世界設定
この世界U1の基本的な物理量は、現実世界URと同じである。魔法のシステムが付加されている。
魔法とは何か?
現象面では、物理状態の不連続である。それを可能とするため、時間をプランク時間毎の離散的なものとした。物理状態Aから物理状態Bにかきかえるプロセスをさし挟むことにより、物理状態の不連続を生じさせる。
何故URに魔法がないのか?
われわれURの人間は魔法を使うことができない。魔法の行使にはわれわれが知覚できないものを必要とすることにして、U1の質量を複素質量と設定した。偏在する虚質量を使って物理状態を変更し、失われた虚質量は拡散により補われる。
魔素・魔晶について
実部を持たない複素質量は魔晶とよばれ、マイナス質量をもつ。力を加えるとめりこんでいくやっかいもので、これを安定的に取り扱うため魔晶は重金属のフラクタル立体に絡め取られることとした。魔素は生体内で異物として濃縮、固定されるが、その生化学的過程は設定していない。
制約条件1.記述可能性
魔法の対象を記述可能なものとし、精神操作系や治療系の魔法を排除した。これはシステムの都合というよりも、そのメカニズムの創作が作者の能力を超えるからである。魔法の発動にあたって、プランク時間内には3つのプロセスが生じる。
1.ラプラス過程:魔法の対象の状態を把握する。
2.スクリプト:状態を変更する。
3.マクスウェル過程:変更された状態を対象に書き戻す。
各プロセスは、魔法発動の可能性を内包している。
ラプラス過程における発動失敗の原因には、魔術士の認識上の対象と実際の対象が異なる場合が考えられる。鏡像を実態と誤認した場合などである。
スクリプトにおける発動失敗の原因には、記述の曖昧さ、不完全が考えられる。自然言語よりも人工言語の方が向いているだろう。また不安定な物理状態への変更は、安定な物理状態へただちに移行するため、発動失敗もしくは意図しない結果をもたらす。
そしてマクスウェル過程における発動失敗の原因には、物理的に不可能な状態が考えられる。マイナスケルビンなどである。
制約条件2.接触の法則
この制約は物語の都合上設定された。チート主人公が遠距離から何でも撃破できてしまうのでは興が削がれるからである。接触とは何か、という問題は措くとして、対象はどこまで接触されたものとして認識されるのか、という問題がある。純鉄の塊はわかりやすいとして、合金ならばどうか、複数のパーツでできた機械はどうか。あるいは生物ならどうなるか。人間、衣服、あるいは食べた物、腸内細菌などは、魔法の対象となるか?これは(作中には登場しない)位置操作の課題でもある。U1の魔法システムでは、便宜的に本人の認識を参照することとした。魔術士がソレを一つのモノと認識すれば、それは魔法の対象となる、という大変アバウトな設定での見切り発車である。申し訳ない。
制約条件3.生体不可侵
この制約も物語の都合上設定された。接触しさえすれば心臓を握り潰すことも可、というのはヒーローというより悪役の所業であろう。というわけで、魔素には生体属性を付与した。この消去に等量の魔素が必要になるのは、作中で言及された通りである。姉妹団のエリクサ生成の非効率は、媒質生成にも魔素を消費することによる。
クラスについて
魔術士の体内魔素の濃度は正規分布する。クラス1は7σ、7800億人に1人となる。
U1の魔法システムは、クラスにより行使できる魔法の種類に制限がある。
クラス1:エネルギー変換
クラス2:時空操作(自ら出入りできる空間を創造する)
クラス3:時空操作(生体をとじ込める空間を創造する)、位置操作
クラス4:時空操作(無生物を収納できる空間を創造する)、速度操作、治療、固相構造操作(磁性操作)
クラス5:加速度操作、手当、分子間力強化/弱化/無化
クラス6:光操作、気相操作
クラス7:分子振動操作
ヒトについて
U1における魔法行使可能な知的生命体は、有甲卵生哺乳類である。
卵生としたのは、黒猫が義体をチートするのに、胎生では大がかりかつ精密な人工子宮が必要になり、U1では実現できないからである。また胎児に対する操作は印象がよくないので採用しなかった。
義体への泰雅の情報の書き込みは、本作主人公が最初ではない。本作以前の泰雅達は、慣れない環境と馴染みない変貌に、全て自殺あるいは精神に異常を来たした。黒猫によるゲシュタルト認識操作は、主人公保護措置の1つである。
収斂進化した無甲胎生哺乳類は、U1ではサルと呼ばれる。
小夜啼鳥の姉妹団について
イメージソースは、言わずと知れたナイチンゲール。U1の物理過程はURと同じため、手を当て祈るだけで治療することはできない。姉妹団を超国家的組織とするにあたって、Nが皇帝をどう誑し込んだものかは謎。
魔覚
ラプラス過程のみをもつ特殊な魔術。U1のヒトなら、強かれ弱かれ誰でも使える。
空歩
絶対速度を読み取り、それをキャンセルすることで、対象の相対速度を0に固定する。カメラの手ブレ補正、ヘッドホンのノイズキャンセラと同様である。取り切れないブレ、消しきれないノイズがあるため0ケルビンにはならない。




