3-5 中立法改正
ようやくアメリカが出てきます。アメリカのことを調べるのも大変です。
―――1938年6月、アメリカ、ホワイトハウス
「あなた、コーヒーよ」
「ああ。ありがとう」
車椅子に座って手紙を読んでいるのは、現合衆国大統領、フランクリン・ルーズベルト。その横でコーヒーを差し出したのは、夫人のエレノアである。
「その手紙ってもしかして・・・」
「ああ。またチャーチル首相からの手紙だ」
この頃、ルーズベルト宛にチャーチルからの手紙が何通も来ていたのだ。
内容はどれも似たような内容で、
「親愛なるルーズベルト大統領。大陸では今、独裁者が暴れまわっております。ヨーロッパで悪の枢軸国と戦えるのは我が国しかいません。平和で自由な世界のためにも、どうか我が国を助けていただくようお願いいたします」
というような内容だった。
「うーむ・・・我が国には中立法があり、支援するには改正しないといけないな・・・」
「改正するって・・・アメリカにはモンロー主義があるから簡単にはできないでしょ?」
「そうだな。しかし、早く対策を・・・モンロー主義はもう時代遅れなのか?」
ルーズベルトはそう悩みつつも、その数週間後には中立法の改正案を可決していた。
―――同月、ドイツ国内のとある基地
「これが・・・報復兵器第2号、V2ロケットか・・・」
そこに並んでいるV2ロケットを見て、ヒトラーはそう呟いた。ヒトラーの横には、宣伝大臣ゲッベルス、空軍大臣ゲーリングがいる。
一行は、日本から到着したV2ロケットを確認するため、ここに訪れているのだ。
「しかし、日本の生産能力には驚かせれますね・・・こんな短期間でこれほどの数を用意するとは」
ゲッベルスがそう言ったのは、V2ロケットを開発したことを日本に伝えてからわずか数週間で200発近くが送られてきたからだ。V2ロケットはとても精密であり、大量生産には向かない。これだけの期間で200発近くを生産したことは、信じられないのだ。
「・・・日本製のV2には欠陥があるということはないか?」
「いえ。数発をテストしてみたところ、性能に問題はありませんでした。おそらく、ドイツのものと同等の性能だと思われます」
そう答えるとヒトラーは・・・
「日本は優秀な同盟国だ。彼らのおかげで我が帝国計画が実現しつつある。必ず、マルタも陥落させることができるだろう」
「マルタ・・・ですか?」
ヒトラーのその言葉に2人は驚いた。
マルタは、地中海を経由してエジプト、インドなどへの重要なルートであり、枢軸国にとってはイタリアからリビアなどへの輸送路を脅かす地でもある。そのため、イギリス海軍の拠点などもあり、島も要塞化されているため、上陸は難しい。
そこでヒトラーは・・・
「このV2ロケットを使ってマルタを占領するのだ。100発以上のV2ロケットをマルタに発射し、島内を混乱させたところで、爆撃機などで港湾機能を破壊。その後、海軍を使って海上封鎖し、空挺作戦で一気に占領するのだ」
ヒトラーは自慢げにそう語った。そして、この作戦は実行されるのだった・・・