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「愛と無慈悲」

話を聞こうって言う人ほど、割と話が通じなかったりしますよね。

「え、ちょっ……何す」

「この馬鹿息子がぁぁー!!」

「あばぶぼっ!!」


 隙を生じぬ二連撃! 先程の右ストレートに続いてロボ親父の左フックが容赦なく叩き込まれる!!


 >何でだよ!!<


「お前……タクロー、お前ぇ! 冗談でも言って良いことと悪いことがあるだろぉ!?」

「ちょ……待って。待って、俺の話」

「このバカ兄貴ぃー!!」

「んどぅぼ!!」


 今度は妹のビンタが俺の顔面に叩き込まれる!


 >だから何でだよ!?<



【……警告。コバヤシ・タクローの肉体に物理攻撃による損傷発生。ステータスに大幅な変化アリ】


 損傷判定:中。肉体機能に一時的な障害が発生。運動能力低下。呼吸機能低下。

 精神状態:『不調』→『要注意』。要注意。精神状態に異常アリ。



 二人に攻撃を受けたからか、俺の視界に真っ赤な文字で損傷発生の文字が浮かびあがる! ああ、攻撃を受けるとと身体の何処にどのようなダメージが発生したのが詳細に表示されるのね! スゴーイ! まさにSFの世界だぁ!!


「……あふっ! あふぅっ……!!」


 ところでそんなSFハイテク機能が備わったボディが普通にダメージを受けるのはどうして!? ダメージ軽減とか出来ないの!? 痛覚緩和とかは!? え、無いんですか!?


「ほんっっと、ふざけんなよ!? いくら兄貴でも許さないわよ!?」

「あ、あの……聞いて」

「おう、言ってみろタクロー。返答によってはいくら可愛い息子だろうと……」

「ええと……だから、あの子はだ」

「ふざけるなぁー!!」

「アバッ!」



 損傷判定:中以上……



 だから聞けや! あと本気で殴るな、マジで痛いんだよ!!


 何なんだよ、このロボ親父! 息子の訴えをこんな理不尽に否定する親がいるか!?


「あ、あのっ、もうそのくらいにして!」

「よーし、タクロー。最後のチャンスだ……彼女が誰か言ってみろ」

「……」

「いくらバカ兄貴でも、流石にないよね? ほら、言いなさいよ」

「「返答によっては殺す」」


 鬼だ、鬼がいる……!


 一体俺が何をしたっていうんだよ。ただ見覚えのないツインテール女子に『君は誰かな』って真っ当な質問しただけじゃん。何で責められなきゃいけないの?


「……フリス」

「……はい、タクロー。もう驚かさないで下さいよ、私でも傷つくんですから」


 驚かせてごめんなさい、フリスさん。誰か知らないけど、そんな不安そうな顔で見ないで下さい。


 とても胸が苦しくなります。


「……下の名前は?」

「えっ」

「ほら、言えよ。名前と言ったらフルネームだよ。言えないとこの家を追い出す」

「あたしも二度とアンタを兄貴だと思わないから」


 お母さん、助けて! このままじゃ僕、大事な家族に捨てられちゃう!!


「もう、いい加減にしてください! タクローが困ってます!!」

「でも……()()()()はフリスちゃんにあんなこと言ったんだよ?」



 _人人 人人_

 > このクズ <

  ̄Y^Y^Y^Y ̄



【……警告、警告。コバヤシ・タクローのステータスに変化アリ】



 精神状態:『要注意』→『危険』……危険値。精神に多大な異常アリ。安定剤(エリクシル)の即時使用を要求。現実逃避の可能性大。



 ついに妹に兄貴とすら呼ばれなくなった! やだ、小生やだ! もう耐えられない!!


「そうだ、いくらタクローが」

「……大丈夫です、きっと()()()()()()のダメージがまだ残っていたのでしょう」

「え、でも昨日まではフツーに……」

「……この人は、我慢しちゃう人ですから。今まで言い出せなかったんだと思います」

「……君がいうなら、俺たちは納得するしかないな」


 ……この前の戦いって何ですか、全く記憶にございませんよ。


 一体、俺は何と戦ったんですかね……。


「彼は私に任せて下さい……さぁ、行きましょう。タクロー」

「……あ」


 フリスさんは俺に手を差し伸べる。


 優しい笑みを浮かべたその御尊顔はとてもふつくしく、女神の如き彼女の美貌に俺は本気でときめいてしまった。


「……大丈夫、自分で立てるよ」

「ふふ、そうですか」

「じー……」

「明衣子ちゃん、そろそろ許してくんない? 流石にもう一発食らったらお兄ちゃん立てなくなっちゃうから……」

「ふん、さっさと学校いけバカ」


 ああ、妹が俺をバカとしか呼ばなくなった。クズよりマシだけど辛い。何なんだよ、本当に何なんだよ!!


「おら、お前の鞄だ。忘れんなよ」

「ぬぅおっ!?」

「これ持ってさっさと学校いけバカ」


 鞄をゴミか何かみたいにぶん投げんな! てか親父まで俺をバカ呼ばわりかよ! せめて親父は息子の肩を持ってくんねぇかな!?


「……」

「大丈夫、私が彼を治しますから」

「……あ」

「行きますよ、タクロー。遅刻してしまいます」


 ロボ親父と妹が睨みつける中、フリスさんは俺の化物みたいな手を握って強めに引っ張っていく。


「あ……あのさ」

「……辛いことがあるなら、ちゃんと話してくださいね?」

「……」

「私は、タクローのパートナーなんですから」

「ああ、わかったよ。ちゃんと話……ん?」


 あれ、この子今なんて言った? ごめん、ちょっとよく聞き取れなかった。


「今夜は貴方の家にお邪魔しますね」

「えっ?」

「お父様とメイコさんには既に許可を貰っていますので、安心して下さい」

「えっ??」

「ちゃんと私が、貴方の体を治しますから」


 貴方の家に、お邪魔? 親父と明衣子に許可? 体を? 治す?



【……コバヤシ・タクローのステータスに変化アリ】



 なるほど、そういうことか。いきなりの展開にちょっと困惑してしまったが、ようやくわかってきたぞ。


 この子は、俺の幼馴染でパートナーだ。それも家族と仲良しで宿泊許可まで貰っている。


 この子は、俺の体について色々と知っている。


 この子は、可愛い。めっちゃ可愛い。そして優しい。つまり天使。


 そんな天使と俺は幼馴染でパートナー。多分、親公認の仲。妹も彼女には心を許してる。つまり俺とこの天使はー……


 >カップルとして付き合っている!<


「ははは」

「どうしました? タクロー」

「ううん、別に?」

「?」

「何でもないよ、フリス()()


 不思議そうに俺を見てくるフリスさん(パートナー)を見ながらこう思った。


(教室に着いたら田中と安藤とボブに自慢してやろう!)



【……コバヤシ・タクローのステータスに急激な変化アリ】


 精神状態:『限界』→『絶好調』。精神が限界値から絶好調に回復。絶好調。問題ナシ。


【……絶好調】



 色々ありすぎてまともな思考が出来なくなっていた俺は、色んなツッコミどころを投げ捨てアホみたいな欲求に胸を踊らせていた。



「愛と無慈悲」-終-


\OYAJINGER/KOBAYASHI\MEIKOCHAN/  \Frith/

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