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「今日から一番、かっこいいのだ」

ここから\KOBAYASHI/無双が始まります。温かい紅茶、もしくはMONSTERと一緒にどうぞ


『貴方が負ける可能性は……ゼロよ!!』



 その言葉が届いたと同時に、俺の視界は全身を襲う凄まじい衝撃と共に真っ暗になった……。


 ……


 ……死んだな。こりゃ


 流石にあんなの食らったらなぁ……上空500mから落ちてピンピンしてたけど、流石に無理だよね。あーあ……16年か……短い人生だったな……。



【負けないで……!!】



 誰の言葉だったかな……。そういえば、ヘリから落ちる前にそんな言葉を聞いたなぁ……。


 ええと、誰だっけ……。あれ? おかしいな……思い出せないぞ?



【私、信じてますから……貴方が、私のことを忘れても……覚えていなくても!!】



 ああ、そうだ。あの子だ……俺の……



【貴方は私のパートナー……】



 俺の……



【私たちの、タクローだから!!】



 俺の、パートナーで幼馴染。居たっけ? あんな幼馴染……いや、居たんだろうな。頭がボーッとしてもうよくわからないけど。幼馴染かぁ……。



【みんな、死ぬわ。貴方の家族も……友達も……日本に辿り着いた〈終末〉は、目に映るもの全てを破壊するの】



 ……死ぬ?


 これから彼女は死ぬのか?


 彼女だけじゃない……皆……俺が、負けたから……。



 >ドクン<



 明衣子も死ぬ……親父も死ぬ……みんなも死ぬ……()()()に殺される。俺みたいに……。



【〈終末〉は全てを破壊します。町も人も……何もかも】



 ────認められるか


 ────認めてやるもんか


 ────()()()()に負けるなんて……



 >>あんな奴に負けんなよ、クソ兄貴ィィィ────ッ!!<<



 何処からか、明衣子(いもうと)の声が聞こえた。


 明衣子(いもうと)が俺に >負けんなよ< と言った。


 それだけで、十分だった。



【……被弾。〈終末〉の攻撃が命中。損傷チェック……】


【……損傷ナシ。戦闘続行に支障ナシ】



 俺は辛うじて動く拳を握りしめ、俺の体を押しつぶすナニカに向かって思いっきり────



【-殲滅開始-】



 握りしめた右拳を、全力で振り抜いた。



 ────べギャンッ!



 そんな感じの音と、右拳を伝わる嫌な感触と共に目の前を塞ぐナニカは消し飛ぶ。そして俺の眼に眩しい光が差し込んだ。


「……お?」


 その光が太陽の光だと気づいたのは、視界が開けて少し経ってからだった。


『ああ……見て下さい……! 土煙の中から……! 見えますか、皆さん! あの光が……!!』


 リポーターさんの声が聞こえる。


 そういえば、結構離れてるのにあの人の声がよく聞こえるなー。サトコさんが言う通信機能ってやつかな? まぁ、今はもうどうでもいいや。


「……〈終末〉だったっけ? お前の名前」


 右腕を吹き飛ばされ、『何が起こった?』とか言いたげな表情を見せる巨人を見ながら俺は呟いた。


「お前、この国を滅ぼしに来たんだってな。すげーよ、よくそんなこと考えるよ」


 静かに足に力を込める。


 ガシャンという音がしたと同時に、穿いた制服のズボンを破りながら両足の形が変化した。すごいな、この体……()()()()()


 俺が何を考えているのか、今から何がしたいのかが考えるだけでわかるんだ。


「……やれるもんなら、やってみろよ!」


 こんなに簡単なことだったんだ……そりゃぁ、サトコさんもうんざりするよなぁ。


 ただ、俺はアイツを『倒したい』、『ぶっ殺したい』と考えるだけでよかったんだ。


 あんな奴に『負けたくない』……皆を『守りたい』って考えるだけでよかったんだ。


「言っとくけどな、お前のパンチなんかよりも親父のパンチの方が……何千倍も痛かったぞ! クソ野郎が!!」


 俺は力強く地面を蹴って駆け出した。


 蹴った地面は割れ、俺は風を切るようにとんでもないスピードで〈終末〉に向かって突撃した。よくわからない、よくわからないけど……最初はあんなに恐ろしく見えたあの怪物を前にしても……


 ()()()は、絶対に負ける気がしなかった。


「歯ぁ食い縛れ! クソ雑魚ナメクジ!!」


 俺は勢いよく跳躍し、右拳にありったけの力を込めて……


「うらぁああああああああああーっ!!」


 〈終末〉の体をぶん殴った!


 拳が胴体に命中した瞬間、その白い体には大きな穴がボコンと開く。


「……ッ!」


 思わず振り抜いた拳に力が入る。


 そして俺は確信した。


 あの二人の言葉は本当だった……俺なら、このクソヤローをブッ倒せる!


「っっしゃあ! ざまーみろ! お前の胴体にデッカイ風穴を空けて……ッ!?」



 ブォンッ!!



 だが〈終末〉は胴体に穴を空けられても怯む素振りを見せず、さっきの一撃で勝ち誇っていた俺を狙って大きな拳で強烈なパンチを繰り出す!


