5-1 バルバロッサ作戦
年は明け、1940年1月。フィンランドでの戦線は膠着したままであり、両者とも一歩も動けないまま時が過ぎていった。
更に国際社会は冬戦争をソ連による侵略戦争であると批判。国際連合はソ連を脱退させる措置をとった。しかし、社会主義体制をとり国際社会から孤立しているので、経済制裁も意味はなく、他の列強国も大戦中なので冬戦争を終わらせることはできなかった。
ヒトラーはこの頃、公の場で冬戦争について言及し始めた。
「東方における社会主義国は日に日に横暴さを増すばかりであり、彼らは先の大戦で独立を勝ち取った国々を間抜けな口実で侵略している!バルト諸国が社会主義圏になったときは大目に見てやったが、私たちが軍事的な援助をしているフィンランドにまで攻め入った!これ以上奴らの勢力圏が広まれば、千年帝国、いや、ヨーロッパの民族の生存が危うい!国民はより団結して奴らに報復を与えなければならない!」
と、バルト三国併合などのことも含めてソ連の脅威を演説で語っていた。
この演説から、ヒトラーの主張する東方生存圏の拡大を正当化しているのであろう。
東方生存圏とはドイツが東部に獲得するべき生存圏のことで、ヒトラーはドイツの過剰な人口を東方に移住させ、東方にある資源や食料を獲得して千年帝国を築き上げると考えているのだ。
その演説は、東方生存圏の拡大をいよいよ実行しようとしていることを示唆していた。
―――1月末、総統官邸、閣僚会議室
この日、ドイツの国家方針を決める閣僚会議が開かれた。
開始早々、ヒトラーの言い放った一言が閣僚たちを驚かせた。
「来月、ソ連へ奇襲攻撃を仕掛ける」
「「「 !!? 」」」
それを聞いた大臣たちは一瞬言葉を失った。
「ほ、本当ですか!?対ソ作戦は5月に実行するはずでは・・・」
「ソ連がフィンランドに釘付けになっている今がチャンスだ。奴らはまさか冬に攻めてくるなんて思いもしないだろう!」
「し、しかし・・・」
大臣はヒトラーの急な作戦変更に戸惑う。
「心配することはない。日本から寄与された冬季戦装備、悪路走行用のケッテンクラートなど、前線に揃えてあり、作戦に支障はあまりない。土台の腐った納屋は入口を一蹴りするだけで倒壊する」
ヒトラーはそう豪語した。
そして、2月3日。ドイツは独ソ不可侵条約の破棄を宣言。ソ連への奇襲攻撃作戦、バルバロッサ作戦を発動。兵力およそ300万人の大軍で同時に越境を開始した。
ヴィシー・フランス、イタリア、ルーマニア、ハンガリー、スペインなどの枢軸国も参戦を表明し、世界大戦はより巨大なものになった。