4-2 シンガポール陥落
―――1939年1月25日、シンガポール
日本と連合国との戦いは、日本の優勢が続いていた。10日にはルソン島のマニラ、ミンダナオ島のダバオを占領。南太平洋の海戦でも勝利が続き、マレー半島ではついにジョホールバルを占領。日本軍の南方作戦は順調に進んでいた。
イギリス軍はマレー半島での敗退を受けて、ジョホールバルからシンガポールに撤退していた。それは5日前のことだった。日本海軍による砲撃は受けているが、既にマレー半島とシンガポールを結ぶ橋は破壊しており、日本軍が陸路で来ることはない。イギリス兵は臨戦態勢を整えていた。その矢先だった。
上空に味方軍機ではない飛行機の群れが勢いよく音を立てて近づいてきていた。
「空襲だ!気をつけろ!」
そんな自軍の声が聞こえてきた頃には、もう遅かった。多数の戦闘機が航空戦をしているが、明らかに自軍が劣勢。戦っている合間に、爆撃隊は無慈悲にも爆弾の投下を開始した。応戦もままならないまま、基地は破壊されていく。
その時、兵士たちは更なる脅威が間近に迫っていることを知った。
「お、おい!あれは・・・日本軍の上陸部隊だ!」
「バカな!いくら何でも早すぎる!」
海岸の向こうを見る兵たちは驚愕した。日本軍の上陸部隊らしきゴムボート群が北方から来ていたのだ。しかし、沿岸砲はまだ整備が終わっていないか、攻撃によって損傷しているかでろくに使える状態ではなかった。シンガポールの兵もまだ準備が終わっていないかったことと、マレー半島側がほぼ無防備だったこともあり、日本軍の上陸を許してしまった。
その後、上陸した日本軍は、シンガポールにいる軍と戦闘になった。しかし、日本軍に対して練度が低く、空襲などによる混乱によってわずか10日ほどでシンガポールが陥落。日本軍は8万人以上の将兵を捕虜として手に入れた。シンガポールは、太平洋、インド洋、オーストラリアを結ぶ地点であり、そのため島も要塞化されていた。難攻不落の地がが陥落したことは衝撃的なことだった。東洋艦隊の拠点はトリンコマリーに移された。
―――イギリス、ウェストミンスター
「まさかシンガポールがあれほど簡単に占領されるなんて・・・まるで酷い悪夢を見ているようだ・・・いっそ、この手で死んでやろうか・・・」
チャーチルは、議会で野党から厳しい追及を受けていた。何故なら、戦艦の撃沈、シンガポールの陥落、海峡植民地の喪失、多くの戦死者と捕虜を出したからだ。そのため、チャーチルは自殺を考えるほど心が弱っていた。
―――ドイツ、ヴィルヘルム街
「ゲーリング、ついに日本軍がシンガポールを陥落させたようだな」
「はい、そのようです」
ゲーリングはヒトラーにそう答えた。
「イギリス、アメリカ、共に日本の攻勢によって弱っているようだ。これで我々が負けることはもうない。過去3千年間負けを知らない民族を味方にして戦うことになったからだ!」
ヒトラーはそう叫んだ。そして、ドイツはアメリカに宣戦布告。大西洋のアメリカ海軍、輸送艦への攻撃を開始した。




