3-3 ダイナモ作戦
―――1938年5月末、イギリス本土近海
ついにダンケルクまで追い詰められたフランス・イギリス連合軍は、ドイツ軍の攻撃を受けながらも決死のイギリス本土への撤退を敢行していた。この撤退作戦のために緊急で駆逐艦や民間の大型船が徴用されたのだ。
撤退する兵士を満載した艦隊はダンケルクを出発し、急ぎ足でドーバー海峡を進んでいたが・・・出発してからおよそ20分後、敵は訪れた。
ドオオォォンッ!
「な、何だ!?敵襲か?」
激しい音と揺れに驚く船内の乗員たち。
その音の正体は、魚雷によって船底に穴が空き、勢いよく海水が流れ込む音である。その魚雷は、ドイツのUボートによって撃ち込まれたのだ。艦隊は、海中にUボートが忍び寄っていることに気がつかなかったのだ。
その後Uボートは10数隻に魚雷を撃ち込むと、反撃を受けない内に退散した。魚雷を撃ち込まれた船の半数はその場で沈没した。
ドイツによる攻撃はここまでかと思われたが、次の攻撃が始まった。
「お、おい!飛行機の大群がこっちに来てるぞ。もしかしてドイツ軍機か!?」
「まさか。ドイツ軍機の航続距離でここまで来れないだろ」
「いや・・・あれは多分、爆撃機だ!」
その飛行機が近づくにつれ、それが爆撃機であることが分かった。
「ま、マズい・・・逃げるぞ!」
乗員は、そう言ってみたものの、逃げ道などなかった。その爆撃機は急降下爆撃を仕掛け、爆弾は艦橋部に着弾。甲板などにも着弾し、大半の船は沈んでいった。
その爆撃機の正体は九六式艦上爆撃機。日本からドイツへ供与された爆撃機だ。日本の爆撃機によって、何とか短い航続距離を克服したのだ。
その後、ドイツの軽巡洋艦にも狙われてしまい、イギリス本土へ帰還できたのは1000名以下という結果になった。ダンケルクで応戦していた部隊も、殲滅されてしまい、ダイナモ作戦は失敗という結果に終わった。
―――イギリス、ウェストミンスター
「はぁ・・・何てことだ・・・」
イギリスの首相、ウィンストン・チャーチルは報告文書を読んで頭を抱える。
その理由は、ダイナモ作戦が失敗してしまい、34万人近くの英仏軍の兵とその分の兵器などを失ってしまったからだ。これは連合国にとってかなりの痛手である。
フランスも敗北間近であり、当然、チャーチルへの非難も集まった。
しかし、チャーチルはまだ屈していなかった。
「ドイツめ・・・我々はまだ戦いをやめないぞ。本土が危機的な状況だろうが、海の彼方には広大な帝国がある。必ず、我々を救ってくれる」
チャーチルは、植民地とアメリカからの支援を期待していた。