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軍事大国の野望 ロシアの新たな勢力圏と国家戦略  作者: アナトリー・チェスノコフ
2/14

会談

今回は少し短いですが、最後までお付き合いください。


 グランマ帝国連邦は、ウクライナやベラルーシ、ポーランドからバルカン半島まで広がる多民族国家であった。故にその広大な国土を使い、強大な陸軍国家を用いて大国の一員になった。またその強大陸軍を用いて東方遠征を行い、シベリアまでの領土を手に入れ世界最大の帝国になった。けれど東方遠征で得た領土は、無人で痩せた土地ばかりであった。同時に他の大国は、海に出て多くの海外植民地を手に入れた。植民地を得た大国は、世界に影響を与えられる列強になった。


 そんな列強が植民地を広げている間に大きな変化が起きた。それは産業革命である。それまで産業の多くは魔法に依存していたが、産業革命によって経済規模を多くすることができた。しかしそれは、より多くの生産を生み出し、そして多くの消費地を必要とした。


 その結果、列強同士での植民地の奪い合いが起こり、その過程で植民地が宗主国から独立して民主化するなどもあった。その余波は宗主国にまで及び、革命が起き王政が崩壊したり議会制を導入したりした。


 革命の流れはグランマ帝国連邦にまで流れ国内では民主化や分離独立を求める声が上がったが、元々多民族国家でそれぞれにある程度の自治が与えられていたので規模は大きくなかったが、議会制の導入だけは避けられなかった。


 だが革命が起こったからと言って、帝国主義が消えることはなかった。世界の殆んどを狩りつくした列強は、広大な領土を有するグランマ帝国連邦に目をつけ、自国の影響化に置くために、企業の海買収や国営企業を参入などした。その中で実力行使に動いた隣国、ゼーロウ帝国は戦争でポーランド部分を独立、傀儡政権をした。


 グランマ帝国連邦は奪われた領土の奪還に向けて準備しており、ロシアとの国交樹立もその一つである。



 ロシアとの接触に成功した使節は、しばらく待たされた後、入国することが許されロシアが用意した車で移動し始めた。


「大使、護衛をほとんど置いてきてしまいましたが、良かったのですか。せめてもう少し連れていけないか交渉してもよかったので」


「いきなり来て話をしてもらうだけでもいいでしょう。それに護衛はしてもらえるみたいですし」


 今回は時間がないとして同行できる人数に限りがあり、護衛の大半を置いて行くことになった。そこで向かうことになったのは、全権大使のスコレンコフに陸軍大佐のチャレンコフ、外交官のモロトフに護衛の曹長の四人で向かうことにした。最後に入国の記録と簡単な身体検査、荷物検査を行い入国を許可された。


 大使達が乗っている車を挟むように車が並んでいる。大使達を護衛する連邦警護庁の隊員である。連邦警護庁とは、要人警護や設備警備などを主任務としている組織である。


 一団は車に揺られて国境から近い都市、クルスクに到着してその流れで州庁舎に向かった。庁舎に到着したら、会議室に案内されてしばらく待つと数人の男たちが入室してきた。


「初めまして、ロシア連邦外務省のペレンコフと申します」


「これはご丁寧に、グランマ帝国連邦の全権大使のスコレンコフです」


 双方が挨拶を済まして、会談に入る。


「それではあなた達は、わが国になんの御用でしょうか」


「我が国は貴国との国交樹立を目的にやってきました」


「そうですか、ですがわが国は貴国について全くしりません。いったい何処にあるのですか」


 そうするとモロトフが地図を取り出す。その地図は一見普通の地図にしか見えないのだが、あちこちおかしい。


「此処です」


 スコレンコフがグランマ帝国連邦の場所を指さす。地図を見たペレンコフ達は驚いた。地図は少し古めかしいが、驚くべきは国の位置がおかしいのである。ロシアがあるべき場所はグランマ帝国の領土になっている。他にもチェコやオーストリア、ハンガリーなど中欧ヨーロッパの国境がオーストリア・ハンガリー帝国、中東にはオスマン帝国など形になっており、まるで1900年の世界地図みたいだった。文字はキリル文字とは違うが国境の在り方はまさにそれだった。


「これは世界地図です、ちょっと古いですが。もしかしてご存じではないのですか」


「いえ、その。……この地図をお借りしても」


「ええ、構いません」


 地図を借りると、他の男が持ってさっていった。


「……もしかして、信じてもらえていませんか」


「いえ、その。あまりにも突拍子もないので」


「そうですか。では大佐お願いします」


「わかりました、曹長頼むぞ」


 曹長がコインを取り出して、何かを唱えるとコインが宙に浮き始めた。それを見てペレンコフ達は驚く。


「これで信じて貰えましたか。他には公的身分証ぐらいしかありませんが」


「いまのは一体、何なのですか」


「これは我が国が誇る、魔法技術です。今は科学技術に後れをとっていますが、この技術に関しては最先端です」


「そうですか……ちょっと失礼します」


 ペレンコフは、自分達ではもう対処しけないと判断し政府の指示を仰ぐことにした。結果は、今すぐ国交樹立はできないので大使達は一旦退去してもらうことにした。




「それでは失礼します。後日この場所に連絡の者を派遣しますので、連絡はそちらにお願いします」


 会談の最後にマレンコフは、連絡要員の派遣を申し出た。ロシア政府側も、外部との数少ない連絡手段なので承諾した。だが彼らの正体がはっきりしないので、連絡員の待機場所はあくまでも国外としたがマレンコフは、承諾した。


 ロシア政府は今回手に入れた情報はありえなく、鵜呑みなどできないと判断をし通信状況の復旧を急ぐと共に外部の情報収集の方法も検討を始めた。


 マレンコフ達は乗ってきた車に乗り、国境から退去していった。



「本省に戻ったら、報告と連絡員の要請をしなくてはなりませんね」


「確かにそうだがモロトフは、あの国をどう思いましたか」


 帰りの車内で、マレンコフがモロトフに感想を尋ねていた。


「そうですね、あの国は高度な科学技術を有しているみたいでした。それと思ったより早く会談できたのは驚きでした。大使はどう感じたのですか」


「私もあなたと同じです。でも会談を取り繕うのは早さは少し気になります。それにあの国についてはまだ分からないことばかりだから予想するしかありませんが。けれど、あれ程の科学技術を持っているからには、何としてもわが国の勢力間に組み込まなくては」


「そうですね。しかし異世界の国が我らに従いますかね」


「それでも何とかするのが外交の役割なのだよ、それに魔法を見せた時の反応から察するに、あの国には魔法はないみたいのようだから、探せば優位な部分もあるかもしれないのだから。」


「そうですね」


 車の中で、報告することを考えながら首都を目指す。

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