「自由な女神と氷華の聖女」
金のボインvs銀のケモミミ……レディファイッ!
「あーうー! ちょっとコバヤシー! そろそろ決めちゃうべきだよ、そうしないとサーシャが怖いままになっちゃうよ!!」
あーうー、やめてください。
キャサリンさん、マジやめて? その可愛らしい顔に似合わないダイナマイトバディを揺らしながら俺に近づかないで? 好きになっちゃうから。
『好きになってください』
断る! 意地でも耐える! 俺の精神力を舐めるなよ!!
「アルテリアさんはどうですか? お相手はお決めになりました?」
「その話題を振らないでくれない? 嫌になるから」
「じゃあ、この部屋まで何をしに来てらっしゃるの?」
「……国の人と兄さんがうるさいから」
「あらあら、お可愛らしい理由ですのね」
「うるさいな、クリスティーナはどうなの!?」
「私は二名ほど候補がいらっしゃいますので、うふふふ」
離れた席のイギリスの子と……ええとあの犬耳で金髪ドリルヘアーのお嬢様っぽい子はフランスのオーバー・ピースだったかな。その二人が何やらお相手についての話題で盛り上がっている。
「貴女好みのカエルやカタツムリにそっくりな人なんて見つかったの? 凄いわね」
「失礼ね! そんな顔の人なんて探していませんわ!! 」
やだ、あの子も結構立派なたわわをお持ちですね。ドリルヘアーなんて現実で見たのは初めてですが凄く似合ってます!
『彼女はクリスティーナ・アルヴェーヌ。婚約者候補の一人です』
嘘だろ!? どれだけ居るんだよ!? ひょっとして適当に選んでるんじゃない!?
「ところで、結局アイツのことどう思ってるの? カミーラ」
「アイツ? ああー、アレのことね。安心して、論外だから!!」
盛り上がってるのはあの二人だけじゃない。部屋の皆が気になる異性について茶化しあったり、からかい合ってワイワイしたり、何かこっちをジロジロと見てきたりー……
「みんな積極的だね」
「国と世界の未来がかかっているからな。それに此処で気になる相手と出会えたなら幸運な事だぞ」
「……まぁ、そうだろうけどさ」
「だが、俺は花嫁くらいもっと気楽に選びたいのが本音だな。この中に気になる相手が居ないって訳じゃないんだが」
隣のジルバ兄貴も少々うんざりした顔でボヤく。
「国と世界の未来ねぇ……」
「はっはっは、嫌になるよな」
絢爛交歓祭ね、会議にしちゃ大層な名前だなと思っていたが……とんでもねぇわ。今の俺には皮肉にしか聞こえねえよ。
「でも、俺は」
「私はコバヤシを選ぶ。これは、もう決めたことだから」
「ふおぉ!?」
サーシャさんはそう言って俺の隣にやって来る。まるで俺の返事を待つように俺を見つめ、モジモジとしながら立っている!
(うぐっ、まずい! こ、これはまずい……!!)
駄目だ、耐えろ! 今は耐えろ! 例え目の前の美少女が『OK』な顔で言い寄ってきても耐えるんだ!!
「え、えっとね! そのね! 俺はっ!!」
「……まだ、早いとは思うけど」
「そうそう、サーシャはもう少し大きくならないとね! あたしは全然オッケーだけどー!!」
「ッ!!」
サーシャさんを押しのけるようにキャサリンさんは前に出てふふんと自信満々に胸を張る。ぼよんとバストを強調するキャサリンさんの挑発的な態度がサーシャさんの逆鱗に触れた。
「ニィィシュチーイ! お前みたいな牛よりずっとマシだ!!」
「う、牛ぃ!? ちょっと、言って良いことと悪いことはあるんだよー!?」
あーもー、またこうなっちゃったよ。
本当に仲いいなこの二人は。喧嘩するほど仲うふふって言葉は本当なんだね。いっそのことキャサリンさんとサーシャさんをくっつけて……
「もう、怒った! ちょっとこっち来なさいよ!!」
\ガタッ/
「フィニャーァニェット! ぶっ飛ばしてやる!!」
\ガタッ/
とか思ってる場合じゃなさそうだ! 笑って誤魔化せないくらいに険悪なムードになってる!!
「え、ええと二人共……お、落ち着」
「冷血チビ女のシステマ格闘技がいつまでも通用すると思わないでよ! こっちも鍛えてるんだからね!!」
「ちょっと落ち着いて、ここは深呼吸……」
「温室育ちのソーセージ女が勝てると思うなよ! 親指へし折ってやる!!」
ちょ、二人共やばい! 何かさっきまでと別人みたいな目つきと声になってるよ!? やべぇ、空気がピリピリしてる!!
