6-8 攻略準備
―――アメリカ、ホワイトハウス
大統領の執務中、突然電話がかかってきた。
「もしもし。ルーズベルトだが」
「大統領閣下、た、大変です!」
「どうしたんだハル長官」
その慌ただしい声の主はハルだった。
「昨日の参戦要請に対し、全国家から返答なし。更に、エルサルバドル、ニカラグア、ドミニカ、ペルーが我が国に対し宣戦布告しました!」
「な、何だって!?」
ルーズベルトは驚きを隠せない様子だ。
「やはり参戦要請は無茶がありました・・・訂正して和平するべきでは・・・」
ハルはいつになく不安そうな声でそう訴えた。
「いや、今更引き下がれない。これからの防衛戦略を練り直す」
ルーズベルトはそう言うと電話を切った。
「練り直すと言ったが、どうしたものか・・・」
「失礼します。ルーズベルト大統領に御用があって来ました」
部屋に入ってきたのは、陸軍元帥ドワイト・アイゼンハワーだ。
「アイゼンハワー元帥か」
「先ほど、南米、中米四ヶ国が我が国に宣戦布告してきました」
「ああ、もう聞いている。ちょうど、これからの防衛戦略を練り直そうとしていたところだ」
「我が国は現在およそ300個師団を有しており、ほとんどを沿岸防衛に充てています。ただ、海岸線が長いうえ、枢軸国がどこに上陸してくるか分かりません。アラスカ戦線も無視できません」
「アラスカ戦線は、補給量にも限界があるから大軍が来ることはないだろう。しかし、制海権を失った今、上陸作戦を仕掛けられる可能性はあるな。現に日本軍の潜水艦隊がカリフォルニア沖まで進出してきている」
アメリカは太平洋での主導権を失い、残っている艦隊はほとんど大西洋側にある。日本軍の上陸を水際で食い止めなければいけないのだ。
「今は沿岸防衛に徹した方が良さそうですね・・・」
「うむ。あと数か月待てば、あの新型爆弾が完成する。それまでの辛抱だ」
「新型爆弾・・・ですか」
アイゼンハワーの表情が曇った。
―――日本、宮城(皇居)
「ニカラグアが軍隊の通行を許可したというのは本当か」
天皇は東條英機大将にそう聞いた。
「はい。ニカラグアを含め、昨日参戦した国々は我々に協力するようです」
「なるほど。先ほど立案したNL作戦を実行する。作戦の開始には数か月かかるが、NL作戦で米国と決着を着けることができる」
「承知しました。軍部に戻り、作戦を伝えます」
そう言って東條は去っていった。