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軍事大国の野望 ロシアの新たな勢力圏と国家戦略  作者: アナトリー・チェスノコフ
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閣僚会議

 テレビドラマに出てきそうな長机に人々が座っている。更にその周りには多くの人々がいる。ここはグランマ帝国連邦の閣僚級会議である。机には宰相のムラド・ベルコフの他に外務大臣や内務大臣、陸軍大臣などがいる。


「ではこれより、ロシアに関する会議を始めます。まずは、順番に報告をお願いします」


 司会兼議長のムラドが会議を進める。彼は宰相で行政の長であり、政治外交については彼を中人に進められていく。帝国連邦の最高権力者は皇帝になるのだが、宰相を中心とする内閣が存在しており、これが皇帝に助言をすることが憲法によって定められている。皇帝は内閣の助言なしでも政治をすることはできるが、慣例として内閣の助言を聞くことになっている。


 よって宰相には大きい権限があり、行政組織の指揮や大臣の任命や罷免もできる。一応、宰相と内閣の任命は皇帝の承認が必要で、皇帝の権限で罷免にすることもできる。そんな宰相になるためのは、議会の承認が必要である。彼も議会で任命されて、皇帝の承認を受けている。


「外務省は、ロシア政府と平穏な接触をすることができました。これを契機に本格的な交渉に入っていきます」


 外務大臣が報告する。最初にロシアと接触した全権大使は、外務省の外交官である。


「先日、わが航空部隊がロシアの飛行機と思われる航空機が、領空侵犯しました。直ちに接触しようとしましたが、高度が高く追跡は失敗しました」


 これを報告したのは、参謀総長である。彼が仕切る参謀本部は、陸軍の戦略を担う場所であるがただ作戦を計画するだけではない。事実上、陸軍の司令部の役割がある。


 しかし、軍の最高指揮官は皇帝であり、参謀総長ではなく宰相には指揮権すらない。しかし、軍が政府の意向に反して戦争を起こすことはできない。軍の人事と予算などの一般業務を行うために、陸軍省と海軍省がある。それぞれの大臣の任命権は宰相にある。そもそも戦争をするには、戦線布告が必要でそれには皇帝の承認が必要である。


 更に宰相や大臣になるためには議員になるこが必要で、軍人は立候補すらできない。このようにな形で軍は組織されている。


「それについては現在、ロシア政府と確認を行っていきます」


 外務大臣が対応を答える。


「ロシアへの行動方針は、友好関係を前提に進めていくことでいいか」


 ムラドが大臣たちの反応を見る。誰も依存はないようで無言である。


「最後に会議が終わった後、大臣たちの残ってださい。参謀総長や海軍司令官もお願いします。では次の議題に移ります」


 議題は次に進んでいく。主な内容は国内問題であった。


 会議が終わった後、大臣たちが残った。ほかの人たちは退出してもらったので、ここには彼らだけである。


「それでプレーランとの連絡が途絶えたとは本当か」


 ムラドが大臣たちに問いかける。 

 プレーランとはロシアのカリーニングラードに当たる地方で、ここにはそこそこ大きい都市と海軍基地がある。ロシアが出現して以来、この地方との連絡が取れなくなってしまっている。


「現地当局との連絡はいまだになく、詳細は不明です」


「同じく基地に停泊していた艦艇や基地と連絡が取れません」


「陸軍も同じです」


 内務大臣と海軍司令官、参謀総長が答える。


 内務省とは、警察業務を担っている組織である。そしてこの省は、ロシアの内務省と同じく独自の実働部隊を持っている。これは多民族国家であるがゆえに発生する対立や、政府に対する反発を鎮圧する為に作られた。


 海軍司令官は、参謀総長の海軍版である。


「これでは話とまるで違うではありませんか。召喚する範囲は、東方遠征で獲得した領土だけであったはず」


 そう反発したのは財務大臣である。


「それについては、現在調査中です」


 そういったのは、魔法技術大臣である。魔法技術省とは、その名の通りに魔法の研究と管理を行う組織である。この国は、魔法技術を主力として国力をつけていたのだが、科学技術の発達によってその存在は薄れつつあった。


