「一撃」
そりゃチャンスがあれば狙いますよね。男の子なら。男の子なら。
『可能であれば、この模擬体を破壊するつもりで攻撃しても構いません』
「おい、それは」
『貴方にはそれが可能な能力が最初から備わっています。例え私が今まで交戦した〈終末〉の能力を全て使用しても……』
アミダ様はそんなおっかない台詞を言ってスタスタと俺に近づいてくる。
『貴方は私に勝利できます』
そしてアミダ様は俺の目の前に瞬間移動。大きな胸をたゆんと揺らして俺を惑わせる。
「ふおっ!?」
胸に気を取られた俺に鋭い貫手を放つ。俺は頬をザックり切られながらも辛うじて回避。
「ちょっ! 今のは卑怯……って、ほわあっ!?」
続けて脚を大胆に上げた蹴り上げ……から続く変則的な踵落とし。最初の蹴りが顎を掠めたが、考える前に身体が後ろに飛んで踵落としは完璧に回避出来た。
「……ッ!」
俺は再びアミダ様との距離を詰め、彼女が光の羽で加速する前にガシッとその腕を掴んだ。
『!』
「はっ、ははっ! やった! 初めてお前を捕まえ……っだぁ!?」
アミダ様は直ぐに俺の手を取って一本背負い。思いっ切り地面に叩きつける!
「ぶふぉっ……!?」
背中を伝う痛みを堪えながら上を見上げると、アミダ様の足が俺の顔を踏み潰そうと迫ってきていた!
「だわああああっ!?」
俺は首を大きく逸らして踏みつけをギリギリで躱す。地面に大きな亀裂が走り、思わず冷や汗をかいた。
ああ、もし当たってたら顔が潰されてたな!!
『今の判断は評価できます。少しずつですが、動きが良くなっていますね』
「……!」
『?』
アミダ様は珍しく俺を褒めてくれたが、とあるものに夢中だった俺には殆ど聞こえなかった。
(……黒の、ハイレグだと……!!)
踏みつけを回避した俺の目に飛び込んできたのはアミダ様のハイレグパンツ。ふおおお! また攻めた下着付けてますねぇ! 下から見上げるパンツと太ももと下乳がとても眩しいです! ありがてぇ、ありがてぇ!!
いやまぁ、攻撃される度にチラッと見えてたけどね! こうしてじっくりと拝める機会は無かったもので!!
『……』
「あだぁっ!」
アミダ様は無言で俺の頭を蹴る。ジンジン痛む頭を押さえながら俺は立ち上がり、ぶふーと大きく息を吐いた。
「よし、元気出た。ありがとうよ! アミダ様!!」
『そうですか』
「しかしその格好はやっぱりアレじゃない? もう少し」
『では、訓練を再開します』
もう少しマシな衣装を着てよと言う前にアミダ様は額からレーザービームを撃ってきた。
「聞けよ!!」
俺はすぐに盾を展開。アミダ様の言う通り、この盾はレーザーを完全に防御できた。
「うおおっ、すげー! やべーな、この盾! 最強じゃ……」
盾の防御力に感動していた俺の背後から冷たい殺気を感じた。
「どぅわあっ!?」
アミダ様は爆発する勾玉を手で直接握ったままパンチを繰り出してくる。明らかに殺意を増した攻撃を俺は何とか躱したが、勾玉はアミダ様の手の中で爆発。
「うおおおおおっ!」
爆風は俺の身体を大きく吹き飛ばす。
「……ってぇ! おい、アミダ様! 今のはちょっと」
ブゥン!!
「だわぁぁぁっ!?」
アミダ様は片腕が吹っ飛び、服が大きくはだけた状態で鋭い蹴りを放ってきた!
「おい、待て! お前、身体が!」
『問題ありません。すぐに再生します』
「だけじゃなくて! 色々と見えてるぞ!?」
『問題ありません』
もげた腕と破けた服はすぐに再生し、アミダ様は何事も無かったかのように攻撃を繰り出してくる。痛みを感じないのか、コイツは!? いや、そんな気はしてたけど物凄い美少女の姿でそんなエグい攻撃仕掛けないでくれる!?
「だわっ! ちょっ! あばばっ!」
アミダ様は無表情で激しい連続攻撃を繰り出してくる。
「……ったく! このツンドラ女が! 少しは女らしい反応を見せろよ!!」
槍のように鋭い貫手、何でも切り裂きそうな手刀、ビルの太い柱を粉々にしそうな蹴り。息をつく暇もない彼女の攻撃に俺は防戦一方……
────ぷるるんっ。
……に見えて、実は攻撃の度に揺れるアミダ様の胸やスカートから覗くハイレグパンツを目で追っていた!
『回避に関しては見違えるほどに上達しました』
揺れる!
『反応速度も大幅に上昇しています』
見える!
『目覚ましい成長ぶりです』
また揺れるぅ!!
いやもー、エロいですね! 性格の悪さはともかく容姿とスタイルは90点をくれてやれるレベルよ! 見た目や中身も100点オーバーのフリスさんや沙都子先生には及ばないがな!!
