4-5 スペイン参戦
―――イギリス、ウェストミンスター
チャーチルは、執務室の中で海戦の結果を心待ちにしていた。負け続きのイギリスに、何としてでも勝利が欲しかったからだ。
「首相、報告です」
「うむ、海戦のことだな?」
執務室に入ってきた第一海軍卿ダドリー・パウンドが報告をする。
「はい。知っての通り、ドーバー海峡にて枢軸国と海戦が行われ、結果は・・・」
「結果は?」
「・・・我が軍の負けです。戦力は同等だったものの、こちらは損害が空母1隻、戦艦1隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦20隻、潜水艦15隻。一方、枢軸側は戦艦1隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦10隻、潜水艦20隻と、こちらの方が損害は大きいです」
「・・・ん?もう一度言ってくれないか?」
チャーチルは現実を受け止めきれない様子でそう聞いた。しかし、何度聞いたところで結果は同じ。仕方なくもう一度言う。
「こちらの方が損害は大きく、我が軍の負けです」
「な、何故だ?王立海軍が負けるわけないだろう!それに、敵はどうやって同等の戦力を揃えた?」
チャーチルは大声で怒った。まだ負けを信じられないのだ。
「どうやらドイツ軍は海軍を大幅に増強させていたようです。敵は既に空母を持っているようです。航空機の数でも相手が上回っていますので、艦隊決戦では勝てても対艦攻撃には敵いません」
なんとドイツは新型空母、グラーフ・ツェッペリンを竣工していた。これの投入により、ドイツ海軍の戦力は大幅に向上したのだ。
「まさかドイツが空母を持っているなんて・・・仕方ない。海軍用の航空機を増産してくれ」
「それが・・・航空機の増産に必要なゴムが不足していて、生産ができない状況です。ゴムを生産するインドやアフリカとのシーレーンは遮断されていますし・・・」
「く・・・このままではロンドンが危ないぞ・・・」
チャーチルは危機感を募らすだけだった。
―――マドリード、総統官邸
「フランコ総統、ドイツ政府より電報です」
「一体何だ?」
スペインの総統、フランシスコ・フランコの元に1つの電報が届いた。
「スペインに参戦してほしいとのことです。同様の電文が日本、イタリア政府からも届いています」
「我が国はまだ内戦から復帰したばかりだ。しかし、連合国の劣勢を考慮すれば・・・」
きっとドイツは地中海の要所、ジブラルタルを陥落させたいのだろう。フランコは悩んだ末、こう答えた。
「こちらにも準備が必要だから、1か月待ってくれ。それから参戦する、と返信してくれ」
「かしこまりました」
こうして、スペインの参戦が決まった。