「もうどちらかを貰ってやったらどうだ? コバヤシ。どちらを選んでも祖国の為になるだろう」
軽く言ってくれますね、ジルバの兄貴ィ!!
『彼の言う通りです。選びましょう』
選べるかァァー!!
「そ、そげなこといわれもうしても……今の俺は」
「そうだ、それが二人のためだぞ?」
「うぉお、びっくりしたぁ! 急に後ろに立つなよ!!」
「いや、さっきからずっと居たんだが」
「クーロンは気配を消しながら近付くのが特技だからな」
「嫌な特技だね!?」
「勝手に特技にするな!!」
「カモォーン! ヘーイ、カモォーン!! ラァントガール!!」
「ダヴァァーイ! 脳細胞ピザの牛女!!」
どうしよう、このままだと二人の美少女が俺を巡って大喧嘩してしまう!
精神状態:『平常』→『注意』
(どういうことだ、一体タクローくんの何が彼女達のハートを射止めたと言うんだ……!!)
「カモオオォォ────ン!!」
「ダヴァァァァ────イ!!」
(どうしてこの気持ち悪い半生体サイボーグがここまでモテるんだ!?)
何度、自分の顔を部屋の大鏡で確認しても理解できない。
金髪巨乳のアメリカ美少女に銀髪ケモ耳ロシアン・ビューティ。対照的ながらどちらも際立った美貌を誇る二人に愛されるほどの魅力がこの168cmのエヴァ何とかにあるというのか!?
『コバヤシ・タクローの戦績及び他国の終末対抗兵器との友好度、そして彼女達との親密度から判断して当然の結果です』
そんな事を言われても納得できるかどうかは別の問題だよ!? 第一、今の俺は……!!
『問題ありません。貴方もコバヤシ・タクローです』
大問題だよ!!
「ちょ、ちょっと二人共! とりあえず落ち着こうよ!!」
俺はMK5なキャサリンさんとサーシャさんを何とか説得しようと試みる。
「邪魔しないで! 流石に今日はムカついてんのよ!!」
「え、えーとね! ここは……」
「うるさい! 私も今日は我慢できない!!」
だが、失敗した!
何でこうなるんだよ! 女の子の喧嘩とか一番見たくないわ! しかも二人共、動きがその道のプロっぽいし! 間違いなく殴り合いの喧嘩を始める気ですよ!!
「ストーップ! ストーップ! ダメ、女の子が殴り合いなんてしちゃダメ!!」
「コバヤシ、合図をお願い! ちょっとこのチビ静かにさせるから!!」
「話聞いてた!? やめろっつってんだよ!?」
「コバヤシ、退いて! そいつ殴れない!!」
どうする……どうすればいいんだ!! こんな時、タクローくんならどうするんだ!? タクローくんなら……!!
『ですから、どちらかを選んで結婚を』
うるせぇ、黙ってろ馬鹿ァ! まだ結婚したくないから悩んでるんだよぉー!!
「ふ、二人共……」
「いいよ、鳴らしてよゴング!!」
「ダヴァァーイ!!」
「コバヤシー、ちゃんと勝った方と結婚してやれよ!?」
「そうそう、私たちもいい加減に決めて欲しいと思ってたのよね!」
「……まぁ、どっちとくっついても同じだろうけど」
なんか皆盛り上がっている!
あーもー! そうだね、俺でも関係ない第三者だったら君らと同じ事言ってたかもしれないね! でもね、今の俺からするとすげー困るのよね!!
『喧嘩に発展した場合、体格から想定される筋肉量とそれから繰り出されるパンチ力を考慮して純粋な格闘能力ではキャサリン・ブレイクウッドが有利。戦闘姿勢や呼吸、全身の筋肉の緊張等から考慮してテクニックと俊敏性に関してはサーシャ・アヴローラが有利。総合的な戦闘力はほぼ互角です』
冷静に戦力分析してないで二人を止める方法を考えてくれないかな!? 俺は喧嘩をやめさせようとしてるんだよ!!
『……言葉による説得は既に不可能です』
畜生、駄目だ! このツンドラAIにはやっぱり人様の心は理解できないんだ!!
「自由な女神と氷華の聖女」-終-
\ANIKI/九龍\KOBAYASHI/ >Саша<>Catherine<