「うおおおっ!!」


 俺が『やばい、避けろ!』と考えた瞬間、両足から青い光をジェット噴射のように吹き出して〈終末〉の攻撃を回避した。



 ゴゴゴゴゴォォ……ン



 空振りした奴のパンチからは強烈な衝撃波が発生して周囲の建物を破壊するが、その凄まじい衝撃の余波も今の俺には ちょっと強めの風 程度にしか感じられなかった。


「だったら……もっとブチ込んでやる! てめーが動けなくなるまでっ!」


 空中で姿勢を変え、俺はもう一度 〈終末〉に突撃する。


「てめーの全身に! ありったけをなぁああー!!」


 俺は〈終末〉の身体に連続で拳を叩き込む。その拳の一撃一撃が巨人の身体を穴あきチーズみたいに抉り取り……


 開いた風穴からは向こうの景色が驚くほどよく見えた。


「どーだ! てめーの身体をボコボコの穴だらけにしてやったぞ! これでお前もくたば────あばっ!?」


 とか調子乗ってたら終末さんの左手に思いっきり叩かれました。



 ドヒュゥゥゥゥ……ン!



 俺の身体はまるでデコピンで弾き飛ばした消しゴムのカスみたいにぶっ飛び、ビルを何個もズドドドドドドドって感じの凄まじい勢いで貫通しながら飛んでいった。


「だぁあああああーっ!!」


 俺は沢山の建物をぶち抜いた末に一際大きなビルの壁にぶつかってようやく止まり、俺を受け止めたビルは壁一面に大きな亀裂が出来た。



【……損傷ナシ。戦闘続行に支障ナシ】



 でも不思議……全ッッッ然、痛くなぁい!!


 おいおいおい、すげーな小林くん。あんな勢いでぶっ飛んだのにまるで痛みを感じねぇ。本当に今朝くらったロボ親父パンチや明衣子ちゃんビンタの方が何千倍も効いたわ。何だよ、見かけ倒しじゃないか……あのマッチョ。


「……ん? 何だ、急に暗く……」


 いきなり周囲が暗くなったので上を見ると……


「ファッ?」


 〈終末〉が遥か上空から俺を潰そうと飛びかかってきた。


「……うわぁ」


 あんな図体してるのに物凄いアグレッシブに動けるんですね、軽く感動を覚えます。あ、こいつの足裏汚えなー、真っ黒じゃねえか。



 ドゴォオオオオオオオオオオオオオン



 〈終末〉は上空からの垂直降下キックで俺をビルごと踏み潰した。


 もう音なのかどうかもよくわからない凄まじい振動と衝撃が俺の身体を襲い、受け止めてくれた男気あふれるビル先輩はその命を散らした……。



 スドン、ズドンズドンズドンズドン、ズドドドッ



 そして続く連続ストンピング。殺意やべーな、おい。マジで殺す気じゃん、地べたを逃げ回る黒光りするGを相手にしてもここまで執拗に踏んづけたりしねーわ。



【……被弾、被弾、被弾、被弾、被弾、被弾……〈終末〉の攻撃が命中。損傷チェック、損傷チェック、損傷……】



 でもな、そろそろうざったいぞ。殴りかかる時も言ったけどな……。



【……損傷ナシ。戦闘続行に支障ナシ】



「お前っ、のっ……攻撃っ、なんか、よりも、なぁ……」


 ズドン、ズドンズドンズドン、ズドッ


「親父のパンチや妹のビンタのが、何千倍も痛ぇんだよぉおおおおお!!!」


 終末の足が一瞬上がったと同時に、俺は終末に踏まれて出来た大きなクレーターの中で跳ね起きの体勢を取り、起き上がろうとする勢いをそのまま片足に乗せて〈終末〉の足裏に跳ね上がりキックをぶち当てた。



 ────ボッ!



 何か間の抜けた効果音と共にそいつの足は根本からぶっ千切れて飛んでいった。


 俺は跳ね上がりの勢いがすごすぎて逆さまの体勢で上空までぶっ飛び、何かシュールな未確認飛行物体みたいな感じになった。


「はっ、はっはっはっ……スゲー! 滅茶苦茶に動いてるだけなのに、ちゃんと戦えてるぞ!!」


 俺は空中で姿勢を変え、近くにあった高い建物に着地。体勢を崩して地面に倒れ込む白タイツの妖精を余裕たっぷりに見守った。


「そうだよな、俺は親父と母さんの子で()()明衣子の兄貴だもんな。貴方は頑張れば何でも出来るって……いつも先生が言ってくれたもんな」


 昂ぶる俺の感情に反応するように、全身の青い輝きは更に強くなる。


「……こんな奴に」


 倒れ込んだ終末に向かって、俺は勢いよく跳躍する。


「……こんな奴にッ!」


 こんな奴に、俺たち家族の思い出の町が滅茶苦茶にされたのが許せない。


 この町に住んでいた人達の日常が滅茶苦茶にされたのが許せない。


 俺みたいなちっぽけな高校生一人にボコボコにされるような……こんな奴に!



「許せるかよ! このクソ雑魚野郎がぁあああああ────ッ!!」



 俺が右拳にありったけの力を込め、〈終末〉にトドメを刺そうとした瞬間……


『駄目、コバヤシ君! そいつから離れ────』


 〈終末〉の顔が眩しく光る。そして奴の顔面から放たれるのは、町を焼き払ったあのレーザービームだ。


「うお……ッ!」


 俺の身体は〈終末〉の特大レーザーに飲み込まれ、視界が真っ白に染まった……。



「今日から一番、かっこいいのだ」-終-


> KOBAYASHI <

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