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風の吹く砂丘

作者: 久遠 聖

さらさらと風によって流れる砂の音で眼が覚めた、目を開ければ砂ばかりの場所で僕は座っていた。


ゆっくりとその場に立ってあたりを見回してみる、まず気になったのが体に巻きついている布たち。

赤茶けた上半身を覆う布、脹脛に切れ込みを入れた滑らかな布、足には申し訳程度の巻布、赤茶色に映える太陽色の飾り。

これは所謂『服』なのだろう。


次に気になったのは、少し遠くには砂丘が見える、風にたなびくぼろ切れが二つと石の建造物らしき物が三つ。


(あれは一体なんだろうか?)


気になった僕は砂丘を目指して進む。

風がさっきより強くなり、砂が舞う。

追い風が来て、背を押され砂丘を滑るように進む。


たどり着いた砂丘の上には、墓標と思える黒い板と風に舞う二つの細長い布。

そこから見える幾つもの墓標と、かてつの遺跡だったと思われる瓦礫たち


そのさらに奥には頂上が逆光で光る山がある

その逆光に照らされるように金色に光る紐のような生き物が飛んでいる

(あの場所に行ってみようかな····?他に何かある訳でもなさそうだし···)


砂丘を滑るように降り、フラフラと幾つもの墓標の場所を進んだ。




少し進むと強風が吹き荒れる砂の谷の間に窪んだ遺跡があった


隙間風が鳴り飾り布で遊ぶ、隙間から見える光は木漏れ日のように幾多もの光の筋を砂の上に落とす。

足の裏から伝わる感触が砂の柔らかさと熱さから、冷たく硬いものに変わる。

階段を登り一際大きな割れ目から光さす祭壇のような場所に出た。


不思議な白い模様とそれを囲むような石像、それにフラフラと近づく。

何となく「そうしなければ成らない」と思ったから、体が動くように任せた。

光の加減によって発行しているように見える模様の上に胡座をかいて座る。


目を閉じて深く呼吸をする、眠る時のようなおだやかな瞑想。周りの音が何処か遠くに行く感覚、抗うことなく流れる心地よさ。

不意に視界が光で覆い尽くされた。


感じるのは鈴の音のような高く澄んだ音、次に風が草を揺らす小さな音。

光は次第に弱くなり、目を開けるとそこには幾重にも重ねた下の布が透ける白い人がいた。


その人は口元だけ空いた不思議な仮面を付けており、此方を振り向き、何かを言ってまた前を見た。

其処には、僕が目指そうとしていた山があった。


「ねぇ、あれは何?あの山に向かえば良いの?そうすれば何かを知ることができるの?」


不意に言葉が口から漏れた、その言葉に白い人は振り向きながら何かを言った。

しかし、その言葉は鈴の音によってかき消されるほど小さな声だった。

「山を目指すね」そう言うと白い人は悲しげに口元を緩ませ頷いた。


高い弦を指で弾いたような音がした、吃驚して目を瞑ってしまった。

ゆっくりと瞼をあげると其処は先ほどまでの祭壇のだった。


(さっきのは夢?でも山は似てた・・・・

よくわからないけど白い人に言ったように、あの山を目指そう)


僕は立ち上がり、風で運ばれて来たであろう砂を布をはためかせ落とした。

顔をあげると白い模様が祭壇の奥まで続いていた。


「さっきまでこんな模様無かったのに・・・」

まるで"こっち"と言われてるような気がした。


一歩、前に脚を踏み出そうとした時。

ガクンと膝が落ちたと同時に、立っていられなくなるほどの頭痛がした。

僕は意識を手放した。
















僕はどれほど意識を失っていたのだろう・・・・

鈍い痛みがまだ残る頭を庇いながらゆっくりと体を起こす。

場所はさっきいた場所と変わらず祭壇。

上から差し込む光はなく。ほのかに壁の隅にある植物や祭壇の白い模様が光っているだけである。


(頭痛が来る前は日が指していたから、かなりの時間意識を失っていたのか・・・

頭の鈍痛以外に体に異変はないのだろうか?)


気になった僕はとりあえず砂埃を落としながら調べた。

手の甲には不思議な模様、まるで書きかけの絵のように中途半端に途切れている。

他には、太陽色の飾り布に銀色の不思議な模様が書き足されていた、上半身を覆う布にも同じ銀色の縁取りが。

足首には鈴のついた飾りが。

この鈴は音がなるのだろうか?と思って鳴らそうと脚をあげた時


足元の白い模様と飾り布が白く光り、足の鈴がシャンと鳴ったと同時に体が宙に浮いた。


ジャンプしても届かない高さに、突然のことにはしたなくも叫んでしまった。


「っ!・・・・ぁ!」

喋るのと同じ感覚で足の鈴も鳴る、鳴ったぶんだけさらに高く鳴る。


背中を反らせて4mほどしたの地面をみる

(ヤバイって!これ落ちたら怪我で済まないって!)


浮遊力を失った僕の体は、重力に従って地面へと落ちていく。


地面にぶつかる寸前で大きく叫ぶ、そしたら鈴が大きくなり白いドーム状の壁が一瞬でてすぐに消えた。


柔らかな砂の上に軽い音を立てながら座り込んでしまった。

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