3-6 マルタ占領
―――イギリス、ウェストミンスター
「まさか、マルタが奪われてしまうとは・・・」
チャーチルは報告を見て頭を抱えていた。
何故なら、ドイツ軍による謎の空襲でマルタを占領されてしまったからだ。マルタは、イギリスのシーレーンで重要な位置にあり、地中海艦隊の拠点の1つでもあるため、損害は大きかった。
しかし、チャーチルにとって気掛かりだったのは、占領されるまでの出来事だ。生き残った者の話では、最初の空襲は爆撃機や雷撃機ではなかったというのだ。突然、見えないほどのスピードと無音の弾が飛んできて爆発したのだ。敵艦による砲弾を疑ったが、普通の砲弾とは違っていた。ということは・・・
「奴らは新兵器を開発したのか・・・ドイツは次々と新兵器開発をしているとの情報があるから、考えられるな」
いくらドイツの科学技術が高度だとはいえ、無人で敵陣を攻撃する兵器など前代未聞。イギリスは、新兵器の対策と、大西洋での通商破壊の阻止をしなければならない。
―――ドイツ、総統官邸
「総統閣下、無事にマルタ作戦を終え、マルタは我が国のものになりました」
ゲーリングはヒトラーにそう報告した。ゲーリングの他にも、数人の高官が並んでいる。
「そうか、よくやってくれた。地中海艦隊には攻撃されなかったか?」
「はい。イギリスは怖気づいて、あまり攻勢に出られないようです」
「よし・・・では諸君、次に狙うのはエジプトと英領ソマリランドだ」
その一言に、一同が驚く。
「ということは・・・アフリカでイギリス軍と戦うのですか?」
「そうだ。イギリスを屈服させるためにも、まずは植民地からの供給を止めなければいけない。スエズ運河は必須なのだ」
島国であるイギリスは、食料、資源、兵士などの供給を植民地に頼っている。そこで、イギリスの主なシーレーンである地中海航路を潰すのだ。スエズ運河を占領すれば、インド、アラビアなどからの供給が難しくなる。ヒトラーはそう考えていた。
こうして、アフリカ戦線が始まろうとしていた。
―――ソ連、クレムリン
「ドイツは・・・着々と力をつけているようだな」
「はい、そのようです」
スターリンに対し、秘書官はそう答えた。
「我がソ連も負けてはいられない。まずはバルト三国、フィンランドを併合する。要求に従わなければ、戦争だ。そう伝えておいてくれ」
「はい。かしこまりました」
その後、フィンランドはこの要求を拒否。ソ連は冬戦争を始めようと準備を開始した。