優真の思い
「こんにちは… お久しぶりです」
「優真ちゃん! 久しぶりだね~ 大きくなって、少し大人になったね…」
2年ぶりに見る麗美の母さんはあの頃と何も変わってなかった。
俺のことを本当の息子のように扱ってくれていたあの頃のままだ…
「本当にご無沙汰してしまって… 今日は突然お邪魔してすみません」
「そんな挨拶はいいよ… 麗美、早く優真ちゃんを部屋に連れていってあげて」
「うん、優真 部屋へ行こう」
「すみません、それじゃお邪魔します」
麗美に案内されて空いている部屋へと通された。
「優真、今日はこの部屋に泊まってね。取り敢えず荷物をその辺に置いて」
「本当にいいの?」
「だってもうお母さんはそのつもりだよ。それに私も優真に泊まって欲しいし…」
「それじゃ… 遠慮なく泊まらせてもらおうかな」
そんな感じで今日は麗美の家に泊めてもらうこととなった。
「この部屋に入るのも久しぶりだな…」
「そうね、前はよくここで玩具を散らかして遊んでたっけ… ウフフッ…」
かつて知ったる… というか俺はこの部屋をよく覚えている。本当に懐かしい…
「取り敢えず何か飲み物でも持ってくるね」
「ああ、ありがとう」
そう言って麗美はリビングに降りていった。再会してから1時間程しかたっていないが、麗美はもう以前の感じに戻っていた。離れるなんて思いもしていなかったあの頃のように…
「はい、優真。冷たいコーヒーでいいかな?」
「ありがとう。ちょうど飲みたかったんだ」
麗美はテーブルに飲み物を置くと俺の傍に来てじっと俺を見つめた。
そして俺の頬に両手をあてて俺の顔をしっかりと見据えながら言った。
「優真とこうやって話すことが出来る日が来るなんて思わなかった… 優真、ごめんね… あんな手紙を出した私を許して…」
悲しそうな表情で麗美はそう言ったが、麗美が本当に言いたいことはそれではないことはその表情から窺えた。
麗美が本当に言いたいこと… それはずっと俺が思っていたことと同じだと思う。
「もうあの手紙は気にしてない… それにあれは麗美が俺のことを思って書いてくれたものだろ?…」
「でも私は離れようと優真に言った…」
「だけど今でも俺のことを好きでいてくれている… 」
俺がそう言うと麗美はこくんと小さく頷き瞳を潤ませて俺の方を見た。
「麗美… 俺は今でも昔と同じように麗美のことが好きだ。幼馴染だからじゃなくて一人の女の子として…」
「……優真…」
「だけど… これからする話を聞いてほしいんだ。どうして今日、俺が麗美に会いに来ることになったのかを…」
優真は真剣な顔をしている。私も優真がどうして連絡をくれる気になったのかは知りたい。
駅で会った時や二人で話している時の優真をみてて優真はまだ私のことを好きでいてくれているのは分かった。
二人でいる時の感じはあの頃と全く変わらない…
だから分かる、今の優真に他に付き合っている人がいないことが。
だけど、…… 優真は私と以前の関係に戻ろうとは言わない…。
私は優真に思いを伝えてキスをした…
もし優真が昔の関係に戻るために来てくれたのなら、その時に思いを伝えてくれたはずだ。
私を力いっぱい抱きしめて… もう一度一緒にいようって……
優真は昔から大事な気持ちをはぐらかしたりしない。思っていることが行動に出る…
優真は何を思ってるの?… 何を考えてるの? 私には分からない…
俺は麗美に今でも好きだということを伝えた。その気持ちに嘘はない。
ただ、もう一つ… 大切なことを言わなくてはならない。
「麗美、今日来たのは俺自身の気持ちを確かめるためなんだ」
「優真の気持ち?…」
「俺には麗美以外にもう一人、好きになってしまった人がいるんだ…」
麗美にこんなことを言う日が来るなんて俺は思いもしなかった。
麗美は俺にとって最高の幼馴染であり… そして最愛の女の子…
麗美と同じように好きになれる女の子ができるなんて俺自身、考えたこともなかった。
だけど俺の言葉を聞いた麗美の表情は意外なものだった。
唖然とするわけでもなく、悲嘆にくれるわけでもなく、悲しみをにじませる様子もない…
麗美はしっかりと俺の顔を見ていた。
「麗美… ごめん。麗美のことが好きなのに麗美以外にも好きな子ができてしまって…」
「優真… 優真は悪くないよ。離れようと言ったのは私… 優真の傍にいてくれる子を見付けてと言ったのも私… だから優真はそんなことを思わないで」
「いや、違うんだ… 俺は他の娘を好きになろうとしてたんじゃない… 麗美の事だけを思っていた。それなのに気付けば俺はある女の子のことを… 俺自身の甘えた気持ちが招いたことなんだ」
優真に他に好きな女の子ができた…
優真の口からその言葉を聞いた…
覚悟はしていた… そんなことも十分にあることだと。
それにそう仕向けたのも私… 私は優真への手紙で他の子を見付けて欲しいと…
でも… 実際にその言葉を優真の口から聞かされると… 私の胸は張り裂けるように苦しくなった。
必死に我慢しているけど… 手や肩が小刻みに震えて止まらない。
考えてはいた… 考えてはいたけど、実際にその言葉を聞くことがあるなんて思っていなかった。
だけど、… 優真は私のこともまだ愛していると言ってくれている。
それでいて他にも好きな女の子もいる… 優真は迷っているのかな…
「優真はどうしたいの?」
私は優真が今何を思っているのかを聞きたい。
「麗美、離れてから今日にいたるまで俺に何があって、何を考えてたのか聞いてほしい…」
「うん、… 聞かせて… 優真が何を思ってきたのかを」
俺は麗美の手紙を受け取った1年前から何を思い何を考えていたのか語り始めた。
手紙を受け取り麗美との関係を無くしたと思ったこと…
転校した先でできた友人たちとの日々の生活の中で麗美との思い出が薄らいでいったこと…
そして高校に入学するときには麗美のいない生活を受け入れられるようになっていたこと…
だけど、入学式の日に愛美と出会って麗美への思いが一度に呼び戻されたこと…
そしてもう一度麗美に会おうと決心できたこと…
それから次第に愛美との関係が近くなっていったこと…
そして… 昨日愛美に告白されたこと…
告白された時に気付いた自分の気持ち… 俺が愛美のことも好きになっていたこと…




