4-14 運河破壊作戦
―――アッズ環礁
「今日も異常なし、か・・・」
東洋艦隊の司令長官は水平線を眺めながらそう呟いた。
ここアッズ環礁では、本国が降伏した現在でもイギリス東洋艦隊が残存していた。東洋艦隊はシンガポールが奪取された後、拠点をトリンコマリーに移したが、港湾能力が不十分で喫水の深い泊地が必要であったため、このアッズ環礁まで移動したのだ。
戦闘に参加することもなく、居場所が敵に見つかることもなく、戦争中にもかかわらず平穏な日々が続いていた。
しかし、敵は突然やってくる。
「レーダーの情報によると、北東から飛行機の編隊が近づいてきてます!おそらく日本のものだと思われます」
参謀長は焦っている様子でそう報告をした。
「何!?やつらはどうして我々の居場所を知っているのだ!?」
「それは分かりません。ただ、このままではこのアッズ環礁が攻撃されてしまいます」
「そうか。全艦、対空戦闘用意だ。パールハーバーの再現は阻止しなくてはならない!」
その命令通り、東洋艦隊は対空戦闘の準備を開始。レーダーでの情報通り、日本の攻撃隊が来襲し、艦隊と攻撃隊の間で戦闘が開始された。
艦隊は対空砲などで応戦するが、動かない船は的に過ぎなかった。
ズドォォーンッ!
ズドォォーンッ!
急降下爆撃や雷撃などによって、次々に戦艦や空母に命中。船体や甲板に穴が空き、炎上や船体の傾きなどを引き起こし、黒煙を上げながら沈んでいった。東洋艦隊は無残にも壊滅した。
―――パナマ運河
カリブ海と太平洋を結ぶ交通の要衝、パナマ運河。パナマ地峡にあるこの運河は、パナマ領ではなくアメリカ合衆国が永久租借しているため実質アメリカ領だ。
1930年代後半から世界情勢が緊迫し始め、アメリカ合衆国は通行可能量を増大させるためパナマ運河拡張案を成立。新規の閘門の工事中であった。
「あれは、飛行機か?」
拡張工事の作業員の1人が上空にいる飛行機に気付いた。
「日本軍、じゃないだろうな?」
仲間の作業員が疑うように言う。
「まさか。日本はここからかなり離れているんだから、こんな遠くまで来れるわけないだろ。きっと近くの飛行場からじゃないか?」
ここから一番近い日本軍の基地はサモアであり、このパナマ運河までは届くはずもなく、空母の艦載機だとしてもここまでは届かない。運河の守備隊の飛行機だと確信していた。しかし・・・
「おい、あの飛行機、近づいてきてないか!?」
背後を見ると、数機がこちらに急降下しているのが見えた。急降下爆撃をしているということはすぐに分かった。
「まずい、逃げろ!」
ドカァァーンッ!
ドカァァーンッ!
現場はパニックになりながらも総員退散し、幸いにも死者は出なかった。しかし、爆撃隊の狙いは運河であり、工事中の運河や閘門が破壊され、運河は使用不可となった。