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シーズン・ライフ  作者: ドチザメ
1年生 秋
5/5

転校 そしてクラス委員長

 ロングホームルームが終了してからしばらく時間が経ち、クラスの人たちはもう半数以上が帰宅して教室からいなくなっている。


 ――そんな中、暴走気味の桜音ちゃんによるわたしの胸への()()調()()は30分以上にも及び、今やっと解放されたところである。


「いやぁ、ごめんね? あたしったらつい調子乗っちゃってさ……」

 声のトーンが先程とは比べ物にならないぐらい低い。


「ぜ、全然大丈夫だよっ。わたし、気にしてないから……」


「……かなちゃん。嫌だったんなら正直に言ってくれていいんだよ?」

 最初あんなに明るかった桜音ちゃんの表情が少し暗くなっている。さっきの()()調()()のことをかなり気にしているようだ。


「本当に気にしてないから……! むしろ、ちょっと嬉しかったよ!」



「へ………?」 桜音ちゃんの表情があっけにとられたような表情に変化した。

 そして顔色がどんどん青ざめていき………



 ……ん? 桜音ちゃん、何か誤解してないかな?



「せ……責められて嬉しいなんて…… ま、まま、まさかっ!! かなちゃんって実はエ………」

「ち、違うからっ!! わたし、決してそんなことはないからぁぁぁぁっ!!」


 桜音ちゃんが口に出そうとした言葉を瞬時に理解したわたしは全力で否定し、止めに入った。


 危ない危ない…… もう少しでみんなのわたしへの印象がMの変態になるところだったよ………


「桜音ちゃん! わたしが嬉しかったのは桜音ちゃんがわたしのことを友だちとみてくれているからあんな事をしたんだなと思ったからであって……」



「………………あっ。そういうことね! おっけーい!! 理解したよ!」



 なんだろう、今の少し長い間は……?

 まぁ、大丈夫だよね? ちゃんと理解してくれてるよね?


「かなちゃんっ! あたしはかなちゃんがどのようになろうとも、この先ずっとず〜〜っと友だちだよ!」



 ――やっぱりちゃんと理解してくれてないでしょぉぉぉ!!



「あれ? どうしたの、そんなガックリした感じになって……」


「ううん、いいの…… 大丈夫だよ……」


 ――でも、"この先ずっとず〜〜っと友だちだよ"と言ってくれたのは………



 ――――とても、嬉しかったよ!



 わたしはサッと体を起こして、

「桜音ちゃんっ!」


「わ! ひゃい!」


「……ぷっ。あはははっ!」


「な、何さ! かなちゃんっ!! あたし何かおかしなことした!?」

 桜音ちゃんが変な声がでてしまった恥ずかしさに顔を赤くしながらまるで小さな子どものように怒っている。


「いや、ごめんね! 元気いっぱいで明るい桜音ちゃんがあんな声出すんだって思って……」


「そ……そう言うかなちゃんだって、あの時変な声出てたじゃんっ!」


「………ぁ」 かぁぁぁぁ………


「……………ぷっ」

 今度は桜音ちゃんが笑いをこらえられずに噴き出した。



「ちょ、ちょっとぉぉ! 思い出させないでよ、恥ずかしいからぁぁぁっ!!」

 顔を真っ赤っかにして子どものように腕を振り回すわたし。


「あっはははは!! これでおあいこだよっ! いやぁ、桜音ちゃんってやっぱり可愛いね!」


「もぉぉぉ………」

 あまりの恥ずかしさに手を顔に当ててヘロヘロとしゃがみこんでしまう。


 ――その可愛いは子どもに向けられる可愛いのように聞こえるんだけど……




「話を戻すけどかなちゃん、さっき何を言おうとしたの?」


「あ、そうだった!!」


「いやいや、自分が言おうとしてたのに忘れちゃダメでしょ……」


「えへへ…… ごめんね?」


「大丈夫だよ〜 だってかなちゃんだし!」


 ―――それは褒め言葉として受け取っていいのかな?

