1-4 大慶油田
1936年3月7日、史実通りドイツがラインラントへ進駐を始めた。まあ、知ったのはその次の日なんだが。その事を岡田総理に伝えたら「事前にその情報を知っていただけでは」と(心の中で)言われた。確かに、次の日の事を予想しても、そう思われるよな。もっと信頼度を上げなくては。
それから2か月後。この2か月の間に起こった事を俺が次々と言い当て、俺に予知能力があることを、皆信じるようになってきた。しかし、まだ実権を握るには早い。もう少し追い打ちをかけないとな。取り寄せ能力使えば早く実行できるかもしれないが、いきなり特殊能力なんて使われても、戸惑うだけだからまだやらない。
ちなみに、この2か月の間、予測が当たるのを待っていただけではなく、この国の事情や国力、国際情勢なども調べ上げた。それはまた後で語るとする。
―――1936年5月、総理官邸
俺は次の作戦を実行すべく、ここまで来ていた。もちろん、総理と会うためだ。
総理は、既に岡田総理ではなく、広田弘毅総理へ変わっていた。というか、岡田内閣は俺が来た3日後には総辞職しているんだよな。
「陛下、今日はどういったご用件で?」
広田総理がそう聞いてくる。もう何度もここに来ているので、驚かれることはない。
「早速だが、この地図を見てくれ」
俺はそう言って地図を広げる。
「これは・・・満州の地図ですか?」
俺が見せたのは、満州の地図。広田総理は、いきなり満州の地図を見せられて戸惑っているのだろう。
「ああそうだ。実を言うと、ここに大きな油田があるのだ。この周辺を重点的に掘ってほしい」
俺は、満州のとある地点を指さした。その地点は、大慶油田がある場所だ。
大慶油田とは、1950年代に発見され、世界最大級の採掘量を誇った油田である。
この油田を見つけ、採掘を開始すれば、日本は外国からの輸入に頼ることなく、自国で石油の供給ができる。戦争でも有利になれる。大慶油田から採れるのは主に重油なので、船舶の燃料に使える。海軍を動かす上では重要だ。
「油田・・・ですか?」
(こんなところにあるとは思えないけどな・・・)
「ああ。何としてでも、ここを掘ってほしい」
俺はそう頼み込んだ。
2か月後、ついに大慶油田が見つかった。これで石油事情は解決するだろう。
そう思ったが、そんなうまくはいかないらしい。すぐに採掘を開始し、ガソリンなどを精製しろと命じたが、日本には石油の採掘技術も精製技術もろくにないらしい。
日本ってここまで酷かったのか・・・