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「A La La Land」

美しいアイジョウに性別など関係ありません。古事記にも書かれている。

「……」

『目が覚めましたね。それでは、再学習を開始します』

「嘘だっ!!!」


 気がつけば俺は忌々しき白い空間に居た。


 ああ、油断してた! 完全に気を緩めてたぁ! どうして俺は寝てしまったんだぁ!!


『喜んでください、これで再学習の時間が与えられました』

「やだぁぁぁー!!」

『では、このまま深睡眠モードに移行しますか? 次に目覚めればアメリカに到着してしまいますが』

「うううっ!!」

『そこまで学習を拒否するなら強要はしません。後悔のない選択をしてください』


 アミダ様は無表情で腕を組んで俺の判断を待つ! 後悔のない選択ぅ!? そんなの最初からあるわけないだるるぉ!?


「ああ、もう! 次は何を学べば良いんだよ!?」

『再学習を選びますか?』

「いいから始めろ! その代わり、終わったら乳揉ませろよ!!」

『ご自由に』


 俺が観念して学習の意志を示すとアミダ様は少しだけ表情を緩めた。


「で、俺はどうすればいい!?」

『まず終末対抗兵器の種類について学んでください。その次に他国の終末対抗兵器との大まかな関係を再説明、次に外国語の勉強、次にテーブルマナーの学習、次に』

「オーケー! その辺にしてくれ!!」


 本番が始まる前に心が折れそうになった俺はアミダ様を止める。


「では再学習を始めます。手元に現れた記憶教本メティスCの13ページを開いてください」

「はぁ……ええと。まず終末対抗兵器は第一種から第五種に分けられ、更にそこから人類種、得意とする戦闘系統、性別によって細かく分類されます。第一種終末対抗兵器とは終末対抗兵器として正式に認可された最初のカテゴリーでー」

『声に出さなくても結構です』


 俺は分厚い教科書を読み進めていく。


 相変わらず荒唐無稽で頭が痛くなるようなぶっ飛んだ内容だったが、不思議と何の抵抗もなく頭に入ってきた。もう後がないと追い詰められているからか、アミダ様の胸を揉みたいからか、それはわからない……


「……なるほど。俺みたいな第一種J型は日本にしか居ないのか。特にJ型は今まで日本でしか確認されていないと」

『では、ここで質問です。世界で最も多く確認されている終末対抗兵器のカテゴリーは?』

「第二種C型。特に女性が多い」

『正解です。次の段階に進みます』


 キョワワーン!


 突然、アミダ様の身体が発光する。まるで魔法少女の変身バンクが如く青い光に包まれながら体型が大きく変化……


『彼女がアメリカの終末対抗兵器。キャサリン・ブレイクウッドです』


 眩しい金髪とぼよよんと揺れるダイナマイトバディが魅力なアメリカン美少女に変身した!


「のわぁっ!?」

『彼女と貴方は非常に友好な関係にあります。共闘した回数も多く、最有力婚約者候補の一人と言って良いでしょう』

「へぇっ!?」


 婚約者!? 婚約者と申したか!? どういうこと!? 僕まだ16歳の未成年だよ!?


「ねぇ、アミダ様!? 今、婚約者候補って聞こえ」

『彼女の分類は第四種G型。元は第二種A型に属していましたが、過去の戦闘で重傷を負いその影響でカテゴリーが変化した特殊なタイプです。戦闘系統は近接特化型。私の分析では貴方との相性は全終末対抗兵器の中でも最高です』

「ねぇ! 婚約者候補って何!? 初めて聞いたよ!?」

『では、続いて』


 キョワワーン!


 俺の話を聞かずにアミダ様は再変身! コッテコテの変身バンクを経て金髪巨乳なアメリカ美少女とは対照的な銀髪スレンダー美少女の姿にチェンジした!!


『ロシアの終末対抗兵器のサーシャ・アヴローラ。彼女も貴方と友好な関係にあります。キャサリン・ブレイクウッドと同じく最有力婚約者候補の一人と判断して良いでしょう』

「ぬおおっ!?」

『分類は第五種C型。戦闘系統は搭乗型。彼女自身に〈終末〉との戦闘能力は無く、専用に開発された機動兵器に搭乗して能力を発揮するタイプです。キャサリンとは性格も戦闘系統も対照的ですが、貴方との相性は良いです』

「ねぇ、さっきから相性がどうとか聞こえるんだけど!? そろそろ説明してくれない!?」

『では、続いて』

「聞けよぉぉーっ!!」


 ここに来てまた肝心なところを説明しなくなったアミダ様。やっぱりこのAI嫌い! 少しでも人間らしいところがあると思った俺が間違ってた!!


