転校 そして友だち
波乱のロングホームルームも終わり、みんなそれぞれ帰る準備を始める。
そんな中、わたしは……
どう話しかければいいかわからず、またもや小刻みに震えていた。
プルプルプル………
可愛らしい震えと一緒に
ガタガタガタ………
……あれ?もしかして、机と椅子にまで震えがつたわってる?わたし、そんなに震えてるのかな?こんなの見られたら恥ずかしいじゃん!震え、止まってよ……
思うだけでは止まるはずもなく、震えはどんどんとエスカレートしていく……
プルプルプルプルプルプル………
ガタガタガタガタガタガタ………
わたし、人見知りにも程があるっ…… こんなんじゃ一生友だちなんて…………
――ふと周りを見渡すと、クラスにいる人の半数がプルプルと震えているわたしを心配そうな眼差しで見ていた。
かぁぁぁぁ………
自分の顔がゆでだこの如く赤くなっていくのがはっきりとわかった。こんなの恥ずかしすぎる!
そして――
ポンッ! プシュゥゥゥ……
羞恥心が限界を超え、そのまま机に倒れこんでしまう。頭から湯気出てない? これ……
はじめての友だちができた頃にはもう卒業式なんじゃないかなぁ? あ、そもそも卒業できるかどうかもわからないかぁ〜
あははは……
今度はだんだんと思考がぶっ壊れてきた。
もう……なにも考えられないや………
「かーなちゃんっ!凄い深刻な顔してるっぽいけど大丈夫?」
「ほぇ?」
「何をそんな気が抜けたような声だしてんの! 2学期、今日始まったばかりだよ!! 気合い入れていこーう!!」
「は、はいぃぃ!! ごめんなさいっ!」
いかにも明るく元気いっぱいな女の子が後ろから話しかけてきた。
突然の事だったのでつい間抜けな声を出してしまう。 ……またもや恥ずかしい。
「あ、あのぉ…… あなたは?」
「ん? あたし? あ、まだ自己紹介してなかったね! あたしの名前は花咲 桜音! よろしくね、かなちゃん!!」
「あ…………こ……こちらこそ、よろしくお願いしますっ!! 桜音さん!」
「まぁまぁ、そんなにかしこまらずにぃ〜〜 あたしのことは気軽に"かのん"と呼んでね!」
「は、はい! よろしくね、桜音ちゃん!!」
「ちゃん付け!?」
ズコッ
桜音ちゃんがずっこけリアクションをとった。慣れているのか、見事でキレのあるフォームだ。
サッと起き上がり、
「……まぁ、いっか! ところでかなちゃん、さっきの自己紹介の時は災難だったね……」
「う、うん…… 本当だよ…… 」
あの時の事が頭の中でフラッシュバックする。
「あんなところをみんなに見られて……… わたし、間抜けに見えたよね……」
「何言ってんの! 見えるわけないじゃん!!」
「えっ………?」
「あんな目にあったのに、我慢して一生懸命に自己紹介してくれたかなちゃんはもはや尊敬ものだよっ! あたしだったらあまりの恥ずかしさに泣いてうずくまっちゃってるね!」
「…………っ!!」
「もしもかなちゃんの事を間抜けだと思ってる奴がいたら鉄拳制裁してやるんだから!!」
そう言いながら笑顔で腕をブンブン振り回している桜音ちゃん。
「…………」
ポロッ
「あれ? かなちゃーん?」
ポロポロポロ……
「わわわっ! ど、どうしたの椛那ちゃんっ!?」
自然と大粒の涙がいくつもわたしの顔を滴っていた。
「あれ…… わたし、泣くつもりなんかないのにな…… もう泣いてるところなんか見られたくないのにな………」
「か……かな……ちゃん? 大丈夫?」
「でも…… そんなこと言ってるなんて…… 嬉しすぎて涙が止まんないよぉ!!」
こんな駄目なわたしのことを馬鹿にしないでくれる…… ましてやこんな人見知りのわたしのことを尊敬すると言ってくれて……
桜音ちゃんの優しさを思えば思うほど、目からどんどんと涙が溢れでてくる。もう自分で自分の感情を抑えられそうにない。
こんな……わたしのことを………!
「かなちゃん……っ!」
―――ぎゅっ
「……ふぇ?」
桜音ちゃんがわたしに勢いよく飛びつき、そして優しく抱きしめた。
ふわりと 包み込むように――
そして、わたしの頭を撫でながら
「かなちゃんは深く考えすぎだよ…… かなちゃんが自己紹介をした時、あれだけ盛大な歓迎の拍手をしたみんながかなちゃんの事を悪く見ると思う?」
「……!」
――そうだ…… そうだった……
考えてみれば、みんな私の事を受け入れたからあんな大きな拍手をしてくれたんだ………
わたしは…… 自分で勝手に悪い方に考えていただけなんだ………
「かなちゃんっ!! 何事もプラス思考だよ! マイナスに持っていっちゃダメ! 人生損しちゃうよ!?」
桜音ちゃんが必死にわたしの事を考えてくれている……
本当に……
本当に…… 優しいなぁ、桜音ちゃん……
「ごめんねっ。わたしったらいきなり泣きだしたりしちゃって……」
「落ち着きましたか? かなちゃんっ」
桜音ちゃんがそっとわたしから離れる。
「うん! ありがとう! 桜音ちゃん!!」
「どういたしましてっ! 悩み事などがあれば、このあたしにドンとお任せよ!!」
胸をそらし、手を腰に当てて全力のドヤ顔。
――あぁ、あの時の先生のドヤ顔とは比べ物にならない程頼りたくなるドヤ顔だぁ……
「あっ、ところでかなちゃん。落ち着いたところで1つ聞きたいことがあるんだけど……」
「え? なあに、桜音ちゃん! わたしに答えられる事ならなんでも!!」
「ほっほぉ…… 今、なんでもと言いましたな?」
「え……? う、うん………」
………嫌な予感がする。
「さっき抱きしめた時に気づいたんだけど…… かなちゃん、胸大きいよねぇ〜…… D以上はあるんじゃない!? どうなの!?」
やっぱりーーー!!
「え、ええ!? わ、わたし、胸なんか気にした事ないから…… 何カップなのか、全く………」
「またまたぁ〜〜 そんなにご立派なモノを持ちながら気にしたことがないだなんてぇ〜〜」
「そ……そう言われてもぉ………」
「フッフッフッ…… ではかなちゃんの友だちであるこのあたし自らがかなちゃんのモノを調べて教えて差し上げよう!!」
「ふ、ふぇぇぇっ!! だだ、だ、誰か助けてぇぇ!!」
――花咲 桜音ちゃん………
明るくて元気いっぱいで、優しくて…… 少しグイグイくるところがあるけれど…………
わたしの1人目の友だち……! できてよかった……!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
現在続きと各キャラクターのイラストを製作中でございます…。
*次回…… 転校 そしてクラス委員長