3-14 エンタープライズ
―――日本、とある農家
この日、ラジオでの臨時ニュースが放送された。その放送は、
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。大本営、12月8日午前7時発表。帝国国防軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。帝国国防軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。」
という内容だった。これは、国民に米英との開戦を告げるものだ。
「戦争だなんて怖いわ・・・やっと私たちの生活もよくなってきたのに・・・」
「仕方ないだろ。アメリカやイギリスは今まで日本に対して酷いことをしてきたんだ。それに、小作人の生活から抜け出せたのは陛下のおかげだ。それを忘れたのか?」
「そうね・・・私も頑張らなきゃ」
母は戦争に対して恐怖心を抱きつつも、国のために奉仕することを誓った。
―――北太平洋海上
アメリカの空母、エンタープライズは輸送任務のため、真珠湾を出港し、グアム島に向けて海を渡っていた。エンタープライズが輸送しているのは、大量の重油と弾薬だった。航海は安全にできていると思われていたが、状況は一変した。
「ん?何だあの艦隊は?」
艦長はそう呟いた。水平線にぼんやりと複数の船が確認できたのだ。その艦隊はこちらに接近してきた。
「あれは・・・日本の艦隊か?何故ここが分かったんだ!?」
その艦隊は日本の艦隊であり、重巡洋艦や軽巡洋艦で構成されていた。
艦長は驚きを隠せなかった。何故なら、日本側はこちらの輸送ルートを知らないだろうし、そもそも、エンタープライズが輸送任務をしていること自体知っていない可能性が高いからだ。しかし、今その理由を知る手段は何1つとしてなかった。
そんなことを考えていると、艦隊は、よりこちらに近づいてきていた。
これ以上近づくと危険なため、空母はそこで停止させた。その時、艦長は日本の艦隊に疑問を持った。
「・・・何故、攻撃してこない?」
エンタープライズは輸送任務のため武装をしていない。よって、反撃をすることはできない。日本側からすれば、攻撃をすれば簡単に沈めることが可能だ。この距離で空母の武装の有無が確認できないわけではない。わざと攻撃してこないのだ。
艦長が考え込んでいると、その艦隊は移動をして、エンタープライズの四方を囲うようにしていた。
「艦長、日本側から発行信号です。『降伏せよ』」
それを聞き、攻撃をしてこない理由が分かった。日本側はエンタープライズを捕獲したいのだ。捕獲して日本用に改装すれば、自軍の戦力にできる。更に、積んでいる重油や弾薬も手に入る。
「船員の命を守るためには、降伏しか手段はないな・・・」
艦長は戦力より船員の命を優先した。それには、空母1隻で戦況は変わらないという考えもあった。
こうして、エンタープライズは日本に明け渡された。