4-12 珊瑚海海戦
この日、ソロモン諸島周辺の海域、珊瑚海では日本軍の作戦を阻止すべく、アメリカ軍が主体のABDA艦隊がここで待ち伏せをしていた。
「ハルゼー提督、西方に艦影が確認できました。日本海軍と思われます」
「やっと来たか・・・」
アメリカの海軍軍人、ウィリアム・ハルゼーは、旗艦レキシントンの指令室で指揮を執っていた。
「敵艦隊の構成は?」
「はっきりとは分かりませんが、空母3隻、戦艦2隻などの大艦隊です。数では日本側が勝っているかと・・・」
「今回の戦いは、どのくらい敵へ損害を与えるかがポイントだ。艦載機や遠距離砲戦で対抗せよ」
「直ちに攻撃準備を始めます」
「日本の空母を間近で見るのは初めてだな・・・それに、空母同士で戦うのは歴史上でも初めてだ」
ハルゼーは空母との戦いは初めてであり、そのことで緊張していた。しばらくすると・・・部下が現況の報告にきた。
「提督、艦隊の周囲で索敵を行っていた航空隊からの連絡です。奇襲攻撃に来たと思われる日本軍機を迎撃。雷撃機10機、攻撃機7機、爆撃機3機を撃墜し、他の攻撃隊は退却したとのことです」
「そうか、よくやった。我々も攻撃隊を出し、敵空母を叩くんだ!」
「はっ、かしこまりました」
ハルゼーは敵の損害を確認し、攻勢に出た。しかし、その時だった。
ズドオオォォォォン!
ズドオオォォォォン!
突然、背後から強烈な砲撃音とその残響が2発聞こえてきた。
「な、何だ今の音は!?」
ハルゼー含め、アメリカ側はその音に驚いた。その音の大きさから、撃ったのは戦艦であることは確かだ。しかし、連合国側の艦隊に戦艦はいない。つまり日本側の戦艦が背後から撃ってきたということだ。
「あれは・・・戦艦か?おそらく戦艦長門、もしくは新型戦艦だな・・・」
砲撃された方角を見てみると、遠くに艦影が見えた。その大きさからして、戦艦であることは確かだ。ハルゼーはその戦艦が長門だと思っていたが、実の正体は戦艦大和。史上最大の大きさの戦艦であり、唯一46センチ砲を搭載している戦艦だ。
混乱の中、砲撃が続く。
「提督、砲撃によりネオショーに被弾しました!燃料タンクに引火し、ただいま炎上しています!」
「何だって!?あの遠距離からの砲弾が当たったのか?」
あの遠距離からの砲撃は、たとえ戦艦であっても数十発の攻撃で命中する確率は低い。運ではなかったとしたら、日本はよほどレーダー技術が発達しているということだろう。
その後も応戦を続けたが、火力も航空機の数も日本が優勢であり、次々に駆逐艦や巡洋艦が沈んでいった。日本側の損害は、航空機以外だと無傷に等しかった。
「仕方ない、ここから撤退する。これ以上戦ったところで損害が増えるだけだ」
ハルゼーは撤退を決意した。太平洋艦隊はこれ以上損害を増やしたくないからだ。連合国の撤退により、珊瑚海の制海権は日本のものになった。