かまってちゃん
昼下がりの豪華な貴族屋敷、その一室で少女は優雅にティータイムを楽しんでいた。一見優雅に見えるその光景だが、少女には気がかりなことがあった。少女は俗に言う悪役令嬢であった。自分より見た目も才能も優れている下級貴族の娘に対して嫌がらせをしていた。具体的には学校でその娘の机を廊下に出しておいたり、席を外しているあいだに鉛筆を隠したり、そういう些細なことだ。が、それは妬みの他に、娘に気にしてもらいたいという構って心の現れでもあった。
「はぁ…」
少女は物憂げにため息をつく。嫌がらせ対象の娘がもうしばらく学校に来ていない。もしや嫌がらせを苦にして不登校にでもなったか…来週は来るのかしら?と、少女はそればかり気にしている自分に気づいた。しかも、少女にはどうしても娘に伝えたいことがあった。勉強をしようと筆箱を取り出す度にその思いはつのる。
「仕方ないわね」
少女は娘の家を調べ上げて直接乗り込むことにした。これだけはなんとしても伝えておきたい。娘が少女のことを忘れてしまわないようにと……
翌日、娘の古びた屋敷の前に現れた少女は、ノックもせずに玄関の扉を開けると、大声で叫んだ。
「この前貸した消しゴム返してよ!!」