 まぁ、いいや……


「では改めて……」


 コホンッと可愛らしい咳払いをしてわたしは言う……

「桜音ちゃん! これから先もずっと友だちでいてね! よろしくお願いしますっ!!」

 

「………」

  ポカーンとする桜音ちゃん。


「――――っ!!」

 しばらくして桜音ちゃんの目がキラキラと輝きはじめた。ま、眩しい……


「もちろんだよっ! かなちゃん!! これからも私たち、ずっと友だちだよっ!!」


「あ、ありがとう!桜音ちゃん!!」


 お互い、手をぎゅっと握ってこれから先友だちでいることの約束を交わした。



 突然の引越しで不安ばかりのスタートだったけど……最高の友だちと出会うことができた……!


 新しい場所での再スタート…… 少し自信がついてきたよ! お母さん、お父さん!


 満面の笑みを浮かべて手をにぎり合う2人……

 その光景はまさに癒しそのものであった。




「――――あら、2人ともとても楽しそうね。」


 清流のように透き通った綺麗な声。高校生なのかなと疑うほどである。

 髪はサラサラの黒髪でポニーテール。背はわたしより少し高めだ。


「あ、あのぉ…… あなたは?」



「あ、私ったら自己紹介もせずに…… ごめんなさいね?」


「い、いえ! 大丈夫です!」


「私の名前は雪森(ゆきもり) 柊和(ひより)よ。このクラスのクラス委員長をしているの。よろしくね、椛那さん。」


 聞けば聞くほど高校生とは思えないような透き通った声だなぁ…… 綺麗……



「…………椛那さん? どうしたの?」


「えっ? あ! ご、ごめんなさい!! あまりに綺麗な声だったからうっとりしちゃって………」


「っ!」


 柊和さんの顔が少し赤くなったように見えた。

「そ、そう? あ、ありがとう」


 あれ…… 気のせいかな?



