モチベーションの持続
「創作活動のモチベーションを維持するにはどうすればいいかしら?」
「今日はこの流れか。普通に気分転換じゃないの?」
「気分転換。いい言葉ね。その気分転換の行為に夢中になって、創作がおろそかにならなければ、なおいいけど。具体的には趣味とかゲームとかツ○ッターとか」
「いや、それはやめない自分の責任じゃないのか?」
「確かにそうだけど、正しいことを言っただけで人間が変わったら苦労しないわよ。人間どうしても誘惑にかられるものだし、やる気が出せない場合もあるわ。それに、創作に使える時間も千差万別だから、気分転換したくてもできない、なんてケースもあるだろうし」
「そりゃそうか。じゃ、どうすればいいんだ?」
「そもそもやる気が出ないのって『習慣化していない』ことが原因だと思うのよ。だからつい別のものにすぐ気を取られる」
「……習慣化ねえ。そんなこと、みんな言わなくても分かっていることじゃないか?」
「じゃ、質問するけど習慣化するために必要なことって何だと思う?」
「それはまあ、毎日続けることじゃないの?」
「うん。いいわね。じゃ、毎日続けるために必要なことは?」
「え? いや、そんなこと言われても、創作する以外に何かあるの?」
「はい、残念。それしかやろうとしないなら、あなたは持続しないわ。いえ、正確には絶対にモチベーションが落ちる時を迎えるわ」
「それ、断言していいのか?」
「いいのよ。よしんば自分でモチベーションを維持できる人がいたとしても、わざわざこんな話見るわけないでしょう。釈迦に説法よ」
「まあそうだけど」
「ここの作者はダイエットと似たようなものだと捉えているわね。何故かと言うと、『ある程度執筆に慣れてきた後、全然モチベが上がらない時期があったから』」
「あー……ダイエットで言う停滞期みたいな? 初めの一か月はすぐ体重下がるけど、段々止まるどころが上がる場合もあるっていう」
「そんな感じ。ここの作者が凡人なのもあるけど、『新しく何かを始めてそれを習慣化させる』って結構きついのよね。生活が固まった状態に追加しようとするとなおさら」
「確かにそういうのって『既にやっていたことの時間を、どれか削らないといけない』場合が多いもんな」
「そんなわけで、もっとこまごまとした決め事を作っておいた上で執筆するといいと思うわ」
「ネット断ちするとか?」
「それは多分、かえってストレス溜めるだろうから、プロでもない限りはやめた方がいいと思うわ。じゃあ、何をしたらいいか、具体的事例を紹介しましょうか」
・執筆用のアプリやソフトを必ず一日一回起動する
「はい、まずはこれ」
「……え、いや。それだけ?」
「ええ、それだけ。とはいうけど、これがけっこうできないものよ。『眠いから明日にしよう』『今日は疲れたからやめ』『見たいアニメがあるから後回し』『友達とトークするから以下略』みたいに、意外と起動するだけでも苦労するものよ」
「それは何というか、意識が低いだけでは?」
「本当にそう思う? やる気だけで何かが持続できるなら、みんなオリンピックに出られるくらいスポーツに打ち込むし、東大出るくらい勉強できるはずよ? でも現実にはそうはなっていないわよね。運動法や勉強法なんていくらでも流行っているのに」
「ま、まあそうだけど」
「習慣化していない間はね、この起動するという程度のスタートすら面倒になるのよ、マジで。特に始めたては。だから自分に執筆という習慣を根付かせるためにも、これは必須行動なわけ」
「何かパブロフの犬みたいだな」
「そうね。実際その通りだと思うわ。真面目にこれを続けるだけでも、意外と執筆しようというモチベーションは保てることが多いわ。全く書かなくてもね」
・目標は出来るだけ下げる
「次はこれ。一日二千字みたいな高い目標掲げて進めると死ぬから、出来るだけ下げましょう」
「そうは言うけど、具体的にどこまで下げていいんだ?」
