第一回「ハピネスちゃんとクライネくん」
あたし、ハピネス・ピース!
いつも明るい十七歳!
あたしはね、ネスネス村にある女性用衣類のお店『ピース』を営んでいる家に、三女として生まれたの。けど、今は、長女と次女はうちにはいない。というのも、ちょっとした事情があって。二人のお姉ちゃんのお母さんは、あたしのお母さんとは別の人だったんだ。
お父さんの話によれば、だけど。
お姉ちゃん二人を生んだ、お父さんの前のお嫁さんは、お父さんの浮気によって出ていってしまったらしいんだ。
ちなみに、その浮気相手が、あたしのお母さん。
でもね!
そんなこと、あたしはちっとも気にしない。
村の人の中にはいろんな悪口を言う人がいるけれど、お母さんはあたしにとって一人だけ。とっても優しいから、違う女の人の子どもに生まれたかったなんて思ったことは一度もないの。
お父さんがいて、お母さんがいて、『ピース』を営業して。
そんな穏やかな暮らしさえあれば、それでいい。
あたしはずっと、そう思っているの。
他の人の意見なんて気にしない。
あたしは、あたし自身が幸せと思えるならそれでいいの。
じゃあそろそろ、お隣に遊びに行ってきまーす!
———
僕の名前は、クライネ・イツモです。
正直なことを言うと、僕は人見知りです。あまり、たくさんの人と関わることが得意ではありません。なので、僕はいつも家の中にいます。
僕の家は、ネスネス村の中では、比較的大きい部類です。
五階建てで、家の中のあちらこちらに銅像が置かれています。
広間が迷路のようになるくらい大量に置かれている銅像の中で、僕が個人的に好きなのは、天使の像です。体に布を巻きつけた女性のような姿をしている像なのですが、一番好きなところは、裾からちらりと覗いているふくらはぎです。
そうそう。
それと同じくらい好きなものが、僕にはあります。
隣の服屋『ピース』の娘さんです。
彼女は、ハピネスといういかにも幸福に恵まれそうなお名前で、素敵だと思います。
時折僕の家へ遊びに来てくれる、唯一の人です。
あ、勘違いしないで下さい。
唯一の女性、ではなく、唯一の人です。
年齢的には僕の方が若干上ですが、彼女の明るさにはいつも尊敬させられます。
あぁ、今日も来てくれたら嬉しいのになぁ。




