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「日本支部名物」

その気持ちは、大人にはわからんのですよ

「おおー、ここが噂の食堂かー」


 医務室を出て俺たちは食堂に向かった。食堂はこの日本支部で働く人達で賑わっていて、美味しそうな匂いが俺の食欲を増幅させていく。


「私のオススメはカレーライスですね」

「そんなに美味しいんだ?」

「ふふふ、美味しいですよ。私はここのシーフードカレーが大好きです」

「じゃあ俺も……あー、やっぱりビーフカレーがいいかな。よし、すみませーん!」


 食堂のカウンターで注文を待っている赤毛のお姉さんに俺は声をかけた。


「すんません、あのーっ」

「はーい、何か用……ってコバヤシ君じゃん! どうしたの、今日は日曜日だよ!?」

「ええ、色々ありまして。何か気が付いたら此処に連れてこられて……」

「はー……大変だねぇ。で、今日は何が食べたいのー?」

「じゃあ、ビーフカレー」

「飲み物はー?」

「えーと……このホワイトウォーターで」

「あい、コバヤシさんからビーフカレーのオーダー入りましたぁー! アンタたち、気合い入れな!!」

「「「オアアアアアアア────ッ!」」」


 うおおっ!? 何だ、何か厨房から凄え声が聞こえてきたぞ!?


『まかせろ、姐さん! 最強のビーフカレー用意してやんよ!!』

「あ、あとシーフードカレーも……飲み物は」

「アイスティーでお願いします」

「あいあい、アンタたち! フリスちゃんからもシーフードカレーのオーダーが入ったよ!!」

「「「オァアアアアアアアア────ッ!!」」」

「よっしゃぁ、任せるるぉ!!」

「俺たちの愛情が籠もった最強のシーフードカレーをご馳走してやんよぉ!!」

「ホアアアアアアアアアーッ!!」


 なんか気合の入り具合がさっきと違う。そりゃそうですよね、フリスさんだもんね。


『彼女は日本支部の人気者です。非公式ですが、ファンクラブも存在しています』


 流石はフリスさん。後で俺もファンクラブに入れてもらおうかな!


「「「オァアアアアアアア────ッ!!」」」


 \ジュワアアアアアアア/


「……すげぇ気合が伝わってくる」

「うるさくてごめんねー、でも料理の味は保証するからさ! はい、このベル持ってテーブルで待ってな」


 \ズダダダダダダッ、ッカーン、ドジュアアアアア/


「あれ、そういや値段書いてないんすけど……お題は?」

「ああ、ここの職員はタダよ。勿論、コバヤシ君もフリスちゃんもタダ」

「マジで!?」


 \デュルワアアアアアアアン、ジュシャァアッ!! グツグツグツグツ/


 ところで何か凄い音がするんですけど!?


 一体厨房で何が起きてるんだ……本当にカレー作ってるのか?


 ていうか飯がタダで食えるってマジか。フリスさんもタダなのを知っててあの笑顔を見せてくれたのか……何だ、ただの天使か。


「じゃあタクロー、あの席に座りましょうか」

「あ、そうね……」

「出来上がったらベルから音が鳴るからねー。ちょっと待っててねー」


 赤毛のお姉さんはニコニコしながら俺に手を振った。サトコさんとはまた違った元気なお姉さんって感じで中々の美人さんだな。額に小さな角が二本生えてるけどとっても素敵なお姉さんですね。


『〈探求者の眼〉を発動します。接触対象のサーチング開始……』


 あっ、ちょっと待って!? 別に俺はこのお姉さんが気になったわけじゃ……


「タクロー、あんまり女の人にサーチングは使っちゃ駄目ですよ?」


 >バレてるぅ!<


『……中止します』


 あっぶねぇ! 危うくこのお姉さんのスリーサイズを知っちゃう所だった!


「な、何のことかな」

「ふふふふ」


 いや、もうエプロン越しでも大層ご立派なボインをお持ちなのはわかりますけどね! でもちょっとドキッとしただけで相手の個人情報調べようとするのはやめようよ、アミダ様!!


「……ごめんなさい」


 でも正直に言うと……このお姉さんの情報に興味ありました。


『……』

「怒ってませんよ、でもあまりそういう情報を知りすぎると……怒られますよ?」


 ごめんなさい! 許してください! だから笑いながら睨まないで!?


