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「ONI、HAN-NYA、AMIDA」

\KOBAYASHI/を\KOBAYASHI/に鍛え直すために一肌脱いじゃうAIの鑑。

 ……向こうの俺は呑気にイビキでもかいてるんだろうか。明衣子や親父には幸せそうに昼寝してるように見えてるんだろうなぁ。


「ぜぇ……ぜぇ……!!」


 でもこっちの俺はごらんの有様だよ!!


 見てよ、この泥だらけ痣だらけの情けねえ姿を! 俺の身に何が起きたかって!? それはねっ!


「くそっ!」

『先程よりも反応が鈍っています。もっと集中してください』


 ドゴォッ!!


「アバァァーッ!!」


 脇腹にアミダ様の強烈な蹴りが叩き込まれ、俺は大きく吹っ飛ばされた!!


「ぐううううっ!」


 俺は地面をガリガリと削りながら踏みとどまり、痛む脇腹を擦ってヒーヒーと息を荒げる。


「……ま、マジでちょっと休憩しない!? そろそろ死んじゃうよ、俺!!」

『安心してください。今負ったダメージはすぐに回復します』

「身体は回復しても傷ついた心は回復しないんだよ!?」


 えーとね、アミダ様が目を赤くしてからと言うもの……俺はひたすら彼女にボコボコにされています。アミダ様曰くこの所業は体感時間が現実と異なるこの空間の特性を最大限に利用した最も効率的かつ有効な戦闘訓練だそうです。


 俺からしたら唯の拷問だけどね!!


『貴方の精神ダメージへの耐性及び回復速度は常人を遥かに上回っています。問題ありません』

「問題アリだよ、畜生!!」

『肉体ダメージの回復を確認。訓練を再開します』

「ちょっ、待っ!」


 アミダ様は背中に光の羽を生やして凄まじいスピードで突撃してくる。


「ああ、くそっ!」


 俺はアミダ様の突撃を回避し、脚からブースターを生やして離脱。


『……その選択は間違いです』


 アミダ様は再度加速し、俺の背後に一瞬で回り込む。


「うおおっ!?」

『先日の戦いを思い出してください。あの〈終末〉は貴方のスピードを大幅に上回っていました。故に』

「はぶぁっ!!」


 アミダ様は説明しながら俺の脳天に踵落としを食らわせる!


『離脱を選択した時点で次の被弾は確定します。離脱よりも防御からの反撃を選択してください』


 ドゴォオオオンッ!


 そのまま勢いよく落下して俺は上半身がすっぽりと地面に埋まる。


「もがもがもがぁーっ!」

『……』

「もももも……っ、がぁぁあーっ!!」


 ドギョンッ!


 俺は埋まった肩部分を展開して小さなブースターを作り出し、そのまま噴射して地面から脱出した。


「ばはー、はーっ! ぶはーっ!!」

『身体機能の扱いはかなり上達したようですね』

「う、うるせー! 今のは死ぬかと思ったぞ!?」

『貴方に死ぬことは許されません』


 次にアミダ様は腕を裂かせて中から光る勾玉を生み出す。


『なので現実で死ぬ前に、此処で死ぬ思いを沢山してください』


 アミダ様は俺目掛けて光る勾玉を投げつけた。


「ふざけんなぁーっ!!」


 俺は勾玉を回避してアミダ様に突撃……しようとするが、それを予期していたかのようにアミダ様の額がピカッと光る。



 ────パァオッ!



 アミダ様の額から俺が最初に戦った〈終末〉と同じレーザービームが放たれ、俺の身体をスッポリと包み込んだ!


「ぎゃあああーっ!!」


 全身を焼かれた俺はゴロゴロと地面を転がりまわる。ぐあああー! 目がー! 身体がぁぁー!!


「ぐおおおおお……っ!」

『今の攻撃は回避は不可能ですが防御は可能でした。瞬時に盾を形成すれば無効化できたでしょう』

「う、うるせぇな! 眩しかったんだよぉ!!」


 バシャンッ!


『遅いです』

「ぐぬぬぬぬ!!」


 無意識の内に俺は左腕を盾に変形させたが、アミダ様は冷たく一蹴。彼女の冷たい視線が俺のハートを更に傷つける。


『訓練前に説明しましたが、この空間では〈終末〉戦同様に貴方の能力が全て使用できます。貴方には身体の一部を変形させて用途に応じた武装を形成する機能が搭載され、その武装に対応する555種類の〈殲滅技〉が登録されています』

「ああ、はいはい! 要するに俺の意志と想像力がそのまま戦う力になるんだろ!? しっかり聞いたよ!!」

『ですが、貴方はそれを活かしきれていません』

「……」

『もっと柔軟な発想と判断力を持ってください』


 アミダ様は腕を組み、まるで落胆したような顔で言う。


「そんな事言われてもなぁー! 元の俺の身体は考えただけで」


 バシャッ!


