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「そしてコバヤシへ」

そして彼はもう後戻り出来なくなりました。

「歯ぁ食い縛れぇぇぇ! これはぁ……スワノモリ町の皆さんの分だぁぁぁぁああ────!!!」


 そう叫びながら、俺は〈終末〉の顔面に全力のパンチをぶち込んだ!


 パァンと何かが弾けるような音がしたと思えば、〈終末〉の頭は跡形もなく消し飛んで……光がまるで血飛沫のように終末の身体から溢れ出た。


「うおっ、眩しっ……何の光!?」


 そして俺の目の前は〈終末〉から溢れる青い光に包まれた……


【……────ぃよ】



 !? 何だ、声が……



【z───ごぃよ……】



 誰だ、誰の声だ!? サトコさんの通信じゃない……何だ、何て言ってるんだ!?



【……す────ごいよ】



 ……え?



【……すごいよ、やっぱり君は……】



 はっきりと聞こえた、誰かの声。光の中から()()()の嬉しそうな声がした。



 その声と一緒に、俺の頭の中に何処かの景色が浮かんだ。



 俺の知っている景色じゃない……何処だ、ここは?


  ()()()()()()()だ……!? 誰だ、()()()は……!!?


 頭の中に〈白い子供〉の姿が浮かぶ。


 ()()()()()()()()()を服の代わりに着込んだ、白い肌の子供がたった一人で〈何もない世界〉を歩いていく映像が……



【……君は、この世界の……】



 光の中で誰かが、嬉しそうにそう言った。



 パキィィィィ……ン



 何かが割れるような音と共に青い光は消え、俺は頭を吹き飛ばされた〈終末〉の死体の上で棒立ちしていた。


「……今のは……?」


 俺は何を見たんだろう。幻か? 何だろう……何故か、スッキリしないなぁ。何でだろうな……うーん。



【……報告。〈終末〉の反応が消失。殲滅完了。本日の戦闘内容判定開始……】


 戦闘区域:スワノモリ町


 建造物への被害:『D』……損害大。都市機能大幅低下。日常生活続行はほぼ不可能。

 民間人への被害:『D』……甚大。総人口の20%が死亡。10%が再起不能。

 戦闘時間:600秒。


 判定:『D-』


【……報告】



 本日の戦闘内容……判定『D-』? 日常生活続行はほぼ不可能、総人口の20%が死亡って……


「……そんなの見せられてもさぁ」

『コバヤシ君……コバヤシ君!?』

「うおっ、ビックリしたぁ!」

『私の声が聞こえる!?』

「はい、めっちゃ頭に響きます……」

『良かった……勝ったのね……〈終末〉に』

「えぇ……まぁ、何とか」


 やっぱり、〈終末〉の攻撃で大勢の人が死んでしまっていた。


 数字とはいえ人が死んだという事実を見せつけられると心が折れそうになる。もっと早く俺に戦う覚悟が出来ていれば……ここまで酷いことにはならなかったかもしれない。


『やりました、やってくれました……! コバヤシが、私たちのコバヤシがッ! 今日も〈終末〉をぶっ倒しましたぁあああー!!』


 うぉお、何だ!? リポーターさんが急に叫びだした!


『ありがとぉぉー! コバヤシ! ありがとぉぉー! やっぱり貴方は最高よぉー!!』


 空で飛び回るリポーターさんが巨人を倒した俺を褒めちぎってる……うわぁ、恥ずかしい!


『うぉおおおおおおおおおおー!!!』


 ヒエッ! 今度は何だ!? 誰からだ!!?


『流石、コバヤシさんだぁああー!!!』

『俺は信じてたよ、コバヤシ! お前なら絶対に負けないってな!!』


 これは……皆の声か? うおお、何か知らんが皆の声が頭の中に……


『キャー! コバヤシサーン!!』


 あ、このふざけた声は田中だな。わかりやすいなー、こいつの声は。気持ち悪いからだろうか。


『コ、バ、ヤ、シ!』


 うお、これは俺のクラスの奴らの声かな。


 さり気なく安藤も混じってるな……ははは、あやつめ。そうだな、こいつらはちゃんと守れたな……そして親父や明衣子達も。


 そう考えると少しは気が楽に……


『コ、バ、ヤ、シ!』


 ええと、これは隣のクラス……かな? うん、ちょっと聞き覚えが


『コ、バ、ヤ、シ!』


 え、ええと……


『コ、バ、ヤ、シ!!』


 ちょっ、何か凄い。待って、待って待って……そんなに沢山の人に小林コールされたら……



 _ 人 人 人 人 人 人_

 >KOBAYASHI<

  ̄ Y^ Y^ Y^ Y^ Y  ̄



 耳がァァァァァー!!


