行動開始
愛美が俺の家に初めて来てから数日が経過した。
ゴールデンウィークはもうすぐだ。今日家に帰ったら麗美の実家に電話を入れようと思っている。麗美の連絡先を教えて貰わないと…
昨日から母さんが帰ってきてて弁当も作ってくれるようになるのだが、
昨日愛美が俺の分を作ってくるといったので、今日は愛美にお世話になることにした。
ただ最近、少し気がかりなことが… 学校では愛美とできるだけ一定距離を保とうと
してるのだが、それを愛美が完全無視して好きなように近づいてくるので、俺のことを喜んで殴りたいと思っていらっしゃる方々の熱い視線が俺に降り注ぐようになっている。
ある意味おれは人気者になった。
俺にとって今は大事な時だ。愛美と仲がいいといった嫉妬を受けてる場合じゃない。
麗美ともう一度、昔のような関係に戻ることだけが今の俺の望みだ。皆の勘違いで攻撃されてる場合じゃない。
そもそもそんなに好きなら愛美にアタックすればいい… 多分瞬殺されて撃沈すると思うけど…。
この前も偶然、愛美に言い寄る男を見た。愛美を廊下の方へ呼び出して何かを言っているようだったが、3秒後には愛美が戻ってきた。そのあとに残されたのは燃え尽きて灰になった男だけだった。
まさに秒殺だ。多分男の言い分を何も聞いてあげていないんだろうと思う。
愛美のあの態度は男にとって寒い、寒すぎる… 冥王星の気温なみに寒い。
俺が麗美に会いに行ってあんな態度を取られたら、すぐに死ねる自信はある。
以前、愛美は男と付き合う気はまだないと言っていたが、今も変わってないんだろうと思った。
今日も午前中の授業が終わりお弁当の時間がやってきた。今日は愛美の特性弁当なので楽しみにしている。
「みんな集まったな、それじゃ 食べようか」
静城が俺の前の席に座り、音頭を取って弁当を開け始めた。
「はい、優ちゃんの弁当。頑張って作ったんだよ」
そう言って俺のために作ってきてくれた弁当を静城や芽生の前で俺に渡した。
「おーッ! 今日は愛美ちゃんの手作り弁当か、優真は幸せもんだな」
「ほんっとにね~ 優真、ここまでして貰ってるんだから、もう付き合っちゃえば?」
「え、ええ~ 私たちが?… 優ちゃんは…どう思う?」
愛美は頬をほんのり桜色に染めて恥じらうように上目遣いで俺の方を向いて言った。
芽生が変なこと言うから恥ずかしくなって赤くなっちゃってるよ…。
でもなぜ俺に振ってくる? これって結構答えるのが難しい… 完全否定も愛美に失礼だし、
かといって付き合いたいというのも失礼だし… それに言えるわけないし。
だいたい愛美みたいな美貌を持つクラスの女神様が俺を好きになるわけねーだろ。
麗美は俺と幼馴染だから一緒にいてくれたけど… 幼馴染補正がなかったら絶対に無理だし。
どうしよ… ここは玉虫色で誤魔化すしかねーな。
「俺と付き合って貰えるなんて贅沢すぎて考えてねーよ」
自分を卑下して相手を持ち上げ、さらに主目的の付き合えないをさりげなく忍ばせる。
なかなかいい回答だ・・・自己採点90点
完全回答を出せたと思い、自分で満足いって周りを見ると呆れ返った芽生の顔とやれやれといった静城の顔、何かが期待外れで残念そうな愛美の顔が並んでいた。
なんで? あまりの周囲からの反応の悪さに俺は訳が分からない。
とにかく白けた場の空気を盛り上げるために俺はゴールデンウィークに行こうと考えた場所を芽生に伝えた。
「ゴールデンウィークのときの行先、この前愛美と相談して遊園地に行こうってなったんだけど、どう?」
芽生に言うと
「よし、それでいこう! 静城もそれでいいよね?」
「遊園地かぁ~ 久しぶりで楽しみだな」
そう言う訳で行先は遊園地に決定、愛美の希望が通って良かった。
その後は遊園地で何に乗るかなどの話題で結構盛り上がった。
そんな話をしながら愛美の作ってくれた弁当を頂いたが、何を食べてみても美味しい。
俺も結構料理には自信があるから分かるが、愛美はかなりの料理上手だ。
「愛美、ご馳走様でした。凄く美味しかった」
俺はそう言って空になった弁当箱を愛美に返すと、
「本当に? 喜んでくれてよかった」
そう言って可愛い笑顔で俺から弁当箱を受け取った。
「あのね… 今日も暇だったら優ちゃんの家に行ってみたいんだけど…」
弁当箱を渡すときに愛美が小さな声で俺に言ってきたが、
「ごめん、母さん帰ってきてて… 母さんが愛美の顔を見るとびっくりするだろうし、説明に時間かかりそうだしね。連休に入ったら母さんまたいなくなるからその時でいい?」
「そっか… 確かに説明難しいよね。じゃあ、連休に入ったら遊びに行くね」
「ああ、いいよ」
愛美は納得した様子で俺に言った。
確かに母さんに説明するのも大変だけど、本当は麗美の実家に大切な電話をしないといけないんで今日は愛美に来てもらうと困ってしまう。
その日の学校も終わり、俺は気合を込めて家に帰ってきた。
これから麗美の実家に電話をかけて、麗美の連絡先を教えて貰う。ここからがスタートだ。
「ただいま」
「ああ、お帰り。学校はどうだった?」
家に帰ると母さんが家の用事をかたずけていた。
「相変わらずだよ。高校にも慣れてきたしね」
母さんは忙しそうに掃除やら片付けをやっている。
「母さん、俺 今から麗美の家に電話しようと思うんだけど…」
俺がそう言うと母さんは手を止めて俺の方に近づいてきた。
「やっと電話する気になったんだね… もっと早くすればよかったのに」
「麗美の手紙を見て… もう連絡しない方がいいかと思ってたんだ」
「それで暗い顔してずっといじいじしてたって? ちゃんと向き合って話さないからだよ」
母さんから結構きつい言葉が返ってきた。
「中学のときも会いに行きたいって言うもんだと思ってたのに…」
「会ってもすぐにまた離れないといけないのが辛いから…」
「それは今でも同じでしょ?」
「今は自分の気持ちがはっきりしたから大丈夫だよ」
「母さんね、本当に麗美ちゃんを気にいってたんだよ」
確かに母さんは麗美のことを凄く気に入っていた。麗美が家に来ると俺よりも麗美を可愛がってた。
「でも優真、もし麗美ちゃんと元に戻れてもこの先大変なんだよ。分かってるの?」
「そんなこと最初から考えてるよ」
「お前が大学に行くまではずっと離れたままなんだからね」
高校を出るまであと3年、大学になれば麗美の近くに行くことも可能にはなる。
ただ、たとえ元に戻れても3年間は遠距離で続けなければいけない。
「ああ、大丈夫だよ。戻れればこれから3年、何とか頑張るよ」
「そうかい、だったら頑張って… あんな可愛い子とはもう出会えないよ」
母さん、実は出会ってるんだけど… しかも友達になってる。
今度うちに来て母さんと会うときがあると思う… 心の準備をしといてね…。
「とりあえず電話する」
俺はそう言って部屋に戻り、考えをまとめて麗美の実家に電話を入れた。