「無茶苦茶甘くしていいと思うわよ。なんなら『タイトルを書く』『一日一文字打つ』、だけでもいいくらい」
「ええ? 低すぎない?」
「さっきも言った通り、習慣化していない間はこの程度すら面倒だからね。別に一文字も打てなくても構わないわ。ソフト起動さえ達成しているならあなたはすごいわ。十分十分」
「それでいいのか……?」
「モチベを維持するためだからね。無理してやる気を失う方が大変よ。ゼロまで下がった物を一に引き上げるのってすごい大変だから」
・自分で自分をほめる
「これも大事。特に読者が少ない間は全くほめられたりしないからね。ほめるハードルも低くていいわ。今日はパソコンやスマホの画面に向き合いました、自分すごい。くらいなものでいいわ」
「またダダ甘だが……でもこの部分は執筆以外にも応用効きそうだな」
「そうね。日常全体のやる気引き上げにも使えるわ。実際にノートに書く手法なんかが推奨されているけど、そこは各自で調べてね」
・気分転換する
「時間がある人、あとソフト起動する気すら起きない人用。完全に執筆からいったん離れてモチベーションを復活させましょうっていう方法ね」
「これは習慣化とは真逆なんじゃないか?」
「確かにそうね。既に習慣化している人向けかしら。新しい刺激があった方がアイディアも湧くし、やる気につながるからね。散歩や旅行に行ったり、アニメとか映画とか違う媒体の作品を鑑賞したり、色々あると思うわ」
・人に尋ねる、人に聞いてもらう
「ここには作品を読んでもらう、とかも含んでいいかしらね。まあ、とにかく愚痴るのでもいいし、具体的アドバイスをもらうのでもいいわ。話を聞いてもらうこと自体が心を軽くするでしょう」
「良い意見ばかりならいいけど、批判的意見をもらってモチベーションが削がれたりしないのか?」
「まあ、そのリスクも込みでやってね。特にリアルの方だときつい相手に会うと大変だと思う」
「ネットならミュートなりブロックなりで関係を断てるけど、リアルだと引き離せないからな……」
「コミュニケーションの向き不向きもあるから、無理してやらなくてもいいと思うわ。ここの作者自体、全然やっていないし」
「おい、薦めておいて何でやらないんだよ。馬鹿なのか?」
「そうね。アドバイスもらえる機会損失が多すぎるし、本来はやるべきよ。面倒だからやらないけど」
「台無しだな!?」
「一応、愚痴についてはそもそも聞いてもらう気にならないから呟かないわね。吐いても無意味だと思っているから。自覚せずにじみ出ている場合はあるかもだけど」
「大丈夫なのか、色々と」
「さて大体こんなところかしら。これをとりあえず何か月か続けて、それで維持できるならまず大丈夫でしょう。あなたは創作家になれます。プロになれるかはともかく」
「おい、最後」
「今回は初心者向けみたいな話だから。プロになるとこれに契約と締め切りっていう重い部分が圧し掛かるわけだし」
「なるほど。ところで、そもそも時間がない人はどうすればいいんだ?」
「うまいことスキマ時間を見つけて書いてくしかないかしら。それでも根付かないってなると、嫌な話だけど向き不向きを考え直してもいいかもね」
「世知辛いな。たくさん時間を使って自分には向かないって分かったら、ショックだろう」
「時間は有限だからね。でも悲観することはないわよ。そこから新しい何かにつながる場合もあるし、何もしないよりは全然マシよ。エジソン曰く、『私は失敗したことがない。ただ一万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ』という名言もあるからね」
「何か人様の言葉でいい話に締めようとしているな」
「ついでに貼っとくわ。『最初のひらめきが良くなければ、いくら努力してもダメだ。ただ努力だけという人は、エネルギーを無駄にしているにすぎない』」
「ヤメロォ!」