「かなちゃん! ひよっちはねぇ〜 普段はクールぶってるけど実は結構恥ずかしがり屋さんなんだよぉ〜」

「ちょ……!! ちょっと桜音っ!! 余計なこと言わないでよ!」


 顔を真っ赤にして怒る柊和さん。


 桜音ちゃんは柊和さんのことを"ひよっち"と呼ぶらしい。とても仲が良いようだ。


「へぇ〜 そうなんだ………」


 すると桜音ちゃんにくってかかっている柊和さんがクワッとこっちを向いて……

「か、椛那さん? 今のはあまり気にしなくていいからね?」


 ……笑顔が若干歪んでいる。

 気にしなくていいと言われたら余計に気になるよ……



「ところでひよっち、何か用があるの?」


「少しね。椛那さんとお話がしたくて……」


「……わ、わたしと……ですか?」


「えぇ、そうよ。さっき済ませた初対面の挨拶と、あと1つお願いしたいことがあるの。」


「は、はい……… なに……かな?」


「さっき、桜音と楽しそうに話してたわね。」


「う、うん! 桜音ちゃんとこの先ずっと友だちでいようねって約束してて……」


「…………」


「…………」


 なんだろう、この空気……重い………

 ま、まさか……わたし転校初日から出しゃばり過ぎてて迷惑だったかな!? それで注意しにきたのかな……? だって、クラス委員長って言ってたし……




「そ、それでね? あの…… そのぉ…… わ、私……とも…………」


 あれ? 体をモジモジさせて落ち着きが無いような感じに…… 顔も少し赤くなってるような……



 あ。そういえば桜音ちゃんが柊和さんは実は照れ屋だって…………

「わ、私ともっ!! 桜音と同じように友だちになってくれませんか!!!」


 顔を真っ赤にして委員長全身全霊のお辞儀が炸裂した。


「ひ……柊和………さん?」

「私のことは"ひより"と呼んでくれていいわよっ!!」


「は、はいぃっ!」

 あまりの迫力に押されてしまう。


「いやぁ〜、相変わらず照れ屋さんだねぇ、ひよっちは」

 クスクスと子どものように笑いながら言う桜音ちゃん。


 すると、

「!?」

 急に方向を変え、柊和さんが桜音ちゃんに飛びついた。


 そして……


 がっし ……ギリギリギリ…………


「ぎゃぁぁぁっ! 痛い痛いやめてぇぇ! あたしが、あたしが悪かったからぁぁぁ!!」

 委員長のグリグリ攻撃が桜音ちゃんのこめかみに命中した。かなり痛そう……


「うぅぅぅ〜……」


 あまりの痛さに、さすがの桜音ちゃんも頭を抑えてその場にうずくまってしまう。


「めちゃくちゃ痛いじゃん〜! いきなり何するのさ、ひよっち〜!!」


「桜音が余計なこと言うからでしょう!?」

 怒りと恥ずかしさで赤くなりながら、少しきつめの口調で言う。


「そ…… そうでした…… ごめんね? テヘッ」

 一方で桜音ちゃんは無邪気に舌を出しながら謝る。



「………はぁ。わかってくれればいいわ」



 柊和さんと桜音ちゃんの会話を聞いていて思う……


 ………2人は本当に仲が良いんだなぁ…… わたしもいつかこんな風に友だちと話したりできるといいな……


「柊和ちゃん! ………あ、柊和ちゃんと呼んでもいいかな?」


「え? う、うん…… いいけど……」


「かなちゃんは誰にでもちゃん付けで呼ぶんだね?」


「な、なんだかわたしの癖みたいになってて…… あ、それでさっきの柊和ちゃんのお願いの返事なんだけど……」


「は、はい!」

 緊張しているのか、急に口調に変わった。



 ………あははっ。柊和ちゃんもとてもいい人でよかったなぁ……


 ――この3人なら最高の学校生活を送れそう!




「柊和ちゃん! こちらこそ、これから先ずっとず〜っと友だちとしてよろしくねっ!! この3人で最高の学校生活を送っていこう!!」

 お願いの返事とともにわたしは最高の笑顔を見せた。



 …………て、天使だ……! かなちゃんの笑顔がここまでの破壊力とは………!

 桜音ちゃんが固まった。


 一方の柊和ちゃんは体がプルプル震えている。


 そんな2人の状況に気づいたわたしは、

 ………あれ? 2人ともどうしちゃったのかな……?


 ――心配になってきた。



「桜音ちゃん!? 大丈夫!?」


「だ、大丈夫…… かなちゃんの笑顔に心を奪われかけただけだから…… は、ははは………」


 ………え? それってどういうことなのかな? 大丈夫…… だよね?


「ひ、柊和ちゃんは!? 大丈夫?」


「えぇ、私なら大丈夫よ…… それより、あなたのことを呼び捨てで言ってもかまわないかしら?」


「う、うん! 大丈夫だよ! よかった…… てっきり急に具合が悪くなったのかと……………」


 ………ん?



 ―――様子がおかしい。なんだろう、この柊和ちゃんの周囲に立ち込めている妙な雰囲気は………


 まるで特別な大人の女性が出すような…… 例えるならば…… ()()()………?


 さっきまでこんな雰囲気全く出してなかったのに……一体どうしちゃったんだろう………?



「椛那ぁ…… こちらこそ、よろしくねぇ……」



 ………明らかにおかしい!

「ど、どうしちゃったの!? 柊和ちゃん!!」


 そこに我にかえった桜音ちゃんが、

「あ…… もしかしてとは思ってたけどやっぱり…… かなちゃん、逃げたほうがいいよ…… 初対面のかなちゃんに対してだったら何されるかわかったもんじゃないからね……」




「……え? それってどういう……………」




 ふらふらとした足取りで柊和ちゃんが私たちに近づいてくる………

「フフフフ……… たぁーっぷりと楽しませて頂戴ねぇ? 新しい()()()()()♡」



 ――――その言葉は高校生とは思えない程の凄まじいオーラを放っていた。





最後まで読んでくださり、ありがとうございます。少々長めになってしまいました… 申し訳ないです…(T-T)


次回……転校 そして委員長の秘密

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