「レギオン」
『〈護衛体〉を撃破しました。撃破数は』
「そんなの一々報告しなくていいぞ。アミ公」
ジャキンッ!
「そんなの数えるだけ無駄だし、興味もないからな!」
俺の意思を読み取り、この身体は瞬時に構造を変化させる。
「一匹ずつ相手にしてられるか。纏めてぶっ飛ばしてやる!!」
『ゼロタイムシフタを発動。着地点を指定……』
身体に纏う青い光はより一層激しさを増し、俺の視界にマーカーが浮かぶ。俺は殺到する護衛体の先、奴らの向こう側に広がる空の一点を見据える。
「ぶっ飛べぇー!!」
――――ィィンッ!!
俺は護衛体を突き抜けながらぶっ飛ぶ。ゼロタイムシフタは瞬間移動ではなく、音を置いてけぼりにする速さ=亜光速で真っ直ぐ飛ぶだけの機能だ。だから着地点に決めた場所に障害物があると……
ズドドドドドドドドドッ!!
このように気持ちよくぶち抜いていく。
『着地点に到着、ゼロタイムシフタ解除。連続使用可能回数……残り2』
〈終末〉の攻撃でも傷一つ付かない俺がそんな速さで飛べば人間サイズの亜光速弾頭の出来上がりだ。視認できない程の速さがそのまま威力に変換された最強最速の体当たり攻撃で大量の護衛体が一瞬で粉砕されていった。
「目ェかっぽじって見ておけ! これが小林さんの力だぁー!!」
俺は叫びながら護衛体の群れに突撃する。
「くらぇぇぇ! 壱式・究天烈蹴撃ィィー!!」
『〈メテオ・ダイヴ〉発動』
キュドドドドドド!!
俺は突撃の勢いをそのまま乗せた急加速キックを放つ。突き出した右足が変形し、展開した装甲から青い光を噴出しながら繰り出す蹴りは護衛体の群れを蹴散らしていく。
「まだまだぁ! 弐式・無間煉撃拳ッ!!」
『〈サンザンド・スマッシュ〉発動』
ドドドドドドドドドドドッ!
続いて周囲の護衛体に連続パンチを叩き込む。両腕に青い光を纏わせながら放つ連打は殴った感触を感じる暇もなく敵を木っ端微塵に粉砕。
「うぉらあああっ! 参式・穿裂覇道砲────ッ!」
『〈フィンガー・ブラスト〉発動』
────ブァオッ!!
フ●イナルフラッシュよろしく両手を突き出し、数秒チャージした後に手の平からビーム砲をぶっ放す。ビームを撃ち出したまま勢いよく横に薙ぎ払い、大量の護衛体を跡形もなく蒸発させてやった。
「行くぜ、最終奥義! 零式……」
『〈アサルト・インパクト〉発動』
「あのさ、アミ公! 技名叫んだ後に一々訂正するのやめてくれない!? 何だか恥ずかしくなるんだけど!!」
『仕様です』
「やめて!?」
『慣れてください。もしくは正式名称を覚えてください』
「何百種類もあるのに覚えきれるかぁ! アサルト・インパクトォォォ────ッ!!」
手の平から迫り出した超出力エネルギー接射装置を前方に向けて突進。視界を覆うほどの数で攻めてきた護衛体が音もなく消滅していく……
これが体感何十時間にも及ぶ地獄のアミ公訓練の成果だ。
腕や脚から何かがニョキッと出てくる度に驚いていた頃が懐かしく思えるほどに俺はコバヤシ・タクローの身体を使いこなせるようになった。俺の意思に反応して瞬時に構造を変化させるだけじゃなく、この身体には何百種類もの武装というか必殺技が存在し、名前を叫ぶことでその技を繰り出せるらしい。叫ばなくても『こうしたい』とイメージするだけでアミ公がそれに該当する技を導き出して発動させる。肝心な時に役に立たないとかとんでもない。最初の戦いからアミ公はしっかりと俺を補助してくれていた。マジで超高性能なAIだったのだ……
『光栄です』
「でも思考を読むのはやめてくれないかな! 褒められて嬉しいのはわかるけど黙ってて!?」
『……私にそのような機能はありません』
「嘘つけ! 思いっきり声が嬉しそうだったよ!!」
俺はアミ公と脳内漫才しながら次々と護衛体を倒していく。しかし倒しても倒しても護衛体は怯まずに襲いかかってくる。
1体ずつの力は〈終末〉に及ばないがとにかく数が多い。奴らはその数でゴリ押してくるのが基本戦術のようだ。周囲の護衛体を蹴散らしながら群れ全体の動きを観察していると、俺達を運んできた輸送機には目もくれずに終末対抗兵器に向かって特攻している事がわかった。
「本当に俺達だけを狙って……」
『警告、警告』
「うおおおっ!?」
余所見をしていた俺に1体の護衛体がタックルしてくる。そいつに続いて次々と護衛体が重なり合い、白いマネキンのような体を眩く発光させる……
『警告、警告、警告』
「なん……っ!?」
ドドドドドドドォンッ!!