「脚からブースターが生えたり!」


 バシャバシャッ!


「腕が超マッチョになったり!!」


 ジャキィーン!!


「腕が剣みたいになったりするようなインチキな身体してねーんだよ!!」


 俺は全身武器だらけの意味のわからん姿になりながらアミダ様に訴えかける!


『慣れてください』


 そんな俺にアミダ様はピシャリと一言! やっぱりコイツ鬼だ! 般若だ! 誰だよ、こんなヤツに 阿弥陀 なんて有り難い名前つけたのは!!


「慣れるかぁぁー!!」

『慣れてもらわないと困るのです。その身体を扱えるのは貴方だけなのですから』

「……っ!」

『貴方がコバヤシ・タクローに慣れるまで訓練は継続します』


 アミダ様は背中に光の羽を生やしてふわりと宙に浮く。


『私のデータベースにはコバヤシ・タクローが倒した〈終末〉と、貴方が倒した〈終末〉の戦闘パターンが全て記録されています』

「ああ、もう聞いたよ! ボコボコにされる前にも、されてる途中でも聞かされた!!」

『私は記録された〈終末〉の力を再現して戦うことが出来ます』

「知ってるよ! 勝てるか、そんなもん! お前こそチートじゃねーか!!」

『……貴方には()()()()()()()()()が宿っているのです』


 アミダ様はそう言って猛スピードで俺に接近してくる。


「くっ!」


 俺は加速の勢いを利用したアミダ様の蹴りを回避。


『……』


 だがアミダ様は顔色一つ変えずに空中で静止、直線的な蹴りはそのまま後ろ回し蹴りに変化した。


「うぉあっ!」


 俺は咄嗟に回し蹴りをガード。腕はミシッと音を立てて軋んで思わず表情が歪む。


「ぐっ!」

『判断が』

「ああっ! うるせぇなぁー!!」


 受け止めたアミダ様の足を掴んで俺は放り投げる。アミダ様は放り投げられながらも腕から勾玉を出して反撃してきた。


「ちぃぃぃぃっ!」


 俺は左腕を盾に変形させて勾玉をガードしようとする……


「うおおおおおおおっ!」


 と見せかけて、盾を展開したままブースターを吹かせてアミダ様に突進した。


『!』


 ここでアミダ様は初めて表情を変える。何百回めかの攻防にしてようやく予想外の行動を取った俺に少し驚いたのかもしれない。


「どりゃああああああーっ!」


 だが予想外とは言え、盾で勾玉を防ぎながら突進するだけの俺の動きはすぐに見切られる。アミダ様は一瞬だけ急停止した後に加速して横方向に大きく移動。


「ぬあっ!?」


 呑気に突進する俺を悠々と観察し、ガラ空きになった脇腹目掛けて鋭い右ストレートを放つ。


「どぅああああっ!」


 脇腹直撃確定の右ストレートだったが、俺はその脇腹からニョキッとブースターを生やす。そしてそのまま噴射させて思いっきり真横に飛ぶ。


『!』

「ああああああああああっ!」


 ズザザザザザザッ!


 回避したのはいいものの、そこからどうするかを考えていなかった俺は地面をガリガリと削りながら転げ回る。


『……』

「ははっ、はっ……! 何だ今のは!? 本当にこの身体は滅茶苦茶だな!?」

『今の判断は評価できます』

「はっはっ、どうも……!!」


 俺は素早く起き上がってパンパンと埃を落とす。


(……俺の想像力が戦う力に……)


 すーっと息を吸って吐き、自分の身体に意識を向けてみる。何度見ても慣れないメカニカルな身体。時折身体を走る青い光の筋。面影一つ残してない化け物みたいな顔……慣れろっていう方が無理な話だ。


(……)


 でもアミダ様にひたすらボコボコにされ、それでも何とか食い下がろうと足掻いている内にこれだけはわかってきた。というより信じられるようになってきた。


「そういや、アミダ様。この訓練が終わる条件って何だっけ? ボコられすぎて忘れちゃったんだけど……」

『私に一撃でも攻撃を与えることです』

「……そっか。わかった」


 この慣れない身体も間違いなく俺の身体で、ちゃんと俺の思う通りに動いてくれること。


「お前を一発ぶっ叩いたら それで俺の勝ちってことだな?」


 そして、何だかんだ言いながら俺は負けず嫌いだってことだ。



「ONI、HAN-NYA、AMIDA」-終-


\KOBAYASHI<\AMIDA/三

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