「OVERPEACE」
みんな強い(確信)
空に浮かぶ輪っかの中から護衛体と呼ばれる怪物が次から次へと湧き出てきた。
「……多くね!?」
おいおい、何だあの数は? 蚊柱かよ。え、まじであの数を相手にするの……??
『〈護衛体〉の数は3358体。時間経過で更に増える可能性も』
やめろ、正確な数を出すな! 戦う前に気力が失せるだろ!?
「じゃあ、お先にーっ!」
「えっ、ちょっ!?」
あまりの敵の多さに思考停止しかけていた時、隣のキャサリンさんが笑いながら飛び降りた!
「キャサリンさーん!!」
「ほら、わたしたちも行くよ! コバヤシ!!」
「えっ、あの人空飛べるの!?」
「空くらい飛べて当然だろ!? いきなり何言い出すんだよコバヤシィ!!」
あ、当然なんですか。そうですか……凄いですね!
「じゃあ、精々死なないように頑張ってね!」
「お前もな、カミーラ!」
「まぁ、頑張れよ……」
「どうしたコバヤシ、怖気づいたのか? だったら諦めろ……もう逃げ場はないぞ」
キャサリンさんに続くように皆が次々と輸送機から飛び降りていく。
そして背中から羽を生やしたり、不思議パワーで宙に浮いたり、何だか良くわからない影のような生き物を召喚して乗り物代わりにして空を飛びながら護衛体の群れに向かっていった。
『他の終末対抗兵器が戦闘を開始しました』
「……ああくそっ、やるしかねぇなあ!」
ようやく俺も覚悟を決め、キャロラインさん達から大分遅れて輸送機から飛び降りる。
「うおおおおおおーっ!」
空中に勢いよく躍り出た俺は両足からブースターを出し、ロケットのように加速して護衛体の群れに突撃する。
遠目ではわからなかったが 護衛体は顔面にぽっかりと穴の空いた人間のような姿で、両腕が鋭い両刃剣になっていた。輪っかから現れる奴らはその全てが同じ姿で〈終末〉にあった知性のようなものは感じらない。
『メモリミテート・ルームでの戦闘訓練を思い出してください。何も恐れる必要はありません。貴方は』
「はいはい、わかってますよ! 今の俺は!」
護衛体まで一直線に向かいながら、俺は右の拳を握りしめる。
「コバヤシ・タクローだからなっ!!」
そして目の前に迫る顔のないナニカを睨みつけ、全力で拳を突き出した。
ボッ!!
『〈護衛体〉を撃破しました』
何も感じなかった。突き出した拳は護衛体の体をブチ抜き、何の感触も得られないまま大量の白いナニカの群れを一直線に貫いた。
「うおおおおおおおおっ!?」
だが気合を入れすぎたのか、俺は勢いを殺しきれずに大量の護衛体達を打ち抜きながら市街地まで吹っ飛ぶ。
「っおおおおおおおおっ!!」
俺は空中で姿勢を変え、そのまま地面に着地する。ズガガガガガガガガッと道路を数十m程削ったところで漸く止まった。
「くそっ、強すぎんのも考えものだな……っ!?」
【……警告……】
自分の身体に戦慄していたところに大量の護衛体が俺に襲いかかってくる。
「ッ!!」
視界を埋め尽くす程の大群に一瞬怖気づいてしまった俺は思考が鈍り、そのまま顔のない人型の波に押し潰され……
────ドギャンッ!
……そうになった瞬間に視界を埋め尽くしていた白い影が吹き飛んだ。
「!?」
ポカーンと立ち尽くす俺の隣に、全身をSFチックなピッチリラバースーツとも機械的な鎧とも付かない不思議な衣装に身を包んだ誰かがすとんと着地した。
「……ファッ」
「ハーイ、コバヤシ! いきなり危ないところだったね!!」
俺を助けてくれた謎の人物の正体はキャサリンさんだった。
彼女は顔面を覆うヘルメット状のパーツを展開してにんまりとした笑顔を見せ、その豊かなボインを自慢げに揺らした。おお……デカいデカい。って待て、その部分柔らかいの!? そこはしっかりと頑丈な素材で覆うべきじゃないかな!!?
「あ、ええと……」
「立ち止まっちゃ駄目よー! アイツらはドンドン出てくるから!!」
『いつの間にそんなスーツに着替えたんですか』……って突っ込むのは野暮だな。でもカッコいいな、正にSFアクション映画の戦うヒロインって感じだ。
「じゃあ、あたしは行くからね! 次からは自分で自分を守るのよー!!」
「アッハイ」
「グッドラーック!!」
再び顔面をヘルメット状のパーツで覆い、キャサリンさんは護衛体の群れに突撃した。
ズドドドドドドッ!
彼女も俺のようにパンチやキックで戦うスタイルのようで、我武者羅にぶん殴る俺とは違って洗練された動きで次々と敵を蹴散らしていく。強い……そしてエロい。あのカッコいいんだけど絶妙なエロスを感じさせるデザインの戦闘スーツを着ているせいか、真面目に戦ってる姿が凄くセクシーに見えてしまう。
それにしてもあのスーツ設計した奴は誰だ? そしてそれを採用した馬鹿はどいつだ? 自国の最終兵器を何だと思ってるんだよアメリカ。
「……いやいや集中しろ、俺。もう後には引けねえんだか」
ドゴォン!
「うおおっ!? な、何だ!?」
「グルルルルルルルルルルル……」
「ホアアッ!?」
気合を入れようとした俺の隣に全身を黒い鎧のような鱗に覆われた羽のないドラゴンが現れた!
「ボサッと、スルナ……コバャシ……」
「……その声は、クーロンさん!?」
「……タタカエ、生き残りタィナラ……」
「!」
ドラゴンの姿に変身したクーロンは口の中に真っ赤な炎を滾らせて空に向かって吠えた。雄叫びとも、咆哮とも取れない凄まじい轟音と共に口からは猛烈な炎が吹き出してこちらに近づいてくる護衛体の群れを一瞬で焼き払う。
「……ヴァアアッ!」
ボアアアッ!
「うぁっちぃ! ちょっ、何!?」
クーロンの背中から炎の翼が形作られ、そのまま猛スピードで飛び立っていった。口から燃え盛る火の玉を連射し、次々と護衛体を倒していく。
ズドン
ヅガガガガガガッ!
「……すげえな」
キィンキィンキィンキィン!
ギョアアアアアアアアアアーン
空から現れる護衛体が世界中から集まった終末対抗兵器に蹴散らされていく。ある人は武器を手に、ある人は己の身体を武器に、そしてある人は獣のような姿に変身して……其々に宿った最強の力を行使して戦場になったフィラデルフィアを縦横無尽に駆け抜けていた。
「……負けてられねぇな、俺も」
『貴方は負けません。私が保証致します』
「……お前に保証されても嬉しくないなぁ」
『……』
棒立ちする俺を狙って空から大勢の護衛体が殺到する。
「でも、ありがとよ」
だが俺はもう恐怖を感じなかった。
頭の中にあったのはこいつらをブチのめしたいという、実にシンプルな欲求だけだった。
――――バギャンッ!!
俺は大地を踏みしめ、迫り来る護衛体達に向かって思いっきり拳を振り抜く。敵は両手の刃で俺を八つ裂きにしようとしたが、その刃が届く前にパンチの風圧で呆気なく砕け散った。
「OVERPEACE」-終-
三\George/\九龍/\Catherine/ \\Legion//




