4-16 冬戦争
1939年11月27日。ソ連はフィンランド軍から砲撃を受けたという理由でフィンランドに宣戦布告。歩兵45万人、戦車2000両、火砲2000門、航空機1000機の大軍でフィンランド領全域へ侵攻を開始。冬戦争が始まった。
宣戦布告の前日、カレリア地峡付近の村でソ連軍将兵が死傷する砲撃事件が起きており、これはフィンランド軍による挑発だと抗議した。このことを口実に宣戦布告したのだ。しかし、この事件はソ連が自軍に向けて故意に行ったもので、フィンランド軍の仕業に偽装工作したのだ。
ソ連軍は圧倒的な数的優位であったものの、序盤から苦戦を強いられた。この年は例年より気温は高く、湖や湿地がまだ凍結していないため、機械化部隊などの進軍を妨げた。更に、フィンランドは開戦当初から撤退を繰り返し、ソ連の補給線を伸ばしていった。ソ連の快進撃が続くと、そこには強固な防御陣地があり、足止めを食らった。
そうこうしているうちに枢軸国の義勇軍が到着。精鋭部隊によってソ連との戦力差を縮めることができた。
追い打ちをかけるように冬の寒波が到来。ソ連軍の銃火器などが凍結し、冬季装備を用意していないソ連軍は寒さと雪で進軍できず、フィンランド軍に各個撃破されていった。
―――ラーテ林道
「フィンランドの戦術は見事だな・・・遊撃戦、というやつか」
目の前で起きている戦闘を見て、独り言を漏らす。観戦しているのはフィンランドへ派遣された日本の軍事顧問、中川州男大佐だ。
フィンランド軍は撤退することで、細長く数本しかない道の奥へと誘い、油断しているところで道路を遮断して森に隠れている部隊がソ連軍を分断。そのまま殲滅するという、モッティ戦術を駆使していた。
他にも、部隊を雪と同化させるために軍服や戦車、火砲などを白色に統一して見えなくさせるなど、気候や地形を生かした戦い方をしていた。
彼らの戦術を学び、国のために生かせばきっと勝利を。中川大佐はそう思いながら、真っ白な大地を見つめていた。
―――ソビエト連邦、クレムリン
「同志スターリン、フィンランドとの戦争の件でお話があります」
「ふむ、何だね?」
ソ連軍参謀総長、ゲオルギー・ジューコフはスターリンに話しかけた。
「ご存知だと思いますが、第8軍、第14軍ともに壊滅状態にあります」
「ああ。だからそちらに援軍を向かわせた。何か問題なのかね?」
「そういうわけではありません。ただ、これ以上戦闘を継続すると犠牲者が増える一方です」
「心配することはない。援軍には赤軍の精鋭もおり、攻勢を続ければ直に突破できるだろう」
「しかし、背後には日本やドイツがいます。講和を考えるのも一つの手かと」
「ふむ、そうか・・・しかし、フィンランドは革命での混乱に乗じて独立した旧領だ。それに、背後にファシスト国家がいるということはファシズムと講和するのと等しい」
スターリンは戦闘継続を選んだ。