4-10 イギリス降伏
1939年7月25日。イギリスはスコットランドに築いていた防衛線が突破され、エディンバラがドイツ軍に占領された。これ以上の抗戦は不可能であるとして、ついにイギリスは降伏した。
こうしてブリテン島はドイツの占領下になり、残っていた軍の幹部や政府要人は逮捕され、後の軍事裁判で死刑もしくは終身刑が確定した。
しかし、カナダにいる亡命政府や降伏に反発したイギリス海軍などはアメリカの旗下に入り、抗戦を続けた。
枢軸国は、ヨーロッパに残る他勢力の排除と工業力、資源の確保のためユーゴスラビアへの侵攻を開始。ユーゴスラビアは電撃戦に成す術もなくわずか10日で降伏した。
スロベニア、クロアチア、セルビアはドイツの占領下、コソボ、モンテネグロ、ダルマチアはイタリア、マケドニアはブルガリア、というように枢軸国に分割された。
北アフリカ戦線では、一度はエジプトの戦線が崩壊したものの、押し戻して元の全線に戻り、モロッコに上陸したアメリカ軍は大損害を受けて撤退した。
―――ドイツ、総統官邸
「イギリスはついに我々に屈した!不俱戴天の敵を先の大戦から20年後に打ち払ったのだ!」
ヒトラーは高らかにそう宣言した。
「おめでとうございます、総統閣下。総統の指揮のおかげです」
「ゲッベルス、私を褒めるのはまだ早い。英仏など、我が計画を邪魔する厄介者に過ぎない。私が狙っているのは、もっと東にある」
「東・・・というと、あのソ連ですか?」
「ああそうだ。私が求めている東方生存圏はソ連にあるのだ。あの広大で肥沃な土地、資源を確保できればドイツ民族は永遠に繁栄できる」
ヒトラーは自慢げにそう語る。ヒトラーの目的は最初から東方生存圏を確保することであり、英仏との戦争は西の脅威を取り除くことに過ぎなかったのだ。
「ということは、不可侵条約を破ることになりますが・・・作戦はいつ頃開始いたしますか?」
「できることなら今すぐにでも始めたい。時間が経てばボリシェビキは拡大していくだけだからな」
「しかし、まだソ連との国境には陸軍も空軍も配備が完了していません」
カイテルはそう答えた。
「ならいつ終わるのだ?」
「対ソ戦用の300個師団の配備が終わるのは、今年の10月ごろです。それから作戦を開始するとなると、すぐ冬になってしまい、行軍ができなくなります」
「そうか・・・では、作戦の開始は来年の5月ごろにしよう。それまでにポーランドのインフラ整備と軍備の拡充をしてくれ。いくら相手がソ連でも油断はできない」
「はっ、かしこまりました」
そして、ドイツはこれまでと方向を逆転させ、東部戦線へ目を向けるのであった。