「ああ見えてfor you」
どう見えるか、それともどう見るか。それこそ人それぞれってことなんでしょうね
「……一応、おまえらに聞いておくが好みのタイプは」
……まぁ、言いだしたのは俺だし。とりあえず好みくらいは聞いておいてやるか。ここで疑われたらこの場で殺されかねんしな。
「小柄で可愛い女の子!」
「黒髪で巨乳なお姉さん!」
「目が大きくて童顔の女の子!」
「オーケー、オーケー。任せ……」
>ガタッ<
「ケモミミの女の子!」
「眼鏡の女の子!」
「足がエロい女!」
「尻がエロい女!」
「ふとももぉ!」
「モフモフ尻尾な女の子!」
「1つ目の女の子!」
「羽が生えてる女の子!」
「おっぱぁい!」
「金髪碧眼で耳が長くてお上品な……」
>多すぎぃ!!<
お前らちょっと落ち着けやぁ! 一度に言われても覚えられるかボケェ! クラス全員が寄ってたかって自分の性癖ぶち撒けやがって畜生共が!!
『……友人関係の全面的見直しを提案します』
言われなくてもわかってるよ、アミダ様ァ! 俺だってこんな女に飢えたケモノ臭えロクでなし共と一緒に居たくねぇよ!!
「おっぱい大きくて優しくてお母さん基質の……」
「うるせぇえええー! お前らちょっと離れろ、暑苦しい!!」
\キーンコーンカーンコーン/
「頼んだぜ、コバヤシ!」
「とりあえず可愛い子を頼むぜ、コバヤシ!」
「信じてるからなぁ!!」
「俺、おふくろに彼女出来たってもう伝えてんだからな、頼むぜ!?」
「ぼ、僕ぅ! 一つ目の女の子がぁ!!」
「うっせぇぞ、横田ぁ!! 女の子は目が一つでも二つでも可愛いかったらいいだろぉん!?」
ガラガラ……
「はーい、席についてー。これから2限目の授業を始めまーす」
さーて、どうしようかな。何でこんな事になったんだ。何であんなデマカセ言っちまったんだ俺は……!!
「ああもう、くそったれ……!」
重すぎる期待を背負って頭を抱える俺を尻目に、2限目の英語授業が始まった。
精神状態:『注意』→『要注意』……要注意。安定剤の使用を提案。
◇◇◇◇
「はーい、みんな気をつけて帰りなさいねー!」
そして気がつけば放課後が訪れた。あー、駄目だ……全然授業が頭に入らない!
『今夜、メモリミテート・ルームで再学習を』
断る! 断固として行かぬ!
「うぇーい!」
「先生、また明日ー!!」
「うふふ、佐藤くん。明日は創立記念日よぉー?」
「あー、休みか!」
「横田ぁ、帰りにゲーセン行くぞオラァ!」
ああ、そういや4月31日は創立記念日だったな。でも休めねえんだよなぁ、小林くんは!
「よし、帰るかー」
「何だ、今日も帰るのかー。つれないなーコバヤシくんはー」
「しゃーねーだろ。大体、昨日のアレを聞かされてんのにお前とマックに行けるかよ」
「クソァ! 俺は諦めんぞぉ!!」
「諦めろ、プレ何とか。まぁ、帰宅部も忙しいんだよっと」
「お前は帰宅部じゃなくて送迎部だろ。妹ちゃん専用の」
ははは、安藤くん? あまり私を怒らせないほうがいいぞ?
「面白い冗談だ、気に入った。お前に女の子を紹介するのは最後にしてやる」
「だってよ、安藤。良かったな」
「はは、ごめんね? 許して??」
「何を勘違いしてるんだね、俺は別に怒ってないよ? ただお前に紹介するのがクラスで一番最後になるだけだ」
「ごめんなさい! 許してください、コバヤシ様!!」
土下座である。
安藤は尻尾をピーンと水平にしてそれはそれは見事な土下座を見せてくれた。ああ、俺の中の安藤のイメージが音を立てて崩れ去っていく。俺はこいつを『クールな二枚目ぶってる何か変な奴だ』と思っていたんだが……今や『女に飢えてるただのトカゲ野郎』にしか見えん。
「ふん、無様だな、安藤」
「くっ……田中、貴様ァ……!」
その点で言えば、姿は変われど未だに明衣子ちゃん一筋の田中のイメージは未だに安定している。凄いね、田中くん。そんなプレデターみたいな姿になっても、妹の尾行と盗撮が趣味とかもうどうしようもねぇ。
『……交友関係の見直しを提案します』
言われなくてもわかってますよ、アミダ様。でも、まだその時じゃない。
「じゃあ、俺は帰るわー。またなー」
「うーす。でもたまにはマクドに付き合えよな、メイコちゃんの話抜きにしてさー」
「あいよー」
何だかんだであいつらは俺の大事な友達だからな……
「……あ、あのタクロー?」
「……というわけでして、フリスさん。お願いします!!」
「と、とりあえず頭を上げて下さい!」
そして友達二人と別れた俺は校門前で待ってくれていたフリスさんと暫く歩いた後、人気の少ない脇道にそれて即DOGEZAした。
「お願いです、僕を助けると思って!!」
「ええと……私のお友達を?」
「はい、紹介して欲しいんです! 出来るだけ、沢山!!」
その理由がこれです。
涙すら枯れるわ。何でも言うことを聞いてくれるフリスさんに土下座してお願いすることがこれだよ! 惨め過ぎる!!
