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「グレイトフルハウス」

血を分けたファミリーほど空気を読まない存在はいませんよね。

「いただきまーす」

「いただきまーす」

「いただきます」

「……いただきばーす」


 着替えを済ませた俺は一階に降りて家族やフリスさんと朝飯を囲う。


「ふふふ、どうだね 今日の卵焼きは。渾身の出来だと思うんだよ」

「はい、美味しいです! お父様の卵焼きは本当に凄いですね」

「はっはっは、愛情籠めてるからね!!」

「え、普通じゃない? いつもの卵焼きだよ」

「はっはっは、泣きそうだよ。メイコちゃん厳しい」

「えー……」

「……醤油取って貰っていい?」

「はい、タクロー。どうぞ」


 馴染んでるなぁ、フリスさん。


 本当に家族の一員みたいだ。明衣子もフリスさんには気を許してるし、親父はもう完全にデレデレだし。しかし、よくよく見るとシュールな光景だなあ……。


 俺=人間サイズの汎用人型決戦兵器。


 明衣子=猫耳少女。カワイイヤッター!


 親父=手抜きデザインのラクガキロボ。雑い。見てるとなんか腹が立つ。


 フリスさん=ツインテ美少女。幼馴染ヤッター!!


 どう考えても相容れない世界観のキャラが和気藹々と食卓を囲んでいる。


 違和感しかねぇ。なのに俺以外の全員が、()()()()()だと言わんばかりに飯を食っている。やっぱり何処かおかしいよ、この世界……。


『何もおかしいところはありません』


 アッハイ。そうですね、アミダ様からすればそうでしょうね。異世界出身の小林君にはおかしいところしか見つかりませんが!!


「うーん……」

「どしたの兄貴ー」

「いや、別に」

「ふーん……ところで兄貴」

「何だ?」

「今朝はやけにうるさかったけど、部屋で何かあったの?」



 >君の水着姿を見たからだよ!<



 って正直に言えるかァァァァァー!


「……えーと、その」

「確かに今朝のタクローは少し様子が変でしたね……」


 ああ、フリスさんまで食いついた! やめて、それ以上何も聞かないで! 俺は貴女の白ビキニ姿まで見ちゃってるんだよ!!


『実は私も気になっています。どうしてあのような大声を出したのですか?』


 お前、ホントお前……マジで言ってる? ねぇ、マジで言ってるの? 俺にも我慢の限界ってものはあるんだよ?


「ん、この前みたいに芝居の稽古してたんじゃね? 主役らしいしな」


 ナイスアシストだ、親父ィー!!


 流石は俺の親父……正直に話した甲斐があったぜ。これでもう俺が部屋でどれだけ大声を出しても明衣子もフリスさんも怪しむまい。


「あっ! なるほど……そういうことだったんですね」

「ふーん、結構真剣に取り組んでるのね。意外ー」

「ま、まぁね! 俺は主役だからな!」

「ふふっ、どんな劇になるのか楽しみです! もし良ければ今度、練習を見学してもいいですか?」

「え、えーと、流石にそれは……!」

『嘘は良くないと思います』


 うるせぇ、ボケェェ────ッ!!


 誰のせいだと思ってんだ、テメー! もうお前はこれ以上喋んなぁ! 俺の許可ナシで脳内に直接語りかける事を禁ずる!


【……】

「は、恥ずかしいからやめてくれると嬉しいな?」

「わー、兄貴にまだ『恥ずかしい』って感じる心が残ってたんだ。意外ー」

「どういう意味だよ!?」

「こらこら、お兄ちゃんに何てことを言うんだ。この見た目でもコイツは人間だよ?」

「親父こそ息子に何てこと言うの!?」


 この世界の二人は本当に容赦ないね? 普通なら長男との会話でそんな台詞出てこないよ。タクロー君の日常が本当に心配になってきたんだけど?


「それにしてもあの散らかった部屋でよく稽古出来るよねー」

「ま、まぁ……うん。あんまり動かなかったらそこまで」

「ふふふ、メイコさん。あの散らかり方には実は意味があるんですよ」

「……えっ」

「そうなの?」

「はい。散らかった物の下にエッチな本を隠してるんです」


 フリスさぁぁぁぁぁぁ─────ん!!



【……警告、警告。コバヤシ・タクローのステータスに大幅な変化アリ】



「へー、そうなんだー……」

「まぁ、うん、タクローもね。思春期だもんね……」


 何てこと言うのぉ!? 貴女、何てこと言うのよぉ! ていうか何で俺の部屋の秘密を知ってんだよぉ!!?