 ぐおおおお、何だ()()()は! うるせぇとかいうレベルじゃねーぞ!


 何だ……もしかして街中の……いや、>日本中の声<が聞こえてきてるのか……!? うおおおおおお! 何かスゲェ、スゲェけど耳がぁーっ!!



【……警告。これ以上の声援受信は危険と判断。高感度音声フィルターを起動、対象を頭部通信機能に介入する者に限定】



 え、そんなのできるの!?


【……設定変更……】


 でも出来るなら最初からしてくれない!? 何で日本全国の皆さんの声拾ってんだよ!!


【……】


 いや、その確かにグッと来るものがあったけど?


 そりゃ、皆さんにここまで讃えられたら嬉しいよ。勇気出して戦った甲斐があったと思うよ。でも流石に日本全国の声を一度に叩きつけられたら耳がパーンて



 _ 人 人 人 人 人 人_

 >KOBAYASHI<

  ̄ Y^ Y^ Y^ Y^ Y  ̄

 _ 人 人 人 人 人 人_

 >KOBAYASHI<

  ̄ Y^ Y^ Y^ Y^ Y  ̄



 >耳がァァァァァ─────ッ!<



 再び耳元で日本全国の皆さんの大合唱を聞かされ、俺は地面を転げ回る!


 何、何!? このお目々様……いや、戦闘用AIやナビゲーターか何かか!? 何なんだこの……


【……発言の訂正を要求。本機能は終末対抗兵器J型専用独立支援型補助機脳……〈AMIDA〉。発言の訂正を要求。本機能は】


 こいつは一体何なの!? もしかしてこの子は自我とかそういう類に目覚めてんの!?


【……高感度音声フィルターの設定を変更……完了】


『……よくやったわ、コバヤシ君……! 昨日までとは別人のようになっても……やっぱり貴方は、コバヤシ君なのね!!』


 あ、この声は沙都子先生か。あー、頭ガンガンする……何だったんだ今のは。本当にこの体はよくわからんことばかりだな……。


「……そうみたい、です。沙都子先生」

『先生はやめなさい……でも、ありがとう。コバヤシ君』


 先生……いや、サトコさんは涙ぐんだ声で言う。


 何で泣いてるんだこの人、泣きたいのは僕だよ? どう受け止めればいいの、この状況を。


『……ありがとう』


 でも()()サトコさんの声は、先生にそっくりだな……やっぱり何処か先生に似てる部分があるのかな。あって欲しいなぁ……。


『今から迎えに行くわ。貴方の家まで送ってあげる』

「あ……はい」


 何かもう疲れたわ。戦ってる時よりも戦った後の方が疲れるとはどういうことなんでしょうね……



【……報告、コバヤシ・タクローのステータスに】


「あの、お目々様? 俺の言葉が通じるなら視界に俺のステータスを表示するのやめてくれない? 邪魔になるからそこそこ重要な情報だけに」


【-AMIDA-】


「あー、えーと、アミダ……でいいの?」


【……表示機能を変更。表示する情報を重要度B以上に限定。ステータス表示を簡易モードに変更……】


「……どーも、助かりますよ。アミダ様」


 アミダ……えーと、確か有名な仏様の名前だっけ? 詳しくは知らないけど確かそうだったと思う。


「……ご大層な名前ですね?」


【……】


「まぁ、宜しくね。あー……何を言ってるのかわからないかも知れないが、実は俺は今までの俺とは」


【……返答保留。コバヤシ・タクローに関する情報の再整理を実行中。情報の整理が完了するまで貴方への返答は停止】


「あっ、そうですか。助かりますわ……」


 色々と言いたいことはあるが……これでこの国もみんなも救われたってことでいいんだよな。


 〈終末〉って奴はぶっ倒せたし、言いたいことは腐るほどあるが一先ずこれで良かった事にしよう。あー、空が綺麗だなー。綺麗な青空だー、わはー……。


「タクロー!!」


 ボケーッと軽く現実逃避しかけていたら空から誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた。


 迎えのヘリコプターが来てくれたようだ。ヘリが着陸した瞬間、フリスさんが慌ただしく降りてきた。



「そしてコバヤシへ」-終-


\KOBAYASHI/

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