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4-8 アシカ作戦

―――1939年7月、イギリス


「チャーチル首相!た、大変です!」


秘書は慌てた様子でチャーチルに向かいそう言った。


「何だね?空襲のニュースならもう聞き飽きた」


「それよりももっと悪いニュースです。ドーバー海峡の沿岸警備隊から電文が今届きました」


「沿岸警備隊?ま、まさか・・・」


沿岸警備隊という単語を聞いた瞬間、イギリスにとって最悪なことが頭をよぎった。


「・・・ドイツ軍がポーツマス近郊、そしてドーバー近郊に上陸し、進軍を開始しました」


実はドイツ軍は北海で上陸作戦に見せかけた陽動作戦を行っており、海軍がそちらに出動させたためドーバー海峡の守りが薄くなり、隙をついて上陸されてしまったのだ。


「・・・そうか。やはり上陸してきたか」


秘書は低く、冷たい声でそう言うと、チャーチルは意外にも落ち着いた声でそう呟いた。


「ここはもう危険です。王室の方々はスコットランドへの避難を開始しました。我々も急ぎましょう」


「分かった。今から準備する。外で少しの間待っていてくれないか?」


「はい、分かりました」


そう言うと秘書は頭を下げ、部屋を後にした。


(上陸されたとなると、議会や国民は私を許さないだろう。避難したところで私に居場所などないのは確かだ。せめて、これで責任をとろう)


チャーチルはそんなことを考えながら、引き出しの中に入れていた拳銃を取り出した。


(もうこの国は終わりだ。しかし、私は今日でイギリス人でもなくなる・・・)


チャーチルは意を決し、頭の側面に銃口を向けて引き金を握った。


バァンッ!


「首相!?」


突然の銃声に部屋の外にいた秘書は甲高い声で反応した。発砲音の方角、音の大きさからして部屋で発砲したのは明らかだ。

発砲音を聞いた者は急いでチャーチルの元へ向かったが、既に遅かった。頭から血を流しており、問いかけにも反応しなかったからだ。


現場の状況から、自殺だと断定された。



チャーチルの死により首相の座は空席になった。しかし、首相を決める余裕もなく、戒厳令が出されたため、議会自体が一時的に廃止され政権は軍部が握ることになった。



ドイツのブリテン島上陸は世界を震撼させた。世界一と言われていた王立海軍を破ったからだ。陸軍力の弱いイギリス軍は上陸軍に勝てないことは明白な事実であり、大英帝国の崩壊を象徴する出来事だった。


しかし、イギリス政府は徹底抗戦を表明。植民地兵やアメリカ軍を本土に召集し、上陸軍と同等の兵力を揃えた。


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