『ですが、反撃の回数が大幅に減っています』
「うるせー! 反撃のチャンスを探るので精一杯なんだよぉ!!」
たわわな胸を ぷるるぅんっ! と揺らし、眩しい御御足を大胆に広げて繰り出した後ろ回し蹴りを躱して俺はグッと拳を握った。
(……ひたすらボコられ続けた甲斐があったな)
攻撃を受け続けた影響か、それとも俺がこの身体の動かし方に慣れてきたのか。最初は目で追うことも出来なかったアミダ様の攻撃に反応出来るようになっていた。何せ彼女の悩殺ボディに意識を向ける余裕まで生まれてしまった程だ。
『……』
「ふんっ!」
バシィッ!
俺はアミダ様の正拳突きを片手で受け止め、ふんすと鼻を鳴らす。
「……ひょっとして、手加減してくれてる?」
『私にそのような機能は搭載されていません』
「あ、そう……少しは優しさを見せてくれるようになったかと……ぶふぅっ!!」
……と、調子に乗った俺の鳩尾にアミダ様の膝蹴りが叩き込まれた。
『今は攻撃のチャンスでした。どうして動きを止めたのですか?』
あーもー! そうだね! 何で動きを止めちゃったんだろうね! 自分でもわからんよ!!
「……知るかっ!!」
俺は鳩尾の痛みを堪えながらガシッとアミダ様の足を掴み、ジャイアントスイングで投げ飛ばす!
「ふうっ!」
俺はすぐに背中と脚からブースターを展開、投げ飛ばしたアミダ様に向かって全速力で突撃した。
『……』
「どりゃああああああーっ!」
アミダ様が光の羽を生やして体勢を整える前に一気に距離を詰める。だがアミダ様はさっきみたいに瞬間移動して俺の視界から姿を消す。
「ッ!!」
俺はすぐに脚のブースターを閉じ、背中のブースターを真上に向けて全力噴射。俺の頭を狙ったアミダ様の蹴りが虚しく空を切る。
『!』
「ははっ! バカ正直に突っ込んできてくれて、ありがとよ!!」
初めて大きな隙を見せたアミダ様にニヤリと不敵に笑い……
「歯ぁ食いしばれぇぇ────!!」
俺は腕に力を込めて大きく前に突き出す!!
もにゅんっ。
そして、アミダ様のたわわな果実に思いっきり触った。
『……』
もにゅん、もにゅっ、もにもに。
「うん、やっぱり! すっごい柔らかぁい!!」
バチィーン!!
「ぐふわぁー!」
アミダ様の胸の感触を堪能していた俺の顔面に先制の鋭いビンタが炸裂!
「ふごぅっ!!」
続けて、爆発する勾玉!
「あばあああっ!」
更に、額からのレーザービーム!
「ぐふっ! ちょっ……これは死、どぶぅっ!?」
トドメは鋭い踵落とし! 俺の身体はドヒューンとDBみたいな音を立てながら垂直降下して地面に激突! 白い大地にデカいクレーターが出来上がった!!
「……」
『今のは、何ですか?』
「……うん、ちょっと。身体が勝手に動いたの」
地面で伸びる俺の隣にストンと着地し、アミダ様はゴミを見るような目で言う。
『今の一瞬は最大の攻撃チャンスでした。どうしてあのような行動を取ったのですか?』
「さぁ……目の前に、おっぱいがあったから」
『意味がわかりません』
「まぁ、それだけじゃねえけどな」
俺はクレーターから起き上がり、ちょっとした自己嫌悪に心を痛めながらボソボソと呟く。
「……タクローはどうだか知らないけど、俺には今のが限界だよ」
『……』
「俺にはまだアミダ様は殴れねえや。もう少しお前のことを嫌いになってからじゃないとな」
アミダ様を見ながら俺は正直に言った。結構、アンタの事を嫌いになったけど……殴るのは無理だ。何でかは自分でもわからない。多分、見た目の可愛さのせいだろうけど。
「あー、でもアミダ様に攻撃を入れないと訓練終わらないんだっけか。しゃーねーな、もうちょっと嫌いになれるくらい酷い攻撃してくれ。マジでぶっ殺したいレベルじゃないとアミダ様レベルの美少女は殴れねーわ」
『……条件達成。本日の戦闘訓練を終了します』
「はい?」
何故かアミダ様の目が赤色から青色に戻る。
「え、終了?」
『はい。貴方は条件を達成しました』
「で、でも俺はアンタを一発も殴れてないよ!? それに最後はまたボコボコにされたし、本当にいいのか!?」
『……問題ありません』
アミダ様は俺の傍まで近づいてジッと俺の顔を見つめる。思わず目を逸らしてしまったが、彼女は俺の顔を掴んでゴキリと強引に視線を戻した。
「うぶぁっ!? な、何だよ!?」
『やはり貴方もコバヤシ・タクローです』
「はい!?」
『彼も……この模擬体に直接ダメージを与える攻撃はしませんでした』
そう言って自分の胸に触れ、アミダ様は初めて優しく微笑んだ。
「……それはつまり?」
『それでは今日の戦闘訓練を終了。〈メモリミテート・ルーム〉への意識接続を解除し、通常睡眠に移行します』
「アミダ様?」
『では、よい夢を』
「アミダ様ァー!?」
アミダ様がそう言って背中を向けた瞬間、俺の視界は真っ白な光に包まれた……
「一撃」-終-
\KOBAYASHI/ \AMIDA/




