丈夫なのか」


 ウォトーチン大統領が外務大臣に問いただす。


『正直に言いますと、まったくわかりません。この世界の歴史の進み方も地球と同じだとしたら、今は帝国主義の時代の筈です。なので慎重に進めてたほうがいいということは言えます』


「だが、余り時間を掛けている訳にはいかない。今日もあっちこっちから言われたんだから」


 あっちこっちとは、各産業の代表である。主なのは、重工業に航空機、造船やエネルギー産業である。これら政府の管理下に行われており、自身と同じく諜報機関出身の者を幹部に登用して支配している。 


『ですが、あの国以外との窓口がありません。作ろうにも言葉の壁があります』


「そうなると、あの国に頼らなねばならないのか」


『現状そうなります』


『それで、あの国が攻め込んできた場合は大丈夫なのか』


 国防大臣に守り切れるのか聞く。


『軍の規模がわからいので、はっきりとしたことは言えません。もしこの世界の歴史が地球と同じだった場合で、第一次大戦のような大規模の軍が攻め込んできたら、通常戦力だけでは防ぎきれません。最悪、核の使用も考えないといけません』 


「そうなることは避けたい。それで会談の様子はどうだった」


 国防大臣から防衛の不安点を聞いて杞憂になること願い、話を切り替えていく。


『終始いい雰囲気で進みました。国境もこちらの主張が大多数が通りました』


「そうみたいだが、なぜそんなに譲歩をしてきたのだ」


『恐らく、こちらと友好的な関係を築きたいのだと思われます』


「ならこっちもそうしよう。利用されるのなら利用してやろう」


 グランマ帝国連邦を信用するには不安が残るが、頼らなければどうしようもならない。万が一のことも考えながら、ロシアも国交樹立に本格的になっていく。

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