「そもそも、召喚したのはそちらであろう。なら責任を取るのが筋であろう」


「それこそ筋違いであす。たしかに実行したのは我々ですが、そのことは全会一致で決めれたこと。責任をとるなら貴方もでしょう」 


 予定外の事態に、責任の擦り付け合いが起こっている。


「召喚そのものに、不備があったのでは」


「そのことも確認中ですが、現時点では確認されてません。そもそも、この召喚は不安要素が多いことは、最初に説明したはず」 


「責任の所在は後にして、今はどうするかを離さないと」


 ムラドが、流れを修正する。 


「プレーランの事は、どれくらいまで隠せますか」


 ムラドが大臣たちに問いかける。そこで挙手したのは、商工大臣だった。商工省とは、経済や産業の成長と発展をする機関である。その中には報道機関の監督も含まれている。


「現在、各報道機関に自粛を要請していますが、それも時間の問題です。命令という形ならもう少しは持ちますが、あまり効果はないと思われます。それに、プレーランンとの経済活動が止まっていますので、これ以上は国内全体に影響が起こる可能性があります」


「陸軍では現在、偵察部隊の編制を行っている最中で準備できしだい実施します」 


「参謀総長、待ってください。もしそこがロシアだったら、戦争の口実になってしまいます。ここは一つ、確認が取れる待ってください」


 外務大臣が参謀総長の行動を、止めようとする。


「しかし、このまま連絡が取れないことは看過できません。もしこれが侵略だった場合は、直ちに防衛線を展開しなくてはなりません。防衛の責任を担うものとしては、そんな危険なことはできません」


「参謀総長、ここは私からもお願いします」 


 ムラドから参謀総長に頼み込む。これも政府が軍を指揮できない弊害である。 


 軍の指揮が政府から離れているのは、皇帝の主権を守るためセある。ムラドはかつて軍に籍を置いていた元軍人である。だからある程度、軍に融通が利く。 


「宰相がそういうなら」 


 そんなムラドに説得されて身を引く。


「たしかにわが国の領土が減った可能性があることは、十分承知しています。もしかしたら、そこがロシアの領土になっているかもしれない。しかしこうも考えられませんか。あの国を最大限に利用できると。このことは、召喚計画に含まれていたことです。つまりこれは、予定通りのことです」 


 召喚計画。この計画がロシアを異世界に呼び込んだ原因なのだ。東宝遠征で獲得した広大な領土を使って、行った魔法計画。痩せぼそった土地を活用するために、異世界とその土地を交換しようということになった。普通ならできないと思われるが、帝国連邦にはそれを実現する技術があった。 


 多くの資源と資金を使った一大魔法。実行に必要な支持を、議員と軍人そして皇帝から取り付けて、議会を騙して複数の架空予算で資金を集めた。このことが露呈したら、ムラド達だけではなく皇帝にまで責任が及ぶ。 


「あらゆる可能性を考慮して、ロシアとの国交を早く成立させて国境の確定を急ごう。外務大臣、お願いします」 


「わかりました。最善を尽くします」 


「話は変わりますが、ゼイロー帝国の様子はどうです」


 参謀総長と外務大臣、商工大臣に目を向ける。


「あの国は現在、大幅な軍制改革で効率化を図っており、軍の機械化も始めています」


「外交方面では、連合との関係構築をしている模様です」


「トチェフでは、ゼーロウ帝国に資本が流失しているようです。民衆の間では政府とゼーロウ帝国に不満が溜まっているもようです」


 連合とは大陸中央にある国で、正式名所はトリアノン連合という。この国のイメージは、オーストリア・ハンガリー帝国であり、同君連合の多民族国家である。 


 トチェフとは帝国連邦から独立した国家で場所はポーランドにある。共和制国家であるが、政府は親ゼーロウ政権でなかば占領されているよも言える。そのせいで、反発が大きい。また国家承認しているのはゼーロウ帝国だけである。 


「そちらも注視ししつつ、計画を考えましょう。以上で会議は終了にします」


 ロシアとの国交樹立と友好関係を構築する共に、ゼーロウ帝国の動向を注視することが指針として決定された。

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