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「僕は友達が汚い」

工業高校の昼休みは結構サツバツとしていましたね。何がとはいいませんがね。

 天国のお母さん、いつも見守っていてくれてありがとうございます。


 僕です、息子の拓郎です。


 僕が幼い頃に、病気で亡くなってしまったお母さん。

 お母さんとの思い出は、あまり思い出せないけれど……。

 それでもお母さんの優しい笑顔と、温かいご飯の味は今も覚えています。


 お母さん、天国にいるお母さん……親不孝者の息子でごめんなさい……。


 僕、拓郎は────……


「血祭りじゃぁああああああああああああ────!!」

「オァアアアアアア────!!!」

「ヴェァアアアアア────!!!」

「ブッ殺じゃぁああああああああああああ────!!!」

「コ、ロ、セ!」

「コ、ロ、セ!!」


 _ 人 人 人 _

 > KO RO SE <

  ̄Y^ Y^Y^ Y ̄


 ……親父より先に死にそうです。


「キェェェアアアアアアアー!!」

「コォバヤシャァアアアアアアアアア────!!」

「ブッ殺ォォォァアアアアアア────!!!」


 俺の体は今、暴徒と化したクラスメイトに縛り上げられ、何か棘とか釘とか何かの頭骨とかで彩られた禍々しい磔台に固定されています。


 え、こうなった理由?


「ねぇ、待って!? みんな、落ち着いて!? どうして僕にこんなことするの!? 同じクラスの仲間だるるぉ!?」

「仲ァ間だぁああああー!?」

「ふざけんなぁ、裏切り者がぁああああー!!」

「一人だけ池澤クリスタル女子学園の麗しき乙女と仲良しになりやがってぇえー!!」

「仲良しどころかぁ、一緒にプールだとぉ!?」

「水着姿だとぅぉおおおおお!?」

「キェェェェェアアアアアアアアア─────!!」


 ……だそうです。ね、わかりやすいでしょう?


「と、とりあえず話し合おう!? ね、ね!? 話せばわかっ……て何してんだ鈴木ィイイイイイイイ!?」

「何って、君の足元に火を点けるんだよ」

「火を点けてどうするんですかぁ!?」

「火炙りだよ、当然だろ?」


【……警告、警告、警告。コバヤシ・タクローの足先に着火を確認。状態異常発生、状態異常発生……】


 はい、ええとですね。男クセェどころか獣クセェ我がクラスにおいて女子と仲良くなるというのはですね、背徳行為にも等しいんですよね。


 顔も体格も性格も違う僕達が今まで和気藹々とした雰囲気になれていたのも全ては『彼女が居ない』という共通点にシンパシーを感じていたからなんですね。隣を見て『こいつも俺と同じ彼女がいない駄目な奴なんだ!』という事に安心していたからこそ仲良く出来ていた訳なんですね。そんな奴らしかいない中で『俺、可愛い女の子とうふふな関係だぜ!』とか言っちゃうのはね……


 クラス全員に『こいつはもう殺していい』っていうレッテルを貼られちゃう訳なんですよぉ!!


「あちっ、あちちちちっ! お前ら考え直せぇ!! こんなの絶対おかしいってばぁあ!!!」


【……警告、警告、警告】


「黙れ、裏切り者ォ!」

「誰が裏切り者の声に耳を貸すかぁ! 聖なるFIREで清められろ、ヴォケがぁ!!」

「俺が死んだら、誰が日本を守るんだよ!?」

「知ぃるかぁ、クソァアアアアアアー!!」

「ニポンの平和よりも、まずは薄汚ねぇ裏切り者の処刑が先に決まってんだろがコルルァアアア!!」

「おらぁ、まだ火が弱ぇぞ鈴木ぃ! もっと派手に燃やしたれやぁ!!」

「サー、イエッサァアアアー!!」


 やべぇ、こいつらやべぇ! まじで俺を殺す気だ! 畜生、油断してた! こいつらのドクズ加減を見くびってたぁー!!


「田中ァァァァ! 助けてくれェェェェー!!」


 それでも俺は田中に助けを求めた! 他の奴らはともかく田中は俺の親友だ! きっと俺を助けて……


「うるせぇえええ! 気安く名前を呼ぶな! 黙って燃えカスになれぁああ!!」


 ド畜生が! お前、いつしか俺の前で言った親友って言葉はなんだったんだよぉ!!


「安藤ォオオオオオー!!」

「……」

「無視すんなや! 聞こえてんだろ!? 助けろよぉおおおおおー!!」

「鈴木くーん、もっと火を大きくして上げたほうがいいよ。もっとボァアアーッと派手にねー!」

「サー、イエッサァアアアー!!」


 ド畜生が! そうだよ、お前もそういう奴だったよ!!


「あぢゃあああー! やべぇ、まじで燃えてるって! 燃えてるってばぁああー!!」


【……警告、警告、警告。火がコバヤシ・タクローの下腹部に到達。損傷拡大、損傷拡大】


「ぶへへへへぇええええー! いい燃え上がりっぷりじゃねぇかぁぁぁぁー!!」

「あびゃぁああああ!!」

「裏切り者には死をぉおー!!」

「あばよ、コバヤシィイイイー! 愛してたぜぇえええー!!」


 俺はこんなクズ共の為に戦ったのか……


 何かもう悲しくてしょうがねぇわ。こんな最期ってアリかよ……ひでぇ、ひでぇよ。


 ごめんな、明衣子。やっぱり俺……死ぬみたいだわ。天国でお母さんと見守っているからね……幸せになってね。


 ごめん、親父。先に死ぬわ……明衣子をよろしく。


 ごめん、フリスさん……俺……君に言いたいことが沢山……ん?


