6-10 北米戦線
あまりにも浮上しなさ過ぎてTwitterで生存を疑われ始めましたが、私は元気です。
―――ロサンゼルス、第19方面軍司令部
「この私がまさか、ここまで来ることになるなんてな……」
陸軍大将、山下奉文は窓から景色を見つめてそう呟いた。ここロサンゼルスにある第19(北アメリカ)方面軍司令部は、ロサンゼルスを占領した後に設立され、山下大将が初代司令官として任命されたのだ。
第19軍方面軍はロサンゼルスを拠点にして、西海岸一帯の占領を目指して進軍を開始。米軍の大火力による激しい抵抗が予想されたが、米本土には大量の予備航空機があるにもかかわらず日本側が制空権を奪取。アメリカの優秀なパイロットは太平洋の戦いでほとんどが撃ち落され、本土に残るのは急ピッチで飛行訓練を受けた新人パイロットばかり。一方、日本軍は大戦初期からの歴戦パイロットばかりで、飛行機があってもそれを動かす人がいないという状況になったのだ。米陸軍は、突然の本土上陸に対してパニック状態に陥り、全国でショックを起こして入院する人が続出した。
ニューオーリンズに上陸した日本軍は、一時はヒューストンからモービルにかけての一帯を占領したが、補給が追い付かなくなり、米軍の反撃を受けたため数週間後に全軍が撤退した。ニューオーリンズへの上陸によって、東海岸に敵軍を引き付けることや、メキシコ湾沿岸の石油施設、工場を破壊することに成功した。
本土上陸によってアメリカの国力は大打撃を受け、また、西海岸に飛行場を確保したことで本土空襲も激化した。アメリカの工場生産量は昨年と比較すると4分の3まで落ち込んでいた。
「山下大将、大本営より電文です」
「うむ。そこに置いといてくれ」
山下奉文は振り向き、机に上に置くよう指図した。
「失礼しました」
言われたように部下は紙を机の上に置き、立ち去った。山下大将は椅子に戻り、電文を読む。内容を要約すると、「じきに終戦を迎える。これより大規模な作戦行動は避け、第19方面軍は復員の準備を始めろ」というものだった。何度も読み直したが、書いてあることは同じだった。
「まるで未来が見えるような書き方だが……それにしても、復員の準備をしとけだって?西海岸の占領はしないつもりなのだろうか?……まぁいい。私は軍人としての役目を果たすまでだ。無意味な殺し合いなんて続けるのは私だってしたくはない」
山下大将は心の中でそう思った。
「しかし、本当に終戦が近いのか?あのルーズベルト大統領は徹底抗戦を主張している。今政府がうまく話をつけているのだろうか。だとしたら……」