「ゴホン……ああー、そういえば1時から凄い人と会わなきゃいけないらしいんだ」

「ああっ、明星天皇陛下ですね!」


 フリスさんは手をパンと叩いて目を輝かせる。


「ふふふっ、やっぱりタクローは凄いです。あの天皇陛下と気軽にお会いできるなんて!」

「き、気軽なのかな……?」

「天皇陛下は貴方をとても信頼していらっしゃるんです。この国の指導者に信頼されるなんて凄いことですよっ!」


 お、おおう……フリスさんの目がキラッキラしてる。そこまでこの世界の天皇陛下は偉い人なのか。俺の世界の天皇様も偉いっちゃ偉いけど、指導者って程の権力はなかった。国の指導者は総理大臣で、天皇は国の象徴みたいな存在だ。


『貴方の記憶にある情報とこの世界の歴史的背景は大幅に異なっています』


 そりゃそうだよ、別世界だもの。


「……で、でも俺はその人の事を……」

「大丈夫です。天皇陛下は寛大なお方ですから、ちゃんと話せばわかってくれます」

「……だといいなぁ」


 どう話せばいいんだよ。


 俺はコバヤシ・タクローの身体を借りている別人で、小林拓郎という名前の普通の高校生です……とでも言えばいいのか? 信じてもらえるかよ。俺だって未だに受け入れられてないんだぞ。


『正直に打ち明けるべきです。明星天皇に虚偽の報告をする事は国家反逆罪にあたります』


 うぐぐっ! 正直に言わないと国家反逆罪だと……!?


「……タクロー?」

「……い、いや、おなか空いたなーって」

「ふふっ、そうですね」


 ……フリスさんはどうなんだろう。彼女は、俺の話を信じてくれているんだろうか?


『彼女は貴方を疑いません』


 何でそうハッキリと断言出来るんだよ。お前は彼女の心まで読めるっていうのか?


『……』


 俺の問いかけにアミダ様は答えない。本当に肝心な所で役に立たねえAIですこと!


「ま、まぁ……深く考えても答えなんて出ないか。とりあえず今は昼飯を」


 >デッデッデデデデ! \ッカーン/ デデデデ!<


「!?」


 >デッデッデデデデ! \ッカーン/ デデデデ!<


「え、何の音!?」

「ベルの音ですね。料理が準備できたみたいです」


 >PEーPEPEPEーPEーPEーPEーPEPEPEPEPEッPEー<



 _人人 人人_

 > うるせぇ <

  ̄Y^Y^Y^Y ̄



 何だこの呼び出し音は!? やべえ、暑苦しい! ベルが二つあるから暑苦しさ二倍で余計にヤバい!!


「すんません、すんません! 取りに来ましたからこれ止めて!!」

「はーい、カレーお待ちどー。コバヤシ君のと、フリスちゃんのやつねー」


 >ドドドド!<


「ちょっと何かすげー耳に残るんですけど、何すかコレ!?」

「あー、これねー。何かよくわからないけど元気が出るでしょ!」


 出ねぇよ!!


 >パラパーパラパーパラパパパー \ブツン/


「はい、オーダーありがとねー。ごゆっくりどうぞー!」

「あっ、ドーモ……」

「フリスちゃんと仲良くあーんしあってね!」


 赤毛のお姉さんはにんまりしながら言った。


 やめてください、ちょっとやめてください。その何か期待してるような眼差しをやめなさい、ご飯の味がわからなくなるから!


「……はい、フリスさん。シーフードカレー」

「ありがとうございます。ではいただきましょうか、タクロー」

「うん、じゃあいただきまー……」



 じ────……



 オイオイオイ、食堂中から視線を感じるぞ。ちょっと皆さん、何を期待してるんですか? 健全な高校生たる小林くんに何を期待してるんですか??


「……す(もぐもぐ」

「いただきます、ふふふ」

「あ、うめぇ。このカレーめっちゃうめぇ」

「でしょう? この日本支部のカレーは人気なんですよー。シーフードカレーも美味しいですよ、どうですか?」

「ん、じゃあ味見を」

「はい、あーん」

「あ、どうも(パクッ)」


 ────アァァァァァアアン!?


【……報告、コバヤシ・タクローのステータスに大幅な変化アリ】



「日本支部名物」-終-


\KOBAYASHI/curry\Frith/

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