1-10 日独会談(中編)
第二次世界大戦にヘタリアは無用です。
「しかし、今までの話はこの後未来を変えられなかった場合です」
「・・・と言いますと、何か方法があるのですね?」
「ええ、もちろんです」
俺はきっぱりとそう言った。
「まずは、日本とドイツで軍事同盟を結びましょう。双方が協力しなければ、戦争で有利にはなれません」
史実では、日独伊で同盟を結んだものの、それは米英に対するけん制に過ぎなかった。しかも、ドイツは日本の敵国である中国に武器を売る始末だ。
「イタリアは同盟に入れないのですか?」
ヒトラーはそう聞いてきた。さっき、日独伊三国同盟の話をしたから、何でイタリアが入っていないのか疑問に思ったのだろう。
「イタリアとは同盟しない方が得だと思います。この後のイタリアは、ギリシャや北アフリカに侵攻して、ドイツの足を引っ張るだけです。独ソ戦が遅れてしまった原因も、バルカン戦役によるものですから」
「なるほど。しかし、イタリアがいなければ、欧州を枢軸の勢力にできないのでは?」
「ならオーストリアやチェコを併合した後、イタリアへ侵攻し、降伏させた後、イタリアに傀儡政権を樹立させましょう。そうすれば、枢軸勢力に盛り込むことができますし、イタリアには優秀な軍艦が複数ありますので、接収して海軍力を増強することもできます」
「イタリアへの侵攻ですか・・・?」
ヒトラーはそう聞き返してきた。
「ええ。時期は早い方がいいので、すぐにオーストリアやチェコを併合して国力を増強させましょう」
「ですが・・・我が国は再軍備を達成したばかりで、領土を拡げて、他国へ侵攻するほどの軍事力はまだありません」
ヒトラーの話によれば、今の段階では、自国を防衛することに精一杯らしい。まあ、西部に対する守りを固めないといけないから。イタリア侵攻に回す兵力がないということか。
「それは心配ありません。我が国でのドイツ兵器のライセンス生産を許可していただければ、我が国で生産した兵器を輸出して貴国の戦力に充てることができます。
そのためにも、ドイツの精密工作機械の輸入を許可していただきたいです」
「分かりました。貴国におけるドイツ兵器のライセンス生産および貴国への精密工作機械の輸入を許可しましょう。我が国の技術者も派遣します」
(技術と兵器の交換ということか・・・両方に得がある方法を選んできたな・・・)
精密工作機械は、取り寄せで何とかできるのだが、ドイツから輸入をしていないのに、ドイツの精密工作機械を使っているのは変なので、このような手段を取った。
「それは心強いです。来月までにI号戦車とII号戦車2000両、8.8 cm FlaKなどの火砲3000門を輸出します。それと、120億ライヒスマルクを軍事的支援として拠出しましょう」
「ッ!!?・・・ほ、本当ですか?」
(いくら何でも、それは無理だろ・・・・)
ヒトラーは目を見開き、呆気に取られたかのようにそう言った。
なぜかと言うと、来月までに戦車2000両、火砲3000門というのは、日本の工場を全て使って生産しても無理があるほどの数だ。更に、120億ライヒスマルクというのは、昨年のドイツの軍事予算のおよそ1.5倍。日本の経済規模から考え、こんな巨額を他国に投じるなどあり得ないことなのだ。そんな大金があったら、喉から手が出るほど欲しいぐらいだ。
「もちろんです。嘘はつきませんよ」
俺はそう言った。まあ、兵器の生産なんて、取り寄せ能力と物体移動を使えばノーコストでできるし、資金援助も取り寄せ能力で何とかなるから、このぐらいの額は大したことない。取り寄せ能力はどこの世界でも様様だ。