『貴方と親交の深い終末対抗兵器の紹介が終わった後に詳しく説明します』

「あっ、そうですか……」


 ……と早急に決めつけた俺が馬鹿だった。ごめん、許して。


『紹介を中断して説明に移行しますか?』

「あっ、いえ……すみません。続けてください」


 頭に角が生えた超絶イケメンに変身し、こっちを威圧するように聞いてくるアミダ様に俺はペコペコと頭を下げながら続けるようお願いした……



 ◇◇◇◇



「退屈だよ、ハニー……」

「17時まで我慢しな、あとだらしない格好で寝るんじゃないよ」

「あー、退屈ゥー! 今からアメリカ支部で爆破テロでも起きないかなーっ!!」

「何てこと言うの、アンタ! 冗談でも言っちゃアウトだよ!?」

「えー、だってあたしココが嫌いなのよー……」


 時刻は午後3時。アメリカ支部の特別待合室にある大きなソファーに座り、キャサリンは退屈そうに足をバタつかせる。隣で座るレベッカはうんざりしながらキャサリンの相手をするが、それでも彼女は一向に鎮まらない。


「あと2時間、昼寝でもしてな!」

「えー、じゃあハニーが子守唄歌ってー?」

「ざけんな!」

「えー、歌ってよー?」


 キャサリンはレベッカの膝上に頭を乗せ、上目遣いで強請るように言った。レベッカは目を逸らすが、キャサリンがあまりにしつこく強請るのでついに根負けしてしまう。


「ねー、ハニーィ?」

「わかった、わかった! だから膝を枕にするのはやめな!!」

「嫌よ、ここが一番落ち着くもの」

「……ったく、アンタはぁ!」

「ハニー、歌って?」

「わかった、わかったーっ!!」


 レベッカが顔を赤くして了承したのを見るや、キャサリンは嬉しそうに笑った。


 二人の付き合いは長く、ジュニアスクールの頃から交流がある。昔からキャサリンは甘えん坊かつ自由奔放な性格で、しっかり者のレベッカが側で見ていなければ誇張抜きで『何をしでかすかわからない』という本物のお転婆娘だ。


 私生活もレベッカに頼り切りであり、正直彼女が居なければまともに生活もできないだろう。


「何が聞きたいの?」

「きらきら星ー」

「アンタ、本当にその歌好きねー……」

「聞くと落ち着くのよ、特にハニーのきらきら星はね」

「はいはい……」


 レベッカはそんなキャサリンにうんざりしながらも、内心では放っておけないらしく何だかんだで二人の関係は良好だ。キャサリンが彼女をハニーと呼称し、常日頃からスキンシップを要求するので傍から見ればレズカップルにしか見えないが恋愛感情の有無は不明。


「ねぇ、ハニー」

「何よ」

「ハニーは、あたしより長生きしてよね」


 キャサリンにいきなり突拍子もない事を言われてレベッカは困惑する。


「急に何言い出すのよ……」

「ハニーが死んだら、あたし戦えないよ。生きていくのも嫌になっちゃう……」

「バーカ、キャシーを残して死ぬとか有り得ないでしょ。アンタが負けない限り、私も死なないのよ」

「あはは、そっかー。じゃあハニーのために頑張らなきゃ」

()()()()()()も付け加えろ、バカ娘。終末対策局の皆もアンタをサポートしてくれてるんだから」

「でも、終局の人は大嫌いー!! あたしの()()()()()()()()()()んだもの!!!」

「そうしなきゃアンタが死んでたからでしょーが!」


 コバヤシと違って生身の人間にしか見えないキャサリンだが、彼女の身体にも秘密がある。その秘密はレベッカを含めた極一部の人間しか知らされていないが、それがキャサリンがこのアメリカ支部を好きになれない最大の理由だ。


「でもさー……せめて、身体だけはハニーと同じでいたかったのよ」

「はいはい、じゃあ歌うよ!」

「のぉーう! 話を逸らしたぁー! ひどーいっ!!」


 むにゅむにゅ


「ひゃああっ! 胸を揉むな、胸を!!」

「うわぁああーん!」

「ふあああっ! もう、何なのよアンター! 何がしたいのよ……あふぅっ!!」

「あれ、ハニーのバスト……前より大きくなったんじゃない? 今ならDカップくらいありそう」

「くぉぉぉのぉおおー……ステューピィィィッド(バカ娘)!!」


 ボコォッ!


「んぎゃあっ!」


 レベッカ渾身の鉄拳を額に受けてキャサリンは悶絶する。流石に悪ふざけが過ぎたようで、レベッカもカンカンになっていた。


「いぃぃ……ったぁあ~い!」

「もう知らない、膝枕も子守唄もキャンセルね」

「のぉぉーう!」

「ノーじゃないよ、ノーじゃ! こっちがノー(嫌だ)って叫びたいわ!!」

「ハニー、許してー! もう揉まないからー!!」

「うっさい! あっち行け!!」

「あたしのバスト好きなだけ揉んでいいからぁ!!」


 ばいん、ばいんっ


「牛みたいなバストをわざとらしく揺らすな! 何か腹が立つ!!」

「うわぁああーん! ハニィイ────ッ!!」


 キャサリンは泣きながらレベッカに抱きつく。


「ぎゃあああーっ! もう暑苦しいーっ!」

「あーいむ、そぉぉーりぃーっ! ふぉーぎぃぶみぃーっ! ぷりーず、ららばぃぷりぃーず!!」

「あぁあーっ! もーやだーっ!!」


 二人の声は廊下にまで響き、職員達が何とも言えない表情で待合室の前を通り過ぎていく。


 あの二人のじゃれ合いはアメリカ支部の名物となっており、男性職員達の癒やしになっているとかいないとか。



「A La La Land」-終-


\Rebecca\Catherine/

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