「……」

「あ……ご、ごめんなさい!」

「い、いや……いいんだよフリスさん。全然気にしてないから」

「ねー、フリスちゃん。どんなエロ本があったの?」

「え、ええとですねー……」


 やめろぉぉおおお────!!


 お前、マジでふざけんなよ!? いくら妹だからって、これ以上は許されねぇからなぁ!? そのピコピコ動く耳ふにふにしてヒィヒィ泣かせてやんぞコラァアアー!!


「い、言えません……」

「そ、そんなに凄いのがあったんだ」

「違うから! そんなにハードなもん買ってねぇから! そもそもあの本は俺が買ったんじゃねーから!」

「……そういうことに、なるの?」


 そうそう! あの本はタクロー君が揃えたものであって俺のものではない! つまり俺はエロい本なんて買ってない!!


『その言い訳は苦しいと思います』


 許可ナシで喋んなってお願いしたでしょぉぉー!? どうしてアミダ様まで俺を追い込むの!? 俺の味方は居ないんですか!?


「気にするな、タクロー。年頃の男の子はそのくらい色んなことに興味津々じゃなきゃいけない……むしろお父さんは安心したよ」


 もう余計なこと言うな親父! 頼むからこれ以上、何も言わないでくれ!! 息子のライフはもう0よ!!!


「俺は本気で心配したんだ。お母さんから産まれた時はあんなに可愛かったのに、まさか こ ん な 姿 に成長するなんて思いもしなかったからな……」



 _人人 人人_

 > こんな姿 <

  ̄Y^Y^Y^Y ̄



 オマェエエエーッ! マジでぶち殺されてぇのかクソ親父ィイイイイー!!



 精神状態:『不良』→『要注意』……要注意。特定対象への攻撃性が増加。危害を加える可能性大。安定剤の即時使用を推奨。



「だが、俺の心配とは裏腹に……お前は優しく立派な男の子として育った。嬉しいよ、お母さんも天国で喜んでいることだろう。ううっ……」

「え……」

「え、お父さん泣いてるの!? 何でよ!!」

「ご、ごめん。何かさ、嬉しくて……本当にタクローが立派に男として成長してくれたのがさ……」

「お父様……」

「でもお父さん、今の兄貴は……」

「ううん、俺にはわかるよ。こいつは俺の息子だよ、お父さんにはわかるんだ……」


 え、なにこの展開。俺はどんな反応をすればいいの?


 何か急に親父が泣き出した。とりあえず俺は朝飯をかきこみ、明衣子も何とも言えない表情でお味噌汁をふーふーしながら啜ってる。フリスさんは何故か親父の言葉に感動して目に涙を浮かべている……。


 ま、まぁいいか……とりあえず親父は俺たち(・・)の事を深く想ってくれていたということで。


「ぐすっ、お前の見た目がアレだから、好みのタイプもメカメカしくなるかと思ったがそんなこともなくて安心したぜ……」

「いや、まぁ……うん」


 そこは俺も思ってたわ。


 凄い見た目してるけど 部屋に隠された資料 を見る限りタクロー君の好みは俺と全く同じであるらしい。嬉しいような、悲しいような複雑な気分だけどね。


【……】


 何も言うな、アミダ様。言いたいことはわかってる。でもお願いだから黙ってて?


「今思ったら、お父さんもよくお母さんと結婚したよね。お父さんの見た目、めっちゃロボロボしいのにお母さんは普通の女の人だし……」

「うん、一目惚れだったの。もう一目見てメロメロ、出会った瞬間に世界が変わったよ」

「子供の前で何いってんだ親父」

「……ぐすん、そしてお前好みのエロ本はケモミミ美少女もの。それも()()()()()()()()()()()()()()が多かったな。でもちゃっかりと()()()()()も揃えててお父さん凄く安心したよ……」


 クソがァァァァ─────ッ!!!



【……警告、警告。コバヤシ・タクローのステータスに変化アリ】


 精神状態:『要注意』→『危険』……危険値。特定対象への明確な殺意が発現。安定剤(エリクシル)の即時使用を要求。

 筋力:『B-』→『A』


【……警告】


「オマェエエエエエ────ッ!」

「えっ、あっ! ごめん、つい……!!」

「……うわぁ」

「……」


『ごめん、つい……』じゃねぇよボケがぁああ────ッ!!


 妹と幼馴染の前で息子の趣向をぶち撒ける奴があるかぁああー!


 もう許さん、絶対に許さん! 例え親父であろうと……この小林、容赦せん!!



「グレイトフルハウス」-終-


AMIDA>KOBAYASHI< \OYAJINGER/\MEIKOCHAN/\Frith/

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