2-3 共産党
―――中華民国、延安
中国共産党の本拠地である延安。この地には、共産党の最高指導者である毛沢東がいる。
毛沢東はここで軍の指揮をとっていたが、そんな中、1つの報が毛沢東の元へ届いた。
「何!?蒋が日本と不可侵条約を結び、国民政府への資金援助を始めただと!?」
毛沢東は、幹部からの報告に、言い返すような口ぶりで言い放った。
「蒋め・・・あいつは何を考えているんだ!」
毛は、歯ぎしりをしながら言う。かなり怒っているようだ。
共産党は、西安事件で蒋介石を拉致し、共同抗日と国共合作を約束させたのに、それを破ってこの条約を結んだことが不服のようだ。
「蒋の率いる軍は、我が紅軍に対し、更なる攻勢を仕掛けているようです」
「こ、このままでは共産党は負けてしまうではないか・・・」
紅軍は蒋介石の国民革命軍より、兵力や物資、資金などの全てが乏しく、このまま戦い続ければ、国民革命軍の勢いに押され、共産党が消滅してしまうことは明らかである。
そのため、国民党と共同戦線を張り、国民党と日本を戦わせて、国民党を消耗させたところで攻撃するという方法でいく予定だったが・・・不可侵条約によってその計画は頓挫してしまった。
「・・・仕方がない。同志スターリンから援助をもらい、戦況を有利に進めたところで国民党と停戦しよう。今すぐ、同志スターリンへ呼びかけろ」
「はっ、かしこまりました」
―――ソヴィエト連邦、クレムリン
いつも通り執務を行っていたこの国の独裁者、ヨシフ・スターリンの元にも、とある報が届いた。
「スターリン書記長!た、大変です!」
部下の1人が執務室に入り、慌てているような口調でそう言った。
「何だ?私が執務中なのが見えないのか?」
慌てている部下に対し、スターリンは不機嫌そうな口ぶりで部下に行った。
「じ、実は、中国国民党と日本が不可侵条約を結び、日本が国民党へ資金援助を始めたようです。国民党は早速、中国共産党に対し攻勢を開始しているようです」
「な、何だと!?」
スターリンはその言葉に驚き、机を叩いて勢いよく立ち上がった。
中国共産党で中国の赤化を目論んでいたスターリンにとって、それは衝撃的だった。今の国力差で戦闘を継続すれば、共産党の消滅は確実だからだ。
「それで、共産党は我が国に対し、資金や武器などの更なる援助を求めています」
「うーむ・・・今の状況では、支援は難しいな・・・同志毛沢東には、ひとまずモンゴルへ撤退し、準備を整えたところで反攻に出るように伝えろ」
「はい、かしこまりました」
スターリンがそう言うと、部下は出ていった。
彼がそう命令した理由は、今ソ連は強引な重工業化により、国内でも資金や物資の不足が目立ち始めている状況であり、極東にある共産党へ支援する余裕がないことや、ソ連から支援路が国民党によって断絶させる恐れがあるからだ。
そのため、モンゴルへ退却するよう命じたのだ。