『……』
当然ながらアミダ様は絶句! いやむしろ黙ってくれてた方が嬉しいわ! 今日はもう喋らないでいて!!
「でも……何で急にそのようなことを?」
仰る通りでございます。正直に言いたいですが、大体の原因が貴女にあるなんて僕にはとても言えません。しかも原因は貴女ですが、ここまで事態が悪化した理由は俺にあるのが質悪いです。
「……」
「……言えませんか?」
「とりあえず俺と君に罪はないことだけは確かです」
やっぱり無理があるか。仕方ない、残された手段は妹の友達を……って駄目だ! こっちの方が難易度高ぇ!!
『……正直に打ち明けましょう』
俺に命を捨てろと仰るのか!?
「……ふふ、わかりました」
「えっ?」
「私に任せて下さい」
>マジで!?<
精神状態:『要注意』→『不良』
オイオイ、マジかよ。マイエンジェル。普通居ねぇよ? こんなお願い事を笑顔で聞いてくれる女の子なんて。本当に君は人間の子として生まれてきたの? パパンかママンの背中から常時後光とか差してない??
『……』
「実は、私の学校でもタクローの学校の生徒さんたちがよく話題に出てまして」
「そうなの!?」
「はい。皆さん、とっても興味津々なんですよー」
ほほう。とても興味深い話を聞きました。
なるほど……お向かいの女子高生達もうちの学校が気になると。
やだ、ちょっと向こうの生徒さんの見え方が変わっちゃう! そうかそうか、立場や教養が違えど彼女達も異性が気になるということか!!
「へー、意外だなー」
「きっかけがあれば是非とも交友を持ちたいと言う人もいますよ」
「だったら是非ともお願いして下さい!」
「わかりました。皆さん、喜びますよー!」
何だが驚くぐらいにすんなりと話が決まりそうだ。
しかし……そうかあの麗しき乙女の園に通う清らかな女子達もそう思っているのか。ドキドキしてきたと同時に、何だか少しがっかりしてしまった自分がいる。何故だろう……?
「そうか、喜ぶかー!」
「はい、男子生徒さんの生態を知る絶好の機会だって燥ぎ出します!」
ん? 今、この子なんて言った??
「え、何だって?」
「え、ですから……皆、男子生徒さんの不思議な生態に興味津々でして」
「お、おう」
「特にお向かいのロクザワ魔法工科高校の生徒さんたちは『同じ人間に見えなさすぎて逆に気になる』『ペットとして檻に入れて観察したい』『レベルが違いすぎるからこそ興味が沸く』『身体が丈夫そうだし、いい実験材料になりそう』という意見が沢山……」
何かおかしくね!? 俺が想像してた反応と違う! どういうことなの!!?
『妥当な反応です』
ねぇ、妥当ってどういうこと!? 君達には俺達がどんな風に見えてるの!?
「今度、皆さんに話してみますね!」
「アッハイ、お願いします」
ひょっとしてフリスさんも、俺を珍獣か何かみたいに思っているんだろうか。
流石に違うよね? 俺は信じてるよ、君が本物の天使だって! 俺は信じてるよ!?
【……警告、警告。コバヤシ・タクローのステータスに大幅な変化アリ】
「じゃあ、メイコさんを迎えに行きましょうか。きっとタクローが来るのを待ってますよー」
「アッハイ、行きましょうか」
「どうかしましたか?」
「いえ、何でも……」
フリスさんの笑顔は相変わらず素敵だったが、何故かその顔を見つめるだけで……俺の背中は冷や汗でびっしょりになった。
「ああ見えてfor you」-終-
_/KOBAYASHI\_\Frith/




