6-11 決断
コロナのせいで完全に予定が狂って1学期がとんでもなく忙しくなりました。多分次回で最終回?です。
―――1941年12月、デトロイト
アメリカ有数の自動車工業都市であったここデトロイトは、枢軸国の度重なる空襲によって荒廃し、焼け野原と化した。今月には40機の富嶽がこの街を襲い、市街地の80%が焼け、辺り一面、灰と瓦礫だらけの無残な景色となっていた。
「おい、あっちにも人がいるぞ」
「本当だ。あれは子供か?」
「行ってみるか」
市街地で捜索、救助活動を行っているアメリカ陸軍兵らが、建物が崩れ落ちてできた瓦礫のところに人を発見した。顔は見えないが、その体格から子供だと思われる。手が動いているので、まだ生きているのは確かだ。兵士らは近づいてみることにした。
「大丈夫か?この一帯には避難命令が出ている。早く安全なところへ……」
途中まで言いかけたところで、その子供は振り向いてこちらを見た。その容姿はまだ10歳にも満たないような少女だ。体のあちこち、特に両手が煤などで黒く汚れている。怪我もしているようだ。
「……ぁが」
「ん?何だって?」
少女は俯きながら何かを言ったようだが、よく聞き取れない。
「……ママが、ママがまだ……」
次の瞬間、少女は泣き出してしまった。涙を零しながら、瓦礫を必死にどけようとするが、少女だけではこの量の瓦礫はどけそうにない。煤で真っ黒な少女の両手はよく見ると切り傷を何か所も作っている。ずっとここでこうやっていたのだろうか。
「……ママはこの下にいるのか?」
少女はうなづいて答えた。母親はこの瓦礫の下敷きになってしまっているようだ。少女の母親を助け出そうにも、この瓦礫を全てどけるのは大人3人がかりでも厳しい。仮に全てどけたとしても、母親が生存している確率は低い。しかし、この少女のためにも諦めるわけにはいかない。兵士2人はアイコンタクトをとった。
「よし、いい子だ。よく頑張ったな。これからは俺たちに任せてくれ。それとここは危ないからあっちにある防空壕へ」
兵士たちの1人が少女を保護し、防空壕へ向かう。そして、残った者たちは救助活動を開始した。
―――アメリカ、ホワイトハウス
アメリカ本土への空襲が激しさを増す中、ルーズベルトは自室にこもり、一人で悩んでいた。
「ロスアラモスの研究所が空襲を受けただなんて……これは、枢軸国と講和すべきなのか?」
先日、ロスアラモスにある研究所が空襲を受け焼失してしまった。その研究所はマンハッタン計画に基づいて核開発が行われていた重要な研究所なのだ。研究員は避難したため無事であったが、研究所にあった実験用の器具や書類などは全て失った。ルーズベルトはこれに大変ショックを受けたのだ。
同時期に、独伊仏の3か国がベルリンでアメリカに無条件降伏を要求する共同声明を改めて発表しており、最初は無視する方針でいたが、それも揺らいでしまった。
アメリカには無条件降伏するしか選択肢は残っておらず、逆転できる可能性もほぼなくなってしまった。
「……無条件降伏、か」
ルーズベルトは重大な決断を迫られていた。