1-11 日独会談(後編)
日本だけならともかく、欧州まで手を出すと知識量が圧倒的に足りません・・・
「しかし、貴国への資金援助には条件があります」
「条件とは、何ですか?」
「これからのユダヤ人のホロコーストを止めていただきたいです」
俺がそう言うと、ヒトラーは悩んだ末、こう答えた。
「それは難しいです。もし収容所を解放した場合、国内で我々ゲルマン人の富を奪い、ユダヤ人は富を膨らませます。更に、ユダヤ人は愛国心がないため国内を混乱させ、ドイツの生存圏の確保が難しくなります」
言っていることが分からなくもないが、少し偏った思想をしているな。まあ、ユダヤ人が富を膨らませていたのは、事実だが。ユダヤ人は商売が上手いし、ロスチャイルド家などは莫大な資産を持っているからな。
「それでしたら、ユダヤ人を軍需工場で働かせ、段階的に中東やアフリカへ移住させましょう。その際、ユダヤ人の所有するデパートや製鉄所、軍事上重要な施設は接収しましょう。特に、チェコにあるヴィトコヴィッツ製鉄所は必ず押さえてください」
ヴィトコヴィッツ製鉄所とは、中央ヨーロッパ最大の鉄と石炭の産地である。これを経営しているのはロスチャイルド家だ。史実では、ドイツがチェコを併合してヴィトコヴィッツ製鉄所を占領しようとした時、ロスチャイルド家は株主を中立国のスイスのものに変えており、国際法上、それができなかったのだ。
先にロスチャイルド家を迫害しておけばよかったんだが、ロスチャイルド家はナチスに資金援助を行っており、迫害はできなかったらしい。
「なるほど」
(ユダヤ人をヨーロッパから追い出し、ヨーロッパに持っている富を差し押さえるということか・・・道理に合っているな。これで120億ライヒスマルクは好条件だな・・・)
「・・・分かりました。条件の全てに従いましょう」
ヒトラーは頷いた後、そう言った。どうやら、さっき提示した条件に従ってくれるようだ。
「ありがとうございます」
その後、細かい話をした後、会談は終了した。
この会談により、日独同盟が結ばれ、日本とドイツの関係が深くなった。この同盟には、兵器売買や経済支援、軍事施設の共有なども約束された。
同盟を結ぶ際、ナチ党の内部では「日本人のような劣等人種と手を結んでいいのか」と批判があったが、ヒトラーは「日本人もアーリア民族であり、劣等人種ではない」と釈明した。
内閣の閣僚らは、ヒトラーの突然の変わりように驚いたという。
ナチ党は、日本政府(天皇)に言われたことに従い、チェコスロバキア解体とオーストリア併合の準備を着々と行い、ホロコーストを徐々に沈静化させていった。
しかし、英仏米などの列強国は、この動きを危険視した。ドイツと日本との関係は深くなっていった・・・