「はっ……!」


 待てよ、そうだ……フリスさんだ。俺には、フリスさんが居た……!



【……コバヤシ・タクローのステータスに大幅な変化アリ。隠された特殊技能が一時的に発現】


 精神状態:『不良』→『@@』。精神が不良から未知の精神状態に変化。判定不能。測定不能。

 特殊技能:『口巧者』『限定読心術』『カリスマ』



「お前らぁ……この俺にぃ、こんな事していいのかぁ……!?」

「あぁんん!?」

「何だぁ、その目はァ!?」

「鈴木ぃ! もう頭に火を点けてやれぇぇ!!」

「いいのかぁ……俺はぁ、あの池澤クリスタル女子学園の生徒と仲良しなんだぞぉ……!!」

「だから何だぁコラァアアー!」

「自慢かぁ!? コバヤシ、自慢かぁぁ!!?」

「ヒャア、もうガマンできねぇ! コロス!!」

「つまりはなぁ……お前らにも、紹介して貰えるんだよぉぉ……!!」


 俺は半分火だるま状態になりながら、鬼気迫る表情で奴らを睨みながら吠えた。


「クリスタル女子学園に通う麗しの女子生徒達を、お前たちになぁー! それがどういう意味かわかるかぁああ─────!!」



 バシャァァァッ!



 その言葉を言った瞬間、鈴木がいの一番にバケツの水をぶっかけてくれた。



 「「「やっぱりコバヤシはナンバーワンだぁああああ────!!」」」



 そしてクラスのみんなが泣きながら一斉に抱きついてきた。


 びしょ濡れで磔にされたままの小林くんに……



【……報告、消火を確認。損傷判定……】


 損傷判定:中。肉体機能に一時的な障害が発生。大火傷。


【……至急手当を】



「やっぱりコバヤシくんは最高だぜぇえー!」

「俺、コバヤシくんになら何されても許すわ!!」

「ははは、暑苦しいぞ小童共。とりあえず縄を解け」

「横田ァ! コバヤシ様の縄を解けぇ!!」

「アイサァアー!」

「ははは、横田よ。褒めてつかわす……あとお前ら邪魔だから離れろ」

「お前らぁ! コバヤシ様が離れろと仰ったぞぉおおー!」

「うおおおおおー!」

「下がれェア! コバヤシ様のお言葉じゃぞぉおおおおー!?」

「ははぁああーっ!!」


 はっはっ、何だこれ?


 こんなにも見ていて悲しくなるものを今まで目にした事があっただろうか? 泣きそうだよ、もう俺……帰りたいよ。後、フリスさんごめんなさい。



 精神力:『@@』→『不良』。未知の精神状態から不良に変化。



「ふー……いや、確かに俺も調子にノッてたよ。ごめんね、クラスの大切な仲間たちの前であんな無神経なこと言っちゃって。あー、でも熱かったなぁー……ん? いやいや、怒ってないよぉ?? ぜーんぜん怒ってないけど、熱かったなぁーって」

「すみません、ごめんなさい!」

「全部、鈴木が悪いんです!!」

「はい、僕が悪いです! 必要であれば今から火だるまになります!! ライターは既にこの手の中に……」


 ひょっとして鈴木くん、一番ヤバい奴なんじゃない?


 なんでライター持参してんの? しかも躊躇なく俺の足に火を点けたよね、コイツ。やべーわ、まじやべーわ この宇宙人。


「それと勘違いしているようだが、フリスさんは俺のパートナーであってお前らの考えている 爛れきった情欲の捌け口 のような都合のいい存在ではない。いいね? 断じてお前らの想像している 性欲馬鹿が真っ先に思い浮かべるような淫らな関係 にもなっていない……いいね?」

「ははぁあー!」

「申し訳ございません、申し訳ございませんんー!」

「お許しをぉおー!!」


 昼休みも残り僅かとなった頃、クラスの皆が俺の前に跪いて許しを請う。


 そして皆は待っていた。俺の口から、とある言質が下される事を……祈るように待っていた。


「おら、顔を上げよ。欲望に腐りきったクソ羊共よ……」

「……」

「……」

「……」

「 俺 に 任 せ ろ 」


 「「「コバヤシ様ァァァァァァァァァ────!!」」」


 腐り穢れたクソ羊共は感動の涙を流しながら俺を讃えた。


 もういいや。あの状態から生還できただけ良しとしよう。うん、生き残るのが何よりも大事だからね。できればこの場でコイツら全員殺しておきたいけど。


「あとこれだけは言っておく、フリスさんと俺の妹に手を出したら殺す」

「えっ……」


 え? じゃねーよ、田中。お前に妹はやらんと言ったろうが。


「『えっ?』と申したか? このクソ田中羊、生きたままジンギスカンにして野良犬に食わせるぞ??」

「こるぁ、田中ァ!! お前ぇ、火を点けるぞぉ!? 出番だ、鈴木ィイイイー!!!」

「はっ、いつでも燃やせます!!」

「め、滅相もございません! コバヤシ様に誓って、妹君とフリス様には手を出しません!!」


 よし、これでフリスさんと明衣子の安全は保証された。


 ……問題はどうやってフリスさんにお友達を紹介してもらうかという事だが。



 精神状態:『不良』→『注意』……注意。



「僕は友達が汚い」-終-


\KOBAYASHI様/

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