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恋愛話



礼二が優真の中学生時代のことを語り終えた後、愛美の顔を見ながらおまけにもう一つ話をしようかと言い出した。


愛美は勿論訊きたいと直ぐに返事をする。すると礼二は優真の顔を見てニヤリと含み笑いを浮かべながら話し始めた。



「愛美ちゃんさ、芽生と静城って仲いいでしょ? どうやってくっついたか教えてあげようか?」


愛美にとって芽生は親友となっている存在、当然静城のこともよく知っている。そんな二人の馴れ初めなんて訊かずにはおられない。愛美は目をキラキラさせて礼二の話に飛びついた。


「うん、是非訊かせてほしい」


愛美の返事を聞いて礼二は楽しそうに笑いながら話し始める。



「まず最初になんだけどね、芽生ってさ、…本当は優真のことを気に入ってたんだよ…」


「「………え?!」」


 礼二の言葉を聞いて愛美と優真は思わず同時に声を上げる。

愛美はそれから暫く目が点というか、呆気にとられた様子で黙っていた。

そして優真は驚きのあまり礼二の顔をまじまじと見つめる。



「ははは、…優真に話したことなかったから驚いただろ? 俺と芽生は1年の時も同じクラスでさ、結構仲良くやってててね、そんで2年の時に隣の席になった優真のことが気になったみたいでさ、俺のとこに訊きに来たんだよ。同じサッカー部だからよく知ってるだろってね。でもさ、その時に静城が芽生のこと好きなの知ってたからもう可笑しくって…」


 礼二はそう話しながら楽しそうにケラケラと笑っていた。それを訊いていた優真も何やらその当時を思い浮かべているようだった。


「それで芽生には優真のことをあれこれ教えたんだけどね、……でもそこから静城が優真を利用して一気に迫り始めちゃって。優真も覚えてるだろ?」


「ああ、覚えてるよ。芽生と話したいから何とかしてくれって頼まれたし、…それでいつも3人で話すようになったしな。俺も静城にはだいぶ協力したぞ」


「そうそう、それを訊いて俺は思わず吹き出しそうになっちゃてさ…。自分の気に入った男に別の男勧められてる芽生の表情とか想像するとね、…悪いけどもう笑いが止まんなくて。 でも芽生に悪いから優真にはそのこと言えないしな…」


「でも、…俺、そんなこと何も気づかなかったぞ…」


「だから俺から見てればそれが余計に可笑しくって。でもさ、結局静城の押しの強さに芽生が負けちゃってね、…それで芽生は静城の彼女になったんだよ」



 愛美は黙ってその話を訊いていたが、あまりにも意外な事実にどのような感想も浮かんでこない。「そうなんだ…」としか言いようのない思いであった。


だが、今の芽生と静城を見ていると愛美から見ても羨ましいほどに仲が良い。

それは静城が周りの誰もが分かるぐらいに芽生のことが好きだという態度を示し、それを芽生は嬉しく感じているからだと愛美は思う。



 静城の強い思いが芽生の気持ちを変えていき、やがてお互いに思い合える関係になる、…愛美はそのことが自分と優真の関係に重なる思いがした。


愛美は思う。

知り合った最初、優真の頭の中には麗美のことしかなかったんだろう。そして自分が優真に近付くことによって優真の中に自分への思いが生まれたんだろうと…。


 そしてこの先は自分と麗美の思いの強さによって、優真はそのどちらかに惹かれていくのであろうと思った。



 それから礼二はつでにと中学時代の優真の恋愛について語りだす。


「中学の時はさ、結構優真に近付く女の子がいたんだよ。俺と仲良かった女の子もその内の一人だったんだけどね…。けど優真は一切見向きもしなかった。話には訊いてたんだけどさ、前の中学で付き合ってた彼女のことが忘れられないんだろうと思ったりもしてたんだよね。そこまで優真の心を離さない彼女って凄いなって正直思ったよ…」