護衛体は一斉に自爆。爆発に巻き込まれた俺は煙に巻かれながら落下し、思いきり地面に叩きつけられた。
「……ッ!!」
『被弾。〈護衛体〉の攻撃が命中……損傷チェック』
「がっはっ!!」
『……損傷軽微。戦闘続行に影響はありません』
頭が揺れる。大したダメージはないが、爆発の衝撃は俺の意識を混濁させるには十分な威力があった。
「……くそっ、油断した……!!」
『……〈護衛体〉単体ではさして脅威ではありませんが、その攻撃力は〈終末〉にも匹敵します。複数体に囲まれた状況で立ち止まるのは危険です。油断しないでください』
「ああっ、わかったよ! 次から気をつけ……」
『警告』
ジャキィンッ!
「ぬわっ!?」
ふらつきながら起き上がる俺に護衛体が襲いかかる。何とか体を動かして攻撃を間一髪で回避したが、そいつは両腕の刃を振り回して俺を切り刻もうと執拗に攻撃してくる。
「くっそ、この野郎……いい加減にッ!」
『コバヤシ君、大丈夫!?』
「!? サトコさ……おわっ!!」
耳に突然飛び込んできたサトコさんの声に驚いた俺は瓦礫に足を取られてしまう。気がつけば目の前の護衛体に続くように大勢の顔のない人型が目前に迫り、俺の体を串刺しにしようと両腕を突き出してきた。
『警告、警告、警告』
あ、やべ────……
真剣に命の危機を感じた瞬間、視界を塞ぐ護衛体の体に風穴が空いていく。
「っ!?」
キィンッ!
瞬きをする前にそいつらの体は横一線に切り裂かれ、呆気にとられる俺の前に灰色のロボットが姿を現した。
『コバヤシ君! 返事をして!!』
「……あ、どうも」
『大丈夫!?』
「何とか……」
鶴と亀の頭部が合わさったような先鋭的ながらも丸みを帯びた小さな頭部。西洋の鎧を連想させるデザインの装甲の隙間からは緑色の光の筋が走り、右腕には細長い鉄骨のような銃身のライフルが構えられていた。
「あ、ありがとう……」
《……》
左腕から伸びるブレードはカシュンと左腕部の装甲に収納され、俺を助けた灰色のロボットは何も言わずに背を向けた。
「え、えーと」
《お前は、その身体で何をしに来たの?》
灰色のロボットから聞こえてきたのはサーシャさんの声だった。
「お、俺は……」
《……邪魔だから、あまり動き回らないで》
サーシャさんは吐き捨てるようにそう言った。
背中に備えられた剣先にも見える沢山のブースターを展開して、緑色の粒子を吐き出しながら飛び立つ。サーシャさんの操るロボット〈エカチェリーナ〉は正確無比な連続射撃で護衛体を葬っていく。
『コバヤシ君!』
「……大丈夫です、サトコさん。少し、油断しただけですから」
『無理はしないで! 出来るだけ他の終末対抗兵器から離れ過ぎないように戦いなさい!!』
「……はい、気をつけます。沙都子先生」
『……先生はやめなさい?』
「……ごめんなさい」
俺は顔面を両手で引っ叩く。そして深呼吸をして気合を入れ直し、ギュッと拳を握りしめる。
『……警告、後方に』
「わかってるよ!」
バゴォン!
俺は背後に迫る護衛体を裏拳で粉砕して再び空に飛び立った。
「レギオン」-終-
\ /Σ・∴'、─=≡ \ザコ/\ザコ/\ザコ/\ザコ/Σ…・*KOBAYASHI