 礼二の話を訊いていた麗美は、この言葉を聞いて複雑な思いを抱いた。

自分の存在が優真の幸せを邪魔しないようにと、…そうならないようにと気持ちを押し殺してあの手紙を書いた。


しかし、結局はそれは何の意味もなさなかった。ただ、優真と別れるという悲しい結末を生んだだけ。


…………だけど優真はあの手紙を受け取った後でも、それでも自分のことだけを思っていてくれた


でもそんな優真の思いが麗美にはたまらなく嬉しかった。



「けどさ、正直愛美ちゃんを初めて見たとき思ったんだよ。やっぱり優真も顔で女を判断するんだなって…。でもね、愛美ちゃんと話すようになって分かったよ、…どうして優真が愛美ちゃんを彼女にしたのかがね…」


礼二は穏やかな顔をして愛美を見ながら話を続ける。


「優真のことを思っていつも寄り添うように傍にいる、…優真もそんな愛美ちゃんだから好きになったのかもな…。そんな姿が優真の昔の彼女と何処か被って見えたんだと思うけど…」


礼二のこの言葉、…それは3人の心に響く。


 何故優真が愛美に惹かれたのか、…顔が麗美そっくりであったからだけではない。

それはあくまできっかけに過ぎない。愛美が麗美の代わりになろうとしたこと、それが優真の心をとらえ始めた。


そして二人の距離は縮まったが、それも第二のきっかけだと優真は感じている。

今では麗美とは異なる部分、愛美だけが持つ部分にも優真は惹かれている。だから優真は感じている。


―――本当の意味で麗美以外の女の子を俺は初めて好きになったのかもしれない。


そしてこの先、優真がどちらを選択するのかは、二人の異なる部分をどう感じるかによって決まる。



「優真が中学生だったときの話はこんなもんだね。高校入学からは俺より愛美ちゃんの方がはるかに詳しいだろうし…」


「でも、芽生ちゃんの話は本当にビックリした」


「それは俺もびっくりしたぞ。全く気付かなかったし…」


「だってさ、言えないだろ? 静城と付き合い始めたときに、…実は…なんて優真に言えないしさ、それにお前も訊きたくなかっただろ?」


「はっきり言って今でも訊きたくなかったよ…」


「でもこの話は内緒な。芽生に知れたら俺が殺される」



 そう言って礼二が笑いだすと優真も愛美も楽しそうに笑いだした。

それを傍らで見ていた麗美は優真との距離を実感する思いであった。


自分の知らない街で、自分の知らない友人たちと、自分が知らない楽しい生活を過ごしている優真…。


分かってはいたことだが、自分とは歩く道がはっきりと別れてしまっていることを実感する。



 それでも麗美は寂しいとは思わない。

それは先ほど礼二から訊いた話、…離れても優真は自分のことだけを思っていてくれたという事実。


麗美にとってはこれだけで良かった。離れていても異なる生活を送っていても優真は決して麗美を忘れたりしない。それに今は優真との心の繋がりをもう一度得ることができている。


最も大事なものを取り戻した麗美にとって、優真と遠く離れた場所に居ることなど今は些細なことのように感じる。


それに加えて麗美には新たに愛美との繋がりもできた。麗美にとって愛美との繋がりは優真を抜きにしても大切なものだと感じている。麗美にとっても愛美はもう一人の自分、…運命というものを感じるのは必然であった。



その後は中学時代のサッカーの話などに話題が移り4人で楽しく喋った後、礼二は帰っていった。


「いや~、…礼二に見られたときはホントに焦ったよ」


「でも何となく納得してくれてたみたいだから大丈夫じゃないかな… ね、麗美ちゃん」


「うん、大丈夫だよ。それにあの礼二君って人、…良い人そうだし…」



結局礼二が帰ったのは夕方前あたり、…その日はそれから夕食の支度をみんなで手伝い夕食を食べ終えて一息ついた頃にはもう8時過ぎとなっていた。


「麗美ちゃん、一緒にお風呂はいろっか?」


愛美は麗美を誘ってお風呂に入り、お風呂から上がると直ぐに二人とも麗美の部屋に戻っていった。

部屋に戻った二人は寝る準備を整えると、お互いに顔を見合わせながらそれぞれの思いを口に出した。



「麗美ちゃんといっぱい話したいことがあるんだ…」

「それは私も同じだよ。愛美ちゃんと沢山話したい…」


二人の思いは同じ、…もう一人の自分を知りたい、それに自分の気持ちを相手に伝えたい…


それから二人は時が経つのも忘れてお互いのことを話し合った。

そして話し終えた後、二人が感じたこともやはり同じであった。


―――本当に